NO.1042 政治資金の抜け道と小沢一郎
小沢一郎が動き出した。昨日、民主党に企業・団体献金の「全廃」を検討するように指示したというのだ。
民主党は、03年総選挙マニフェストに公共事業受注企業からの献金禁止を掲げていたが、その後これを降ろしたのは小沢代表であった。そうした中での今回の秘書逮捕事件。氏の発言は、このダメージを挽回するためのものか、そして、企業にも政治活動の自由があるとうそぶき企業献金を容認している麻生首相との「対決」を打ち出すためのものか・・・これが大方の見方である。
3月18日17時40分配信 産経新聞より。
小沢代表が企業・団体献金「全廃」を指示 民主党
世論が背景に民主党の小沢一郎代表は18日、党本部で鳩山由紀夫幹事長と会談し、西松建設の違法献金事件を受けて表明した企業・団体献金全廃の方針について「岡田克也党政治改革本部長に言って実現してほしい。分かりやすい仕組みにしないといけない」と述べ、党として検討するよう指示した。小沢氏の公設第1秘書が政治資金規正法違反容疑で逮捕されたことを受け、同法の抜本改正に取り組む姿勢をアピールする狙いがあるとみられる。
小沢氏は会談後、記者団に対して「どの企業なら(献金を受けて)良いとか悪いとか言うわけにいかないだろう。企業・団体の全面的禁止以外に実効があがらない」と改めて強調した。企業・団体献金の全廃を次期衆院選の政権公約(マニフェスト)に盛り込むかどうかについては「僕が強制する話ではない。(民主党内の)みんながいいと言うならいい」と述べるにとどめた。
(以上、部分引用)
企業・団体献金の全面禁止は、誰が言おうと正しい。
しかし、小沢氏のこの間の説明不足や開き直りからすると、この「指示」もまた単なる選挙対策と取られても仕方がないだろう。とはいえ、こうした発言や「指示」をせざるをえなくなる背景には、疑惑解明を求める国民の世論と、再発防止へ企業・団体献金の全面禁止を求める世論の力が働いていることを見て取らなければならないと思う。
小沢氏は、長きに渡って最も「自民党的」な金権政治家として政界に君臨してきた政治家だ。そしてこの間のニセ政治改革の中心にいた人物だ。にわか発言だけで説明がないと、国民は納得しないのではないだろうか。
コペルニクス的転換
この間長きに渡り多額の献金を受けてきて、しかも、「企業献金は悪ではない。透明にすれば問題ない」とつい先日までは言い続け、舌の根も乾かないうちに禁止を言うのだ。この数日間に何があり、どういう心境の変化があったのか。いや、もし真意とすればこれは政治哲学の大きなコペルニクス的転換であり、心境の変化などと言う言葉では説明もつかないだろう。政治家にとっては天動説がひっくり返るような一大事ではないのか。つまりそういう本質に関わる大転換を、この間の総括もなく何の説明もなしに国民が受け入れることができるのだろうか。
今回の西松献金が問題なのは、ほんとうは企業献金なのに、政治家個人への企業献金が禁じられているため、ダミーの「政治団体」を通じての献金であると装っている「偽装献金」だからだ。
疑惑にはフタをしたまま
以下が、企業・団体献金禁止に言及した小沢氏の17日記者会見の発言だ。全く他人事でも言っているような感じだったが・・・。
「その出資者はかなりのケースで企業でしょう。」という発言は、献金は西松建設からのものであったことを認識していたということを自ら語っているのである。小沢氏 ・・・その中から、企業献金。公共事業ということではなくて、・・・私は企業献金、今回それこそ問題になっている団体献金、これを全面的に禁止するということだと思います。公共事業でもって仕分けはできない。事実上。ですから、いろんな業界が、政治団体、個人、会社や業界、政治団体いっぱい持っているでしょう。その政治団体を通じて、寄付っちゅうこともいっぱい行われていることでしょう。そうすっと、その出資者はかなりのケースで企業でしょう。だから、そういう意味では、今度のことの問題を教訓とすれば、全企業、企業団体献金を禁止するということならば、私はいいんじゃないかと。・・・もしやるとするならば、企業献金、団体献金の禁止を徹底しなきゃ意味がないと思います。
小沢氏は、先ずはこうした自らへの疑惑を解明することから始めなければならない。
「禁止」発言が、仮に単なる選挙対策でお茶を濁すようなパフォーマンスであれば、民主党と小沢氏には厳しいしっぺ返しが待っていると言わなければならない。
同じ献金構図
さて、今回の事件の構図、即ちゼネコンが巨額の公共事業に群がり、そのもうけの一部を政治家への献金として還流するという構図は、小沢氏の親分だった金丸信・元自民党副総裁が失脚した93年ゼネコン疑惑のころと全く変わらない。
1993年のゼネコン疑惑のときも、清水建設の「ヤミ献金リスト」が報じられた。リストは、盆暮れの付け届けの額を「SA」=2000万円から「D」=200万円までの5段階にわけて政治家をリストアップしたもの。リストには、「SA」に金丸氏、竹下登元首相、「A」に小沢氏など、自民党やのちの「非自民」政権幹部の名前がずらりと並んでいた。
ニセ行政改革
当時、金権政治批判で世論が沸騰し、企業・団体献金禁止の世論が盛り上がった。
しかし、93年誕生の細川「非自民」政権と自民党は、「政治にカネがかかるのは中選挙区制のせいだ」と、選挙制度問題にすりかえ、94年に小選挙区制と政党助成金導入によるニセ政治改革を強行したのだった。
細川首相は、「公費による助成を導入することなどにより企業・団体献金は廃止の方向に踏み切る」と発言していましたが、政党本部や支部、政党が指定する資金管理団体、政治家の資金管理団体への献金は温存したまま。
その時、「ゼネコン疑惑の真相解明が怖いことでは、自民党も連立諸党も、共通の立場と利害に立っている」と批判。企業・団体献金について「政治家個人への(企業)献金だけをやめることでお茶を濁そう、こういう企業献金存続の方向に変わった」とニセ政治改革の実態を告発したのは日本共産党・不破哲三元委員長だった。
残念ながら、その時以来16年、企業・団体献金廃止どころか、政党助成金との二重取りが定着してきている。
企業献金存続の中心に小沢氏
この企業献金存続の中心にいたのが小沢氏である。
小沢氏は自著『日本改造計画』(93年)で、政治資金の出入りを「全面公開」さえすれば「政治家にとっては…潔白証明書」となると指摘。企業・団体献金の禁止を「理論的にはおかしい」としつつも、「企業や団体による政治献金は政党に対してのみとし、政治家個人への献金は禁止してもいい」と譲歩案を提示した。そして、その代償として公費助成=政党助成金導入を主張したのだった。
小沢氏は、新生党代表幹事として連立政権の中心にいた1994年には、上述した細川政権のニセ政治改革の牽引車となり、公費助成として政党助成金制度を導入する一方、肝心の企業・団体献金「禁止」は五年後に先送りしたのだった。
そして5年後の99年、自民、自由、公明の連立政権が発足した時、今度は自由党党首として、政治資金規正法「改正」を主導し、政治家個人の資金管理団体への献金は禁止したものの、政党本体や議員本人が支部長の政党支部への献金は温存し抜け道を残したのだ。
このように小沢氏は、ニセ行政改革の中心的役割を果たし、政治資金問題を熟知していたのである。今回の事件で、「西松からの企業献金という認識だとすれば政党支部で計上すれば何の問題も起きなかった」と堂々との述べたのは氏の確信の現れであり、精通していたことを示している。
企業・団体献金の全面禁止は、誰が言おうと正しい。
しかし、見てきたような「実績」と経歴の小沢氏の発言を信じるには、なお自らの疑惑を解明し説明することが前提である。その上で、企業・団体献金の全面禁止をいうなら、この点での共同は歓迎である。企業・団体献金が日本の民主政治を根本からゆがめる悪であることを見るならば、小異は置いて全ての政治勢力が力を合わせる価値は十分にあると言わなければならないだろう。
繰り返されてきた金権疑惑をみても、企業・団体献金を全面的に禁止しないかぎり、つねに抜け道や新しいの献金方法が探し出されるのは明らかだ。
政権交代を展望するとき、自民党政治に代わる「新しい政治」の中身として、企業・団体献金の全面禁止と政党助成金の廃止は避けて通れない重要課題である。
(追記)
カネに最もクリーンな共産党C君が、小沢氏に注文をつけたそうだ。
以下、(2009/03/19-16:10 時事ドットコム)より。
企業献金禁止で小沢氏に注文=共産委員長
ズバリ!「禁止は法律がなくても自らの意志でやれる。」そういうものですね。共産党の志位和夫委員長は19日、国会内で記者会見し、小沢一郎民主党代表が企業・団体献金の全面禁止に前向きな姿勢を示していることについて、「禁止は法律がなくても自らの意志でやれる。本気で禁止と言うなら、まず自身が受け取らないという意志を明らかにするべきだ」と述べ、個人献金以外の受け取り自粛を小沢氏に促した。
その上で、「それをやって初めて小沢氏は国民に問題を提起する資格が生まれる」と指摘した。
小沢氏、急所を突かれたか?本音はどうか?どう応えるか?
これをやれば、小沢氏の問題提起は俄然説得力を持ち、国民的支持を得ることができるだろう。
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2009.03.19 | | Comments(3) | Trackback(5) | ・政治と金の問題Ⅱ
