NO.1013 内部留保の4%で453万人の雇用創出 労働総研提言
労働総研が解雇規制と失業保障、雇用創出のための緊急提言を発表した。
労働総研の大木一訓代表理事は、「日本のワークシェアリング論は、非正規切りは続け、賃下げを広げるものにほかなりません。内部留保を使って雇用を維持し、労働時間の短縮と賃金の底上げを行うことが求められています」と話す。
提言は、働くルールの厳守と労働時間の短縮で、453万人分の雇用を創出できる―。財源は大企業がため込んだ内部留保の4%でまかなえると指摘している。
労働総研はすでに、サービス残業の根絶や年休の完全取得などで創出できる雇用を272万3000人分と発表していた。今回は、ヨーロッパ並みの週38時間労働で、180万7000人を雇用できると試算。必要な人件費は、2007年末で403兆円ある内部留保のわずか4・11%と指摘している。
大量解雇から雇用を守るため、企業も国や自治体も現行法でもやるべきことが行われていない。
・大企業には内部留保の活用を求め、3年を超える非正規労働者を正社員化するよう提起。
・国と自治体には、現行法をもとに企業に対する指導を強めるとともに、非正規職員の正規化や発注業務に適正な賃金を保障する公契約法・条例の制定などを求めている。
また、雇用の安定に向け、労働者派遣法の抜本改正や最低賃金の引き上げを強調。失業保障として、雇用保険制度の改善・拡充や、生活保護の制度と運用の改善のほか、公的就労事業の確立などを求めた。
以下、引用紹介。
解雇規制と失業保障、雇用創出のための緊急提言
労働運動総合研究所(労働総研)2009年3月5日
労働総研は、この度、企業と国・地方自治体がなすべき施策についての緊急提言をまとめた。
雇用情勢の急激な悪化と景気後退を受け、日本の政労使には待ったなしの行動が望まれている。折しも3月3日には、日本経団連と連合が「雇用安定・創出に向けた共同提言」を政府に提出、舛添厚労相は、今月中に雇用悪化に対応した政労使共同宣言をまとめるとの意向を示した。
「共同提言」は、雇用調整助成金の拡充、公共職業訓練の充実とハローワーク強化、雇用保険非受給者向けの就労支援給付など、政府に対する要望事項を提起している。しかし、「共同提言」には決定的に重要な点が欠けている。それは「大企業の社会的責任」の問題を取り上げていないこと、失業するや生活困窮状態に陥ってしまう非正規・不安定雇用問題を取り上げていないこと、正規労働者の長時間労働問題を取り上げていないことだ。
労働総研は、低賃金・不安定雇用の非正規労働者を増大させ、他方で正社員に長時間労働を強いてきた、これまでの雇用・労働の在り方を根本的に切り替えることを主張し、その立場から、以下の内容を提言する。
1.企業、国、地方自治体は、雇用維持、失業者の生活保障、雇用創出の3点セット実施に全力を
企業、国、地方自治体は、緊急に(1)解雇規制と雇用維持、(2)失業者の生活と権利の保障、(3)新たな雇用の創出・拡大の3点について、それぞれの立場から、必要な手立てをとるべきだ。
(1)企業は、「非正規切り」等の大量解雇・雇止めを直ちにやめ、サービス残業の根絶、年次有給休暇の完全消化、非正規雇用の正規化に努めること。必要なコストは「内部留保」の一部の取り崩しで調達可能であり、それを実施すること。
(2)国や自治体は、企業に「働くルール」を守らせ、雇用責任をはたさせること。自らも、公務非正規の安易な解雇をやめること。雇用対策法や地域雇用開発促進法、雇用保険法、生活保護法等、現行制度をフル活用し、失業防止・失業時の生活保障、就業支援に責任を果たすこと。
(3)国や自治体は、安定雇用の実現に向け、派遣法の抜本改正、有期労働契約の改正、解雇規制法の制定等の法整備を行うこと。また、雇用創出に向けて、年休完全取得などを義務付ける「労働時間短縮促進法」の制定、週38時間労働制の導入をはかること。
2.内部留保取り崩しによる雇用維持は可能
(1)企業は上記の施策を、「内部留保」を取り崩してでも、実行するべきだ。例えば、自動車メーカー17社の連結内部留保は、2001年3月期の15兆円から08年3月期の30兆円へと15兆円も増大し、他方で労働分配率は01年3月期の55.3%から、07年3月期には40.9%へと大幅に下落している。労働分配率を抑え、労働者の犠牲で内部留保を増大させたことは明らかだ。この点から見ても、内部留保を雇用に活用するのは当然のことだ。以前から、賃上げ、時間短縮、正規雇用拡大等で労働者に還元していれば、これほど急激な景気後退にはならなかったはずだ。
(2)「内部留保は自由に使える金ではない。取り崩せない」との説があるが、大企業が保有する現金・預貯金等の換金可能な資産は莫大だ。トヨタ自動車の換金性資産は、現金預金595億円、売買目的の有価証券1兆630億円、「投資その他の資産」中の投資有価証券2兆3187億円、自己株式1兆2126億円で、計4兆2126億円。さらに特別な目的を設けず、経営者の裁量で使用できる別途積立金が6兆3409億円ある。これらの合計10兆5000億円に対し、5万人の労働者を年収300万円で雇用して1500億円、1.4%の取り崩しで足りる。なお、「内部留保は設備投資され機械になっている」との主張もあるが、設備投資には巨額の減価償却費が使われており、内部留保の一部取り崩しをしても問題ない。
3.「ワークシェアリング」の前に「ワークルール徹底」を
(1)日本の大企業が「ワークシェアリング」と称し実施していることは、「非正規切り」の強行と正社員の休業による賃金カットであり、ワークシェアリングとは言えない。そもそもワークシェアリングを行う前に、サービス残業や違法な「非正規切り」の根絶、有給休暇完全取得など労働者の権利を守ることで雇用創出をすべきだ。それに必要なコストは、高額の配当金の削減と内部留保の一部の取り崩しで可能である。
(2)労働総研の試算では、今の働き方でまかなわれている日本社会全体の業務量を前提に、(1)サービス残業根絶をすれば118.8万人の新たな雇用が必要となり、(2)完全週休二日制と年次有給休暇の完全取得をすれば153.5万人の新たな雇用が必要になる。それにより、労働者の賃金は13.2兆円増加し、消費需要が9.9兆円増え、国内生産は15.0兆円誘発される。企業の賃金支払い総額も13.2兆円増えることになるが、それは内部留保(2007年時点で403兆円)のわずか3.3%をあてるだけで可能だ。
(3)ヨーロッパの経験では、不況時こそ労働時間短縮のチャンスである。さらに、週38時間労働制を実現すれば、180.7万人の新たな雇用が創出され、労働者の収入は3.3兆円増加する。それは家計消費需要を2.1兆円創出し、その生産誘発効果により国内生産が3.4兆円増加する。これはGDP(国内総生産)にすると約1.8兆円になる。前項の「働くルール厳守による経済効果」と合わせると、労働者の賃金収入増加額は16.6兆円、それによる家計消費支出の増加額は12.0兆円、誘発される国内生産額は18.5兆円、GDP(国内総生産)ベースでは10.5兆円となる。税金も国税、地方税あわせて1.9兆円の増収が期待できる。
2007年度のGDPは516兆円であり、働くルールの厳守と週38時間への労働時間の短縮は、GDPを2.04%押し上げることになる。日本の名目GDP上昇率は1997~2007年度平均0.05%、景気上昇局面に入った2003年度以降の5年間でも年率1.05%であり、相当大きなものであるといえる。しかも、02~07年度のGDPを押し上げたのは大企業の輸出だったが、試算の対象である中~低所得者層の賃上げは、高所得者層の収入増よりはるかに効率的に内需を拡大し、商業、サービス業、食料品、繊維製品等の中小企業分野の生産を大きく誘発する。不況打開には、この施策を行うべきである。
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2009.03.09 | | Comments(0) | Trackback(2) | ・雇用と労働問題Ⅲ
