NO.2614 「めざす会」が法的措置を検討 障害者総合支援法成立への関係団体及び日弁連の抗議声明(2) 新聞報道等
前のエントリーに続き、紹介します。
障害者自立支援法は違憲だとして2008年に国を訴えた元原告や弁護団は会見を行い、「自立支援法の廃止を前提とした和解を踏みにじった」として、新たに国を訴える準備を行っていることを明らかにしました。
まずは「障害者自立支援法訴訟の基本合意の完全実現をめざす会」メールニュースより。
○「障害者総合支援法」可決・成立に抗議する記者会見中継録画(約60分)
おもな発言
○藤岡毅弁護団事務局長 声明発表・解説「総合支援法」成立に対する訴訟団抗議声明
2012年6月20日
障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団・基本合意の完全実現をめざす会
1 「総合支援法」の成立
本日、第180回国会で障害者自立支援法の一部改正法である「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(総合支援法)が成立した。
本国会で成立するべきは障害者自立支援法を根こそぎ廃止し、障害者の基本的人権を支援する新しい法律であるべきである。
訴訟団との約束と願いを踏みにじったこの法律制定を断じて許すことは出来ない。
2 2006年障害者自立支援法の導入
2006年に施行された障害者自立支援法は
「障害福祉サービスはお金で買うものだ」という考え方(平成17年10月06日・衆議院厚生労働委員会中村秀一元厚生労働省社会援護局長・政府参考人答弁参照)により制定された法律である。
3 違憲訴訟の提起
私たち障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団は、障害福祉は憲法に基づく基本的人権の行使を支援するものだとして障害者自立支援法の廃絶と新たな法律の制定を求めて2008年、2009年、全国で71名の原告が勇気を奮って訴訟を提起した。
政府は2009年10月、障害者自立支援法の廃止を前提とした裁判の話し合い解決を呼びかけ、真剣な協議を経て、2010年1月7日、被告である国は次の基本合意文書を原告らとの間で調印した。
・国は違憲訴訟の目的と意義を理解したこと(前文)
・障害者自立支援法を平成25年8月までに廃止することの確約(第一)
・速やかに応益負担制度(定率負担制度)を廃止すること(第一)
・新たな障害者総合福祉制度は憲法等に基づく障害者の基本的人権の行使を支援することを基本とすること(第一)
・障害者自立支援法の総括と反省として、国は、憲法第13条、第14条、第25条等に基づく違憲訴訟団の思いに共感し、真摯に受け止めること(第二1)
・国は障害者自立支援法が障害者の人間としての尊厳を深く傷つけたことに対し心から反省し、その反省を踏まえて今後の施策を立案し実施すること(第二2)
・新たな総合福祉法の制定にあたり訴訟団提出の要望書を考慮の上、障がい者制度改革推進本部の下での障害者参画の上で十分議論すること(第二3)
・自立支援医療の利用者負担について当面の重要な課題とすること(第四)
・新しい福祉制度の構築においては、次の障害者自立支援法の問題点を踏まえて対応すること
○ どんなに重い障害を持っていても障害者が安心して暮らせる支給量を保障し、個々の支援の必要性に即した決定がなされるようにすること
○ 収入認定は、配偶者を含む家族の収入を除外し、障害児者本人だけで認定すること。
○ 介護保険優先原則(障害者自立支援法第7条)を廃止
4 裁判の終結
上記基本合意成立を受け、2010年4月21日までに全国14カ所の地方裁判所の法廷の裁判官の面前で、被告国が同基本合意を確認して誓約する裁判上の和解が成立し、同訴訟は司法上の解決をみた。
5 推進会議、総合福祉部会
2010年1月に障がい者制度改革推進会議、同年4月に総合福祉部会が開始され、いずれの会議も基本合意文書を基本として議論が進められることが確認され、私たちは訴訟終結の判断は間違っていないと確認した。
6 障害者自立支援法廃止の閣議決定
2010年6月29日政府は障害者自立支援法の廃止を閣議決定した。
7 2011年8月30日 骨格提言
障害種別などを乗り越えた55人のあらゆる立場からなる委員の一致した提言として、総合福祉部会が障害者自立支援法を廃止した後の新たな法律の骨格を提言した。
骨格提言は基本合意文書、および障害者権利条約に依拠して作成された。
私たちはこの訴訟運動が推進してきた力と役割の正しさに確信を抱いた。
8 2012年 政府の約束反故
ところが2012年2月8日第19回総合福祉部会で厚労省から発表された法案は障害者自立支援法をそのまま定着化させる法案と言ってよい内容であり、国の背信行為に訴訟団全員は憤りに打ち震えた。あらゆる機会をとらえて私たちは国に再考を促した。
しかし、その後微修正を経たものの、本日成立した法律は廃止するべき法律を存続させる一部改正法であり、国が被告として履行するべき法令廃止の約束に違反し、基本合意文書で約束された確認事項をことごとく踏み躙る内容であり、司法決着を覆す国家の許されざる野蛮な違法行為であると私たちは万感の怒りを持って抗議する。
9 法的責任追及
訴訟団は本日の法律制定により国の違法行為はより明確化したと考える。
訴訟団は国の背信的で違法な対応に対し法的責任を追及すべく検討中であり、法的意見の発表を予告するとともに、違法行為に加担した政治家の政治責任、政府の法的責任を徹底的に追及することをここに宣言する。 以上
○五十嵐良さん=応益負担は残っている。同じ作業所の利用者なのに、15%の人たちは利用料が無料ではない。格差が広がっている。
○家平悟さん=国が約束したから基本合意を結んで和解した。名前とちょっと理念をいじっただけで法の廃止とするなんてことには憤り感じる。配偶者の収入を理由とした応益負担はなんら解消されていない。断じて許されない
○石井学さん=(路上集会で)原告のみなさんからシュプレヒコールをほめてもらえてよかった。これからもがんばる。村田くんと、これからも一緒にがんばりたい。
○新井たかねさん=「自立支援医療は応能負担になっている」との大臣答弁は許せない。晦日の赤坂議員宿舎でぎりぎりの調整した際「当面の重要な課題」とした。苦しんでいる人の実態を報道して欲しい
○柳沢加代子さん=骨格提言の実現でどんなに知的重度の障害の娘が生きやすく、生活しやすくなると思えた。そんな期待、希望を粉々にされた。障害者が生きやすい世の中になってもらいたいの気持ちでいっぱい。
○中村和子さん=私たちは負けたけれど、これは負けではない。骨格提言も基本合意もしっかりものだから中身では勝ってる。運動は新たな出発の第一歩ではなく、基本合意、骨格提言の宝があるのは道半ば、中間までは来ている。あきらめないで運動を続けていって、いつか新しいみんなが暮らしやすいしっかりした法律をかちとりたい。
○秋山宇代さん=施設運営費の日額払いでは安心して障害者が暮らせない。職員が暮らせないと提訴した。基本合意、推進会議、骨格提言、これからは変わるとわくわくした。息子もがんばり、偉かったよと褒めた。でも、この3年半のすべての人の作業はなんだったのか。新たな運動をはじめなければならない。
○林たみ子さん=最重度の息子。大臣が二人、首相も約束してくれた。息子の前で説明して欲しい。息子がどんな思いで待っているか・・つらい。
○下地和代さん=自立支援法になってからの施設運営はとても大変。自分も65歳になるが、障害が変わるわけではないのに介護保険に入る。自分のためにも、息子のためにも、施設のためにも、日本に住んでいる障害者のためにも一生懸命運動してがんばっていきたい。障害者の問題をマスコミはときどきでいいから取材して欲しい。見て欲しい
○我妻トシ子さん=これからもよろしくお願いします
○太田修平めざす会事務局長=制度改革につなげようととりくんできたが、原告の話を聞いて、本当に切ない思い。力不足を感じている。申し訳なく思っている。基本合意をきちんと守らせ法制化していくことは、障害者団体の責任であるにもかかわらずが、それがなしえなかったことは痛恨の極み。全国あらゆるところで、親子の問題、介護の問題、施設の問題そこらじゅうにある。71名の原告だけの問題ではなかった。もっともっとがんばって、明日への運動につなげていきたい。
○藤岡弁護士=今日は、基本合意と骨格提言に基づく法律が成立し、喜びの涙を流す日だったはず。残念ながら悔し涙をのむ日になった。ですが、このことで終わりにしません。負けません。精一杯進んでいきます。
★「障害者総合支援法」成立に際して、改めて障がいのある当事者の権利を保障する総合的な福祉法の実現を求める会長声明
2012年(平成24年)6月20日
日本弁護士連合会
会長 山岸 憲司
本日、国会で、「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律」(以下「本法律」という。)が成立した。
本法律は、障害者自立支援法の名称を「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)」(以下「総合支援法」という。)と改めるなど、同法を一部改正するものである。
国は、2010年1月7日、障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と基本合意文書を締結し、障害者の権利に関する条約の批准も視野に入れ、「障害者自立支援法を2013年8月までに廃止し、新たな総合的な福祉法制を実施する」と確約した。
これを踏まえ、当連合会は2011年10月7日、第54回人権擁護大会において「障害者自立支援法を確実に廃止し、障がいのある当事者の意思を最大限尊重し、その権利を保障する総合的な福祉法の制定を求める決議」を採択し、さらに2012年2月15日には「障害者自立支援法の確実な廃止を求める会長声明」を公表した。
しかし、総合支援法の内容は、障害者自立支援法の一部改正に留まり、障がいのある人の基本的人権を具体的に保障する規定が設けられていない。障がいの範囲についても、障害者の権利に関する条約が求めている「障がいが個人の属性のみではなく社会的障壁によって生じる」とする社会モデルの考え方が採用されず、そのために新たな制度の谷間を生む内容となっている。また、自己決定権に基づき個々のニーズに即して福祉サービスを利用できる制度にもなっていない。かかる総合支援法は、当連合会が従来提言してきた内容とは相容れないものである。
また、本法律は、附則に、施行後3年を目途として、常時介護を要する者に対する支援等の障害福祉サービスの在り方や支給決定の在り方等について検討を加え、所要の措置を講ずる旨の見直し規定を設けているが、本見直しに際しては、当事者参画のもとで、附則に例示された項目に限定されることなく、障がい者制度改革推進会議が取りまとめた骨格提言の内容が実現されるべきであり、障がいのある人の基本的人権を真に保障する福祉法制の実現に向けた検討が行なわれるべきである。
当連合会は、3年後見直しの際には、人権擁護大会決議に基づく内容が実現され、何人も障がいの有無により分け隔てられることなく地域で暮らせる権利が保障される福祉法制が実現されることを強く求める。
★「基本合意」反故!「骨格提言」無視!
十分な審議なしの障害者総合支援法案成立に断固抗議する!
2012年6月20日
障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会
本日(6月20日)、政府は参議院本会議において、「障害者総合支援法案」(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律案)を十分な審議もなく、民主・自民・公明の賛成多数で可決・成立させた。
同法案は、たとえ法名変更しても、あの問題多い障害者自立支援法を延命させる「改正案」以外のなにものでもなく、長年その廃止と「障害者総合福祉法」制定を求め続けてきた障害者・家族、関係者の願い・期待を踏みにじるものであるといわざるをえない。
そもそも自立支援法の廃止、総合福祉法の制定は、民主党の政権交代時の公約であり、それゆえの障害者自立支援法違憲訴訟団との「基本合意」による和解であり、内閣府に設置された障がい者制度改革推進会議・総合福祉部会での議論と「骨格提言」のとりまとめであったはずである。
今回の「基本合意」反故、「骨格提言」無視の法案成立は、国約(国の約束)を平然と破る政治への不信とともに、「私たち抜きに私たちのことを決めないで!」と訴えてきた障害当事者への裏切りであり、絶対に許すことはできない。
政府・厚生労働省は国会審議の中で、「名前を変え、基本理念もつくり直した」、「総合支援法案」は事実上の自立支援法廃止であり、新法であるとの説明に始終した。また、「骨格提言」を「段階的・計画的に実現する」、今回はその第一歩であると説明した。これらの説明がいかに説得力がなく、「基本合意」反故・「骨格提言」無視の事実を否定するものにはならないことはいうまでもない。
なによりも、「骨格提言」で示した権利法としての位置づけが「支援法」のままの見直しにとどまり、基本理念には「可能な限り」が盛り込まれ、難病を範囲に加えるとはいえ、具体的には「政令で定める」とされ、あらたな谷間の問題を生むことが心配される。また障害程度区分や就労支援のあり方等を「検討事項」として3年後に先送りし、しかもその検討も障害者・関係者の声を反映させるといいながら、「いつから」「誰が」「どのように」検討するのか全く具体化されていない。さらに、利用者負担に至っては、法文上「応益負担」が残されているにもかかわらず、「つなぎ法」(2010年12月3日改正)によって応能負担に変更し、すでに解決済とされ、「提言」で求めた「障害に伴う支援は原則無償」「障害者本人の収入に応じ」の明記は無視した内容になっている。今回強行された総合支援法が、現状の諸問題を解決するどころか、さらに深刻な問題をつくり出すことが懸念される。
なにゆえに、政府・厚生労働省は自立支援法の「改正」にこだわるのか。そこには、小泉政権以来の社会保障構造改革・社会福祉基礎構造改革があり、介護保険と今国会で審議中の「子ども子育て支援法案」との整合性があることはいうまでもない。保険原理・受益者負担の強化・徹底、市場原理の導入・利用契約制度への変更に伴う公的責任の縮小・廃止等の構造改革路線は、現民主党政権に引き継がれ、そしていま、「社会保障・税一体改革」に基づく消費税増税と「福祉目的税化」、自助(自己責任)、共助としての社会保険化と制度間「統合」を基本とした「社会保障改革」がさらに国民に負担と犠牲を押しつけようとしている。
それだけに、私たちは高齢者・子ども等他分野との連帯・共同も重視し、「社会保障・税一体改革」を許さないとりくみをすすめながら、あくまでも「基本合意」「骨格提言」に基づく自立支援法の廃止と権利を保障する総合福祉法制定を求めて、障害者関係団体との共同をさらに強める決意である。
★声明
「基本合意」を破り、「骨格提言」を棚上げにした
障害者総合支援法の可決・成立に強く抗議します
2012年6月20日 全国障害者問題研究会 常任全国委員会
6月20日、国会は、多くの障害者・関係者の声を踏みにじり、民主・自民・公明三党の多数の暴挙によって、障害者総合支援法を可決・成立させました。この法は、「基本合意」を破り、障害者団体が一致してまとめあげた「骨格提言」を棚上げにするもので、「新法」とは名ばかりです。
天下の悪法・障害者自立支援法は、障害者・関係者のねがいと大きな世論によって否定され、違憲訴訟団は国と基本合意を締結し、司法「和解」しました。この基本合意と障害者権利条約を指針として、政府機関として制度改革推進会議がもたれ、総合福祉部会は全員一致で骨格提言をまとめました。全国で200をこえる自治体は骨格提言にもとづく総合福祉法を求める決議をあげています。
しかし、厚労省が2月に示した法案は、自立支援法の「廃止」ではなく「一部改正」でした。多くの厳しい批判があったにもかかわらず、政府与党は3月に閣議決定・国会上程し、4月26日には衆議院本会議で一切の審議もなく採決しました。これに前後して、国会前には雨の日も風の日も全国各地から4500名を越える障害者・関係者が駆けつけ、基本合意を守り、骨格提言を尊重した徹底審議を求め声を上げていました。
総合支援法では、「障害者の人間としての尊厳を深く傷つけた」応益負担はなくなりません。収入認定は家族の収入を除外して障害児者本人だけにすべきです。制限列挙の「障害の範囲」では、「谷間の障害」はなくなりません。これでは障害者権利条約の批准条件は満たせません。
そして、「金ないものから金とるな!」。私たちが求めているのは「特別」なものではなく、極端に低い日本の福祉予算を、せめてOECD諸国の平均並にすること。同年齢の市民と同等の権利を保障することなのです。
国が締結した基本合意という約束を破ることは、法治国家としての民主主義のルールを破壊する歴史的な暴挙です。
私たちは障害者団体やさまざまな行政訴訟団、多くの市民とより固く連帯し、基本合意を守り、骨格提言を尊重した障害者総合福祉法の実現を求めます。障害者権利条約の批准にたる国内法制度の抜本改正をひきつづき、強く求めつづける決意です。
以下、マスコミ報道から。
■総合支援法成立
声聞かず 審議わずか
障害者ら 新法へ運動を決意(しんぶん赤旗 2012年6月21日(木)
障害者自立支援法の名前を変えただけの障害者総合支援法が可決、成立した中、全国から集まった障害者や関係者200人余りは20日、「私たちの声を聞かず、審議もつくさないまま障害者総合支援法が成立するのは許せない」と怒りの声を上げました。同時に、新法制定まで運動を続ける決意を固め合いました。
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38歳の息子が障害者自立支援法違憲訴訟元原告の秋山宇代(たかよ)さん(70)は、参院厚生労働委員会で小宮山洋子厚労相が19日、同法案提出に際して訴訟団関係者に説明し、「納得してもらった」と発言したことにふれ「許せない気持ちでいっぱいだ」と強調。「障害者が安心して暮らせる社会はすべての国民が安心して暮らせる社会。多くの人と手を取り合って『基本合意』と『骨格提言』を生かした新法をつくる運動をすすめたい」と決意を述べました。
てんかんの持病がある男性(51)と東京都小平市から来た男性(35)は、統合失調症を患っています。「自立支援法では、病気を自己責任とされた。新法を実現して、病気を持っていても就職して自立したい」と思いを述べました。
「障害者自立支援法違憲訴訟の基本合意の完全実現をめざす会」の太田修平事務局長は「私たちが声を出し人間としての権利を主張することで、悪い方向へ進もうとする政治に歯止めをかけている」と強調。「全国の人たちとつながり運動の先頭に立って、社会を変えていこう」と呼びかけました。
同日、障害者自立支援法違憲訴訟団は厚生労働省で記者会見し、「訴訟団と交わした法制上の約束と願いを踏みにじる総合支援法は断じて許すことができない」とした抗議声明を発表しました。
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解説
国と障害者の合意完全に裏切る暴挙
民自公3党は、自立支援法の恒久化を狙う障害者総合支援法をわずかな国会審議で強行成立させました。当事者抜きに障害者のこと決めない、新法をつくるという合意を完全に裏切った法案を押し通す暴挙です。
参議院では、厚生労働委員会で審議入りした19日、趣旨説明から採決までわずか3時間たらずで押し通し、参考人質疑もなしで民自公の談合の結論を押し付けました。衆議院でも参考人質疑もなく、3時間の審議で採決が強行されていたものです。
国会には連日、障害者ら関係者が詰めかけ、徹底審議を求めました。採決を強行した参院厚労委は傍聴者であふれかえり、政府の不誠実な答弁のたびに怒りの声があがりました。
民主党政権が自立支援法違憲訴訟団との和解の基本合意で確認した、当事者の意見を踏まえることなく障害者自立支援法を制定し「障害者の人間としての尊厳を深く傷つけた」という反省はどこにいったのか。採決強行を談合した自公両党の責任も厳しく問われます。
そもそも自公政権が強行した障害者自立支援法(2006年4月施行)は、障害者が生きるために必要な支援を「益」だとして1割負担を課し、障害が重いほど負担が重くなる「応益負担」を持ち込みました。総合支援法は、「応益負担」などを残し、障害を自己責任・家族責任とする点で自立支援法と根幹は変わりません。
政権交代の公約で自立支援法の「廃止」を掲げた民主党政権は、当事者が多数参加する内閣府の障がい者制度改革推進会議・総合福祉部会に、新法の考えをまとめることを依頼しました。にもかかわらず、同部会が示した「骨格提言」(11年)をほとんど法案に盛り込みませんでした。こうした経過も当事者の熱意を踏みにじるものです。
自立支援法の文字通りの廃止と新法制定は、国が司法の場で約束した重いものです。「総合支援法」の強行成立をもって棚上げすることは許されません。(鎌塚由美)
■障害者総合支援法成立:サービス利用料無料化見送り(毎日新聞 2012年06月20日 21時19分)
政府が現行の障害者自立支援法に代わり、今国会に提出していた障害者総合支援法案は20日、参院本会議で民主、自民、公明などの賛成多数で可決、成立した。重度訪問介護サービスの対象拡大など新たな施策を盛り込んだが、内閣府の障がい者制度改革推進会議総合福祉部会が出した骨格提言はことごとく採用されず、障害福祉サービス利用料の原則無料化も見送られた。
サービス利用料を原則1割負担(応益負担)とした自立支援法を巡っては各地で違憲訴訟が起こされ、民主党が同法廃止を約束して原告団と和解。だが廃止は実現せず、自己負担も残った。元原告団らは20日夜の記者会見で「骨格提言が全く反映されていない。万感の怒りを持って抗議する」と非難し「政府の法的責任を徹底的に追及する」と再提訴も辞さない姿勢を示した。
一方、知的障害者の親らでつくる「全日本手をつなぐ育成会」の田中正博常務理事は「障害者福祉は社会保障でも出遅れており、一歩でも前に進むことが重要」と評価。新法が難病患者を障害福祉サービスの対象としたことに「日本難病・疾病団体協議会」の伊藤たてお代表理事は「歓迎したい」と述べた。
■障害者総合支援法成立:政治主導の挫折…関係者失望(毎日新聞 2012年06月20日 21時23分)
障害者総合支援法は自立支援法の抜本的改正にはならなかった。背景にあるのは民主党が掲げた政治主導の挫折。政権交代を実現した09年衆院選のマニフェストに自立支援法廃止を盛り込むなどハードルを上げすぎたばかりに、関係者の大きな失望や反発を招いた。
「期待した政治主導はほとんど感じられなかった。厚生労働省はねじれ国会以降、政治主導の危機が去ったとみたか我々部会三役に何も言わなくなった」
こう憤るのは、障がい者制度改革推進会議総合福祉部会で副部会長を務めた茨木尚子・明治学院大教授。10年参院選大敗を機に政治主導が急速にしぼんだと感じたという。
自立支援法廃止の前に立ちはだかったのは、財源の壁とねじれ国会だった。加えて、廃止による自治体側の事務負担増大という事情も。そこで民主党は社会保障費の伸びを抑制し、他の施策との整合性を重視したい厚労省と歩調を合わせ、自立支援法をつくった自民・公明両党にも配慮して成立を優先させた。
その結果、新法は自立支援法の枠組みに沿うものに。障害者らも議論に加わった同部会の部会長、佐藤久夫・日本社会事業大教授は「何のために招集されたのか」とあきれる。
■改正自立支援法「基本合意に違反」 違憲訴訟の元原告ら (日経 2012/6/20 21:47)
改正障害者自立支援法が20日に成立したことを受け、同法を違憲と訴えた集団訴訟の元原告らが同日、厚生労働省で記者会見し、2010年に政府と元原告が和解に向けて調印した基本合意を挙げ「新法をつくる約束を踏みにじった」と批判。政府の部会が昨年8月にまとめた、福祉サービスの原則無料化などの提言も反映されていないと主張した。
改正法は、法律の名称を「障害者総合支援法」に改め、難病患者も対象に加えることなどが柱。一部を除き13年度から施行する。
■障害者2法が成立 自立支援改正と優先調達 (福島民報6.20)
障害福祉サービスの対象に新たに政令で定める難病患者を加える改正障害者自立支援法は20日の参院本会議で民主、自民、公明3党などの賛成多数により可決、成立した。障害者が働く施設から優先的に商品を買うよう国などに求める障害者優先調達推進法は全会一致で可決、成立した。
改正支援法は名称を「障害者総合支援法」とし、一部を除いて2013年4月に施行される。これまで身体障害者に限られていた「重度訪問介護」の対象を重度の知的障害者、精神障害者にも拡大。支援の必要度を表す「障害程度区分」は「障害支援区分」と改める。
支援法の改正に対し、同法違憲訴訟の元原告らは「国は支援法廃止と新法制定を約束したはずだ」と反発。今回の法改正の内容を不服として再び国を提訴することを検討する考えを示した。
優先調達法は、障害者の自立を促すため、国などに対し障害者施設からの調達目標を定め、実績を公表するよう義務付けている。
■WEBマガジン福祉広場☆2012/6/21更新☆
障害者自立支援法の改正案としての「障害者総合支援法案」が参議院の本会議も通った。障害者自立支援法の名前を変える、あるいは一部を改善するなどの変化はあったものの、障害者の権利を確認するなど、障害者施策を変えるものにはならなかった。障害者施策の転換をめざして、新たな闘いが始まる。
この法律案をめぐる経過から言えることいくつか。自立支援法違憲訴訟団と政府が結んだ「基本合意」を無視し、政府機関が策定した「骨格提言」が軽視して、この法律案がつくられたということ。数え上げればきりのない約束違反の上に、法案は成り立っていた。そういう意味では、「逆転」を成し遂げた勢力の「背信」の結果とも言えようか。
法案そのものが、自公政治を肯定的にとらえ、つまり自立支援法を肯定的に位置づけていたということがあって、最初から最後まで、民自公3党の連携のもとに進められた。この法律案に関する限り3党の足並みはピタリと一致していた。「骨格提言に基づいて障害者法をつくれ」という地方議会の意見書、最後までの国会周辺での「路上集会」など特筆すべき成果が生み出された。
それにしても腹立たしかったのは、6月19日参議院厚生労働委員会での衛藤議員の、障害者基本法が規定する障害者政策委員会の委員をめぐる発言だった。政策委員会の委員に自立支援法の改定(つなぎ法)に反対し、障害者総合支援法に賛成でない人が選ばれているのは問題だ、という発言だった。政策委員会の委員は法案賛成派だけに限る、というわけだ。
これはおかしい。政策委員会委員が法案反対派であっても、何の不思議もないし、不都合はなにもない。発言は、「魔女狩り」であり、現代版「マッカーシズム」だ。そして第2に、「基本合意」など約束破りを繰り返した法案こそ問題にすべきで、筋違いも甚だしい。意見の違いを認めない衛藤さんは障害者福祉にふさわしくない。
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2012.06.21 | | Comments(0) | Trackback(5) | ・障害者総合福祉法制定へ
