東金・女児遺棄事件のその後。報道も少しは「静か」になりつつあるのか・・・。
職場の持ち場変わり不満募らす 東金・女児遺棄容疑者(朝日)
千葉県東金市の路上で成田幸満(ゆきまろ)ちゃん(当時5)が遺体で見つかった事件で、死体遺棄容疑で逮捕された○○容疑者(21)(※筆者注/記事では実名)が事件前の今年7月ごろ、職場の持ち場が変わり、仕事内容が急変したことに不満を募らせ、退職するきっかけになっていたことがわかった。職場関係者などが取材に答えた。東金署捜査本部は、退職が事件前日の9月20日だったことから、事件との関連を調べている。
○○容疑者は同市に隣接する同県山武市の布団工場に05年から勤務。レンタル先から返却された布団を積むなどの作業を熱心にこなし、同僚との関係も良かったという。
関係者によると、7月ごろになって○○容疑者の持ち場が変わり、綿を機械に詰めるなどの比較的高度な作業になった。○○容疑者は仕事をうまくこなせなくなり、作業の遅さなどについて上司などから注意を受けていた。
しかられてもうつむいて黙って聞いていることが多く、その場で言い返すことはなかった。「頑張っているのに」「つらいよ」といった言葉をもらしていた。「胃が痛い」と体調不良を訴えるようになり、8月末からは無断欠勤が始まった。○○容疑者は「(作業が)変わっていやになっちゃった」「一生懸命にやっているのに頭にくる」と同僚らに話していたという。
工場によると、○○容疑者の母親から「働きたくないと話している」と連絡があり、9月20日、正式に退職した。
捜査本部は、○○容疑者の職場への不満が、事件のきっかけになった可能性もあるとみており、工場関係者から話を聴いている。
容疑者の働いていた時の様子が、なんだか手に取るようによくわかる気がする。彼らは、単純な作業でも、自分でできることには誇りを持ち、褒められ認められると、実にこつこつとよく頑張るものだ。しかし、いったん状況が変わると、適応できずに自信をなくし、全くやる気をなくしたりすることは良くある。私は、「自分で自分を立て直す力」と呼んでいるが、それが弱いと言う特徴がある。
本人も良くがんばっていたので、会社ももう一段高いものを要求したであろう事は察しがつくし、悪いことではない。「頑張っているのに」「つらいよ」と言う彼に、もう少しゆっくり丁寧に係わり援助していれば、少し時間がかかっても、新しい仕事を身につけて自信を取り戻し、更に成長した彼がいたかもしれないと思うと、残念な思いがする。
幼いころの写真を見ると、彼はダウン症のようだ(確定は出来ないが)。ダウン症の場合、単調な繰り返し(・・・周りが退屈だろうと思うほどのそれでも)を好み、変化を嫌うことが一般的特徴としてもある。彼にとっての新しい仕事は、相当な重荷であったことが伺える。
しかも、知的障害がもっと重いと「反発する力」も弱いが、軽度ゆえに自意識もあり、「一生懸命にやっているのに頭にくる」のであろう。こう言う意識がまた、重荷感を増幅するのである。(「主観的障害の重さ」と私は呼んでいるが、軽度ゆえの困難である)・・・そして独りで重荷に耐え切れずに、孤独のなかに閉ざされていくのである。共感し、励まし共に問題解決に当たる人をこそ必要としていたであろうと思われ、残念でならない。
会社も頑張って障害者を受け入れてきたのだろうが、今日の障害者の就労支援をめぐる貧困の問題が垣間見える記事だ。
さて、先に「適正な取調べと報道」について書いたが、関連して紹介したい記事がある。
弁護を引き受けた東京弁護士会の副島洋明弁護士は、9日夜初めて接見し、次のように語ったと言う。
〈◯◯容疑者は逮捕について「こういうことになるとは全く信じていなかった」と話し、重大性を認識していない様子という。場違いなほどニコニコしていて、母親に会いたがっており、幸満ちゃんのことは「知らない子だった」と話したという。褒められることと怒られることの区別はつくが、刑事裁判の仕組みは理解していないようで、容疑については「話がくるくる変わり、聞き方一つで答えが変わる」といい、警察に対して、取り調べの様子をすべてビデオ撮影するよう要請した。
しかし、警察は取り調べのビデオ撮影はしないという・・・!
報道について、
「東金女児遺体事件で容疑者を実名報道したメディアへの違和感」と題する記事が、ダイヤモンドオンラインと言うサイトにアップされている。上杉隆というジャーナリストが同業者達への違和感を述べている。(部分的に引用して紹介したい。全文はリンク先でどうぞ。)
・・・にもかかわらず、容疑者の逮捕直後から、筆者は、言い知れぬ違和感に襲われている。新聞・テレビのニュースを追いながら、どうしても、今回の報道にはなじめないからだ。その原因は、容疑者の「履歴」にある。
端的に言えば、容疑者の実名・顔写真報道の問題である。本事件の報道に関しては、記者クラブの横並び意識がもたらした弊害が如実に現れたとみている。
警察発表によれば、容疑者は特別支援学校に通っていた。軽度の知的障害を抱え、その病歴からも、単純に責任能力が問えるかどうか疑問の余地は残る。
にもかかわらず、すべての記者クラブメディアは実名と顔写真で容疑者を報じた。
・・・・このように、容疑者は、精神発達遅滞と診断され、さらに特別支援学校に通学していた経歴を持つのだ。となれば、おそらく精神鑑定は行われるだろう。刑事での責任能力の有無を問われ、場合によっては不起訴の可能性もある。
筆者は、起訴・不起訴の結果の如何を言っているのではない。軽度とはいえ、知的障害のある容疑者の氏名を、全記者クラブ所属メディアが横並びで、一斉に実名報道に踏み切っている点に違和感があるのだ。
現場で苦労をしてきた記者たちには申し訳ないが、今回の報道は、あまりに短絡的で、思考停止に陥っていないだろうか。
・・・横並びで報じたこの結果は、いったい偶然なのだろうか、それとも記者クラブの横並びがもたらした「談合」の結果なのだろうか。
仮に後者だとしたら、メディアは、自らの掲げてきた人権報道を貶めたことになる。
・・・精神発達遅滞の容疑者であれば、供述内容が二転三転し、取り調べが成立せず、公判が維持できないという過去のケースもある。「浅草レッサーパンダ殺人事件」などがその例だ。
当事件は当初、すべて実名報道であったが、精神鑑定の結果、容疑者の責任能力を問えず、いつのまにか匿名報道に変わっている。
時に、報じない「勇気」もジャーナリズムには必要だ。仮に、それによって孤立しても、各々のメディアがそれぞれの判断で報じれば、筆者も違和感を覚えなかっただろう。
現在の日本の報道機関に欠けている最大のものが、そうした孤立する「勇気」なのかもしれない。
赤信号、みんなで渡れば怖くない・・・メディアの自殺行為というべきか。
参考過去ログ:
NO.804 適正な取調べと報道を!・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 ・・・その(2) お付き合いついでに
シャッターはこころで切れ!で、紅葉狩りでもどうぞ。
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2008.12.11 |
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昨日は世界人権宣言60周年。1948年12月10日、第3回国連総会で世界人権宣言が採択された。
村野瀬玲奈の秘書課広報室さんちで教えてもらった、なかなかわかりやすくていい宣言。紹介します。

世界人権宣言
世界人権宣言は1948年12月10日、国際連合で採択されました。第二次世界大戦で起こった悲劇を二度と繰り返さないという反省から、人権が「世界における自由、正義、および平和の基礎である」(世界人権宣言前文より)ということを確認しています。現在の国際人権条約は、この世界人権宣言が目指す社会を実現しようとする努力の成果です。
谷川俊太郎の「世界人権宣言」
http://www.amnesty.or.jp/modules/wfsection/article.php?articleid=694
第1条 みんな仲間だ
わたしたちはみな、生まれながらにして自由です。ひとりひとりがかけがえのない人間であり、その値打ちも同じです。だからたがいによく考え、助けあわねばなりません。
第2条 差別はいやだ
わたしたちはみな、意見の違いや、生まれ、男、女、宗教、人種、ことば、皮膚の色の違いによって差別されるべきではありません。また、どんな国に生きていようと、その権利にかわりはありません。
第3条 安心して暮らす
ちいさな子どもから、おじいちゃん、おばあちゃんまで、わたしたちはみな自由に、安心して生きていける権利をもっています。
第4条 奴隷はいやだ
人はみな、奴隷のように働かされるべきではありません。人を物のように売り買いしてはいけません。
第5条 拷問はやめろ
人はみな、ひどい仕打ちによって、はずかしめられるべきではありません。
第6条 みんな人権をもっている
わたしたちはみな、だれでも、どこでも、法律に守られて、人として生きることができます
第7条 法律は平等だ
法律はすべての人に平等でなければなりません。法律は差別をみとめてはなりません。
第8条 泣き寝入りはしない
わたしたちはみな、法律で守られている基本的な権利を、国によって奪われたら、裁判を起こし、その権利をとりもどすことができます。
第9条 簡単に捕まえないで
人はみな、法律によらないで、また好きかってに作られた法律によって、捕まったり、閉じこめたり、その国からむりやり追い出されたりするべきではありません。
第10条 裁判は公正に
わたしたちには、独立した、かたよらない裁判所で、大勢のまえで、うそのない裁判を受ける権利があります。
第11条 捕まっても罪があるとはかぎらない
うそのない裁判で決められるまでは、だれも罪があるとはみなされません。また人は、罪をおかした時の法律によってのみ、罰をうけます。あとから作られた法律で罰を受けることはありません。
第12条 ないしょの話
自分の暮らしや家族、手紙や秘密をかってにあばかれ、名誉や評判を傷つけられることはあってはなりません。そういう時は、法律によって守られます。
第13条 どこにでも住める
わたしたちはみな、いまいる国のどこへでも行けるし、どこにでも住めます。別の国にも行けるし、また自分の国にもどることも自由にできます。
第14条 逃げるのも権利
だれでも、ひどい目にあったら、よその国に救いを求めて逃げていけます。しかし、その人が、だれが見ても罪をおかしている場合は、べつです。
第15条 どこの国がいい?
人には、ある国の国民になる権利があり、またよその国の国民になる権利もあります。その権利を好きかってにとりあげられることはありません。
第16条 ふたりで決める
おとなになったら、だれとでも好きな人と結婚し、家庭がもてます。結婚も、家庭生活も、離婚もだれにも口出しされずに、当人同士が決めることです。家族は社会と国によって、守られます。
第17条 財産をもつ
人はみな、ひとりで、またはほかの人といっしょに財産をもつことができます。自分の財産を好きかってに奪われることはありません。
第18条 考えるのは自由
人には、自分で自由に考える権利があります。この権利には、考えを変える自由や、ひとりで、またほかの人といっしょに考えをひろめる自由もふくまれます。
第19条 言いたい、知りたい、伝えたい
わたしたちは、自由に意見を言う権利があります。だれもその邪魔をすることはできません。人はみな、国をこえて、本、新聞、ラジオ、テレビなどを通じて、情報や意見を交換することができます。
第20条 集まる自由、集まらない自由
人には、平和のうちに集会を開いたり、仲間を集めて団体を作ったりする自由があります。しかし、いやがっている人を、むりやりそこに入れることはだれにもできません。
第21条 選ぶのはわたし
わたしたちはみな、直接にまたは、代表を選んで自分の国の政治に参加できます。また、だれでもその国の公務員になる権利があります。みんなの考えがはっきり反映されるように、選挙は定期的に、ただしく平等に行なわれなければなりません。その投票の秘密は守られます。
第22条 人間らしく生きる
人には、困った時に国から助けを受ける権利があります。また、人にはその国の力に応じて、豊かに生きていく権利があります。
第23条 安心して働けるように
人には、仕事を自由に選んで働く権利があり、同じ働きに対しては、同じお金をもらう権利があります。そのお金はちゃんと生活できるものでなければなりません。人はみな、仕事を失わないよう守られ、だれにも仲間と集まって組合をつくる権利があります。
第24条 大事な休み
人には、休む権利があります。そのためには、働く時間をきちんと決め、お金をもらえるまとまった休みがなければなりません。
第25条 幸せな生活
だれにでも、家族といっしょに健康で幸せな生活を送る権利があります。病気になったり、年をとったり、働き手が死んだりして、生活できなくなった時には、国に助けをもとめることができます。母と子はとくに大切にされなければいけません。
第26条 勉強したい?
だれにでも、教育を受ける権利があります。小、中学校はただで、だれもが行けます。大きくなったら、高校や専門学校、大学で好きなことを勉強できます。教育は人がその能力をのばすこと、そして人ととしての権利と自由を大切にすることを目的とします。人はまた教育を通じて、世界中の人とともに平和に生きることを学ばなければなりません。
第27条 楽しい暮らし
だれにでも、絵や文学や音楽を楽しみ、科学の進歩とその恵みをわかちあう権利があります。また人には、自分の作ったものが生み出す利益を受ける権利があります。
第28条 この宣言がめざす社会
この宣言が、口先だけで終わらないような世界を作ろうとする権利もまた、わたしたちのものです。
第29条 権利と身勝手は違う
わたしたちはみな、すべての人の自由と権利を守り、住み良い世の中を作る為の義務を負っています。自分の自由と権利は、ほかの人々の自由と権利を守る時にのみ、制限されます。
第30条 権利を奪う「権利」はない
の宣言でうたわれている自由と権利を、ほかの人の自由と権利をこわすために使ってはなりません。どんな国にも、集団にも、人にも、そのような権利はないのです。
世界人権宣言(全文) は続きを読むへ。
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2008.12.11 |
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