NO.51 つよしくんの、ウルトラC!!
いやあ、びっくり。
つよしくんがあのカナちゃんをなだめてしまった。
休みがちだったカナちゃんも、お父さんが退院してきたのと、2学期が始まり妹たちも学校行くようになり、規則正しい生活に切り替わったのか、ともかく作業所に出てくるようになった。
がしかし、きちんと作業には入れるわけではない。
途中で寝そべったり、外に出て行ったり…。なかなかだ。
それでも、職員が目を離さないようにしながら、勝手な行動をしないよう、休憩したり出かけたりしてもも良いから自分で意思を伝えるように求めている。
この、「自分で意思を伝える」言語コミュニケーションがなかなか出来ない。筆談もやったりと、辛抱強くいろいろ手を尽くすのだが。
言語は通常会話程度は獲得しているが、心理的要因に基ずく、コミュニケーション障害と考えられる。
今はターゲットは実習生。手を引いて外に出て、「どこに行きたいの?何をしたいの?」と聞かれても、だんまりで引っ張っていこうとする。
遂には膠着状態になり腕や洋服にしがみつき、自分の要求を通そうとする。
ここでは今は、基本的にはそうゆうやり方は、受け入れない方針で臨んでいる。。一度妥協したら、そうゆうやり方で要求が通るとと思い込み、状況は改善されない。最初が肝心。
本人が、筆談ででも自分で伝えることが出来たら、「きょうは、なんかやるきがない きゅうけいしたい」・・・なんじゃそりゃ!と言うような内容でも「じゃちょっと休んでていいよ」と、対応してきている。
現在の方針が絶対に正しいとは思ってはいない。障害の陰に隠れた逃げや甘えがある。だから、職員に通用しないが、まだ訳の分からない実習生は、通してくれるだろうと言う読みがあるのだ。したたかだ。
方針をコロコロ変えると、やってることがが正しいかも間違いかも見えなくなる。
一度掲げた方針は、一定の評価が得られる段階までは動かしてはならない。実践に当たっての原則だ。
そこで、昨日は、切り離しほったらかして、職員も実習生も二回に上がり終礼を始めた。
案の定、地団太踏んで床をたたきながら、大きな声で泣き喚きだした。
実習生も皆気になるようだったが、私は「はい無視して会議に集中!」と促した。
泣き喚き、感情を発散すると、後にだいぶ落ち着いて話も出来るようになるのが常だから、様子を見ようと言う方針だった。
タイトルからいけば、ここまでは、イントロと言うことになるが…。
そこに戸締り終えたつよしくんが通りかかり、捕まってしまったのである。彼のシャツを引っ張りしがみつき泣き喚く。
実は以前もそうゆう事があり、つよしくんは、怖がり引きつり大変だったことがある。彼は非常に優しく育てられ、気持ちのいいほんわりしたやさしさを持っており、周りの人たちを癒す不思議な力を持っている。
一方で、非常に波風に弱い。あの時の、恐怖におののく姿は、顔面は真っ赤に引きつり、飛び跳ね、始めてみる姿だった。
私は、どうなるかと、終礼を進めながら、時々注意深く見ていた。
肩をたたきながらなだめようとしたり、つかまれた手を解こうとしたり、困惑しながらも決して、拒否したり逃げ出そうと言う感じではなかった。
しばらくして、少し落ち着いてカナが手を離したとき、ツヨシは帰り支度のためロッカーのある2階に上がってきた。
「先輩だから頼むね。トントンと優しくしてくれ。」と私は声をかけた。
帰り支度を終えたツヨシは、落ち着きかけたカナの肩をトントンと叩きながら顔を覗き込み、なにやら聞いていた。
そして、カナチャンは電話をかけ始めた。
私には彼女のやることは、おおよそ見通せていた。
養護学校のときの先生に連絡を取り、会いに行きたかったのだ。
この時のカナの声は、二階からもはっきりと聞き取れた。
「つよしくんも一緒にいい?」
一件落着。
ツヨシは、近くの養護学校まで付き合ってやることにしたようだ。
その様子を見届けた私は、実習生たちに「ツヨシがどうやって、問題を解決したか講義してもらおうか?」と、半分冗談で投げかけた。
「本人の気持ちを聞いただけよ!」と、回答も添えて。
(あとでツヨシに聞くと「バランスがあると。」と答えていた。つかみかかってきた時の体のバランスだそうだが、もしかしたらそれは、微妙な心のバランスのことなのかも知れない。)
あの恐怖に引きつっていたのは、2ヶ月ほど前。ツヨシがここまで、受け入れて向き合うとは!
職員一同、ビックリした!
陶友の仲間たちは、日常の小競り合いはあるものの、このようにこれまで、どんな仲間をも関わりあいながら、彼らなりの理解の力で受け容れてきた。
これだけは、感心できる、陶友がつくりあげて来たものだと。
最後までありがとうございます。
よろしければコメントください。
【“NO.51 つよしくんの、ウルトラC!!”の続きを読む】
2007.09.06 | | Comments(5) | Trackback(0) | ・仲間とともにⅠ
