NO.1960 みんなで渡れば怖くない 「5社共同社説」翼賛報道の加速
「新聞は社会の木鐸たれ」などという言葉は、もう死語なのでしょうか。
哲学者の鶴見俊輔氏は「国が墜ちていく時、新聞も同じ速さでおかしくなっていく」と言ったそうです。
この前の記事で、元旦社説に見る大手新聞の翼賛報道ぶりについて書きました。
面白いことに、同じく元旦社説を扱った社説がありました。
毎日新聞の1月9日付「社説:論調観測 元旦社説 危機感共有する一年に」です。
このままでは日本は沈んでいくばかりでないか。多くの国民が不安を感じる中で新しい年が明けた。各新聞社の元旦社説が例年に増して強い危機感を打ち出したのは当然だろう。
行き詰まり感を打破したい、という願いを込め、「扉を開こう」と題したシリーズを続けている毎日新聞は元旦、まず江戸時代の浮世絵師、写楽や歌麿の登場を仕掛けた版元・蔦屋重三郎(つたやじゅうざぶろう)を取り上げた。
この人がいなければ浮世絵はこれほど世界に注目されなかったかもしれない。そんな話を入り口に、日本人にはまだまだ潜在能力があり、元気や底力を引き出す仕掛けを生み育てる必要があるとの内容だ。そのうえで財政再建や社会保障の立て直しなど緊急課題に道筋をつけるよう菅直人政権に求めると同時に「国民自身が問題をきちんと理解して立ち向かうことが必要」と国民にも問いかけた。
税制と社会保障政策の一体改革と「環太平洋パートナーシップ協定」(TPP)への参加に絞って政治の決断を求めたのが朝日だ。読売も日米同盟の強化とともに、この2点を求め、日経はTPP参加を中心とする元旦社説となった。
大事な話が何も進まない今の政治状況。読売が新たな連立政権の構築や政界再編を提案し、朝日は民主、自民両党の妥協を求める違いはあったが、毎日もかねて指摘している通り、具体的には消費税とTPPが今年の大きなテーマとなるだろう。
このほか産経は論説委員長の署名入りで「空想的な憲法」に基づく「一国平和主義」では乗り切れないと主張。逆に東京は平和国家の理想を高く掲げ続ける必要性を説いた。
確認しておきたいことがある。憲法や安保政策では各紙の主張は異なるが、例えば消費税増税は、東京を除けば毎日をはじめ各紙とも従来、「もはや不可避」との立場にある。昨夏の参院選で菅首相が言い出した時も各紙は支持したものだ。
ところが選挙結果を見れば国民に理解されたとは到底言えない。首相が腰砕けになったからだといえばそれまでだが、私たちの社説の主張・提案も、うちそろって支持されなかったこともまた事実だろう。
国民の負担増となる改革だが、それでもなぜ必要なのか。首相だけではない。新聞もいっそう丁寧に責任を持って説明していかなくてはならない時代だ。政権に注文をつけるだけでなく読者と問題意識を共有し、ともに考えていく一年にしたい。【論説副委員長・与良正男】
「各新聞社の元旦社説が例年に増して強い危機感を打ち出したのは当然」とし、消費税増税や環太平洋パートナーシップ(TPP)などをめぐるこの間の論調を「みんなで渡れば怖くない」とばかりに「もはや不可避」との立場と「確認」しています。
この間の論調は、国家権力への「追随」を超え、財界やアメリカの利益にたって国家権力を煽り先導しするものでした。そこに一定の恥じらいでもあるのか、毎日は他社の論調も一緒だとばかりに自らを合理化しているのです。
こうして、「みんなで渡れば怖くない」・・・、ブレーキも利かず、煽動を競い合う状態がつくり出されていると言ってもいいのではないでしょうか。
記者が地に足をつけて取材し記事を書くことよりも、財界や政界の幹部との付き合いや記者会見などで垂れ流される「大本営発表」をそのまま無批判に記事にするという手法が、言論機関の自殺行為というべき事態を加速しているように思います。
「毎日」は最後に「政権に注文をつけるだけでなく読者と問題意識を共有し、ともに考えていく一年にしたい」と締めくくっている。これを読むと、与良正男氏は、さすがに一定の良心がうずくのかと思いたいが、これは単なる言い訳に過ぎない。何よりもその前段において、自らの立場を再確認しているのである。つまり「国民の負担増となる改革だが、それでもなぜ必要なのか。首相だけではない。新聞もいっそう丁寧に責任を持って説明していかなくてはならない時代だ。」と。
これこそ、この間の論調を合理化する以外の何物でもないのではないでしょうか。
これは、消費税の増税やTPPへの参加という「国民の負担増」路線を是認し、その推進のために新聞が世論の露払いをしていくという決意表明に他なりません。
「読者と問題意識を共有」すると言うことはどういうことでしょうか?
例えばTPP参加問題では主要全国紙と地方紙の論調には大きな乖離が生まれてきています。それは、多くの地方紙が農村の現場に足を置き、その視点から、日本の食糧問題や農業問題、環境や国土の保全という問題を指摘しているからに他ならないでしょう。
「国民の理解」や「読者の問題意識」を語りながら、一層の翼賛報道を宣言する「毎日」には、もはや戦前の翼賛報道で国民を侵略戦争に駆り立てたことへの痛烈な反省は、遠い過去のものになっているのでしょうか。
今日の「しんぶん赤旗」が、一面トップで、菅総理の4日の年頭会見後の大手全国紙5誌の報道を「5紙共同社説?」と厳しく批判しています。
各紙の社説見出しは以下です。かくも同じ見出しが揃うものかと驚きですね。まさに翼賛報道の「共同社説」!
・読売「指導力を発揮して有言実行を」(5日付)
・朝日「本気ならば応援しよう」(5日付)
・産経「言葉通り実行してみせよ」(5日付)
・日経「首相は今度こそ『有言実行』の約束果たせ」(7日付)
・毎日「有言実行しか道はない」(8日付)
以下に転載して紹介しておきます。
2011年1月9日(日)「しんぶん赤旗」
5紙「共同社説」!?
消費増税・TPP 「有言実行」迫る
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菅直人首相の4日の年頭会見に対し、全国紙5紙(「朝日」「読売」「日経」「毎日」「産経」)が8日までに、いっせいに中身のほぼ同じ社説を掲載しました。6月をめどに、社会保障財源を口実とした消費税増税と環太平洋連携協定(TPP)への参加方針を決めるとした菅首相に実現を迫るもので、見出しも各社横並びという異様な状況を呈しています。
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「読売」は、菅首相が「消費税論議に真正面から向き合う姿勢に再び転じたことは評価できる」とし、「不退転の気持ちで取り組んでもらいたい」と要求。「朝日」は、「いずれの課題も、足元の民主党内だけでなく、国民の間にも慎重論、反対論が少なくない」ことを承知のうえで、「首相は不退転の決意で…合意形成の先頭に」とけしかけています。
各紙とも、首相が消費税増税・TPP参加の姿勢を明言したことを「歓迎」し、両課題が「避けて通れない」「待ったなし」とする論旨も同じなら、「有言実行」「不退転の決意」と、使っている言葉まで同じです。
日本新聞協会の新聞倫理綱領は「あらゆる権力から独立したメディア」として、「正確で公正な記事と責任ある論評」を提供するとしています。この綱領が泣くような状況です。
安保条約改定に対する国民的な反対が盛り上がった1960年6月、在京7紙が「7社共同宣言」を出し、国民の抗議行動を暴力視し政府を助けた歴史を思い起こさせます。
TPP参加には、農業団体にとどまらず日本消費者連盟、日本医師会なども懸念を表明。山形、富山、熊本各県では全市町村で反対の意見書が可決されるなど多くの自治体で反対意見書があがっています。消費税増税も多数の国民が反対しています。
自ら推進してきた「二大政党」の行き詰まりに焦り、増税か福祉切り捨てかの袋小路を迫る姿は、メディア自身の行き詰まりを示しています。
冒頭の鶴見氏の言を肝に銘じ、世の中を見つめて発言し行動して行きたいものです。
★今日のつぶやき→http://twilog.org/oowakitomosan
「大脇道場」消費税増税反対キャンペーン中!
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福祉目的なんて嘘っぱち!財政再建目的なんて嘘っぱち!
消費税は、昔も今もこれからも「法人税減税目的税」

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テーマ:政治・経済・社会問題なんでも - ジャンル:政治・経済
2011.01.09 | | Comments(3) | Trackback(9) | ・マスコミ・テレビ・新聞Ⅱ
