NO.1114 「英雄は、労働者の一団である。」 雇用破壊の中で・・・『蟹工船』(ル・モンド紙の紹介)と労働運動の広がり。
貧困と労働者のたたかい。
新たな貧困の広がりの中で、労働者のたたかいが広がり、労働組合への加盟が増えている。
先ずは、「イル・サンジェルマンの散歩道」はジャン・バルジャンさんのル・モンド紙(2008年7月11日付)「蟹工船」ブームについての記事から転載、紹介します。
話題としてはちょっと古いですが、ことの始まりのエピソードとしても・・・、なにより、労働者の権利擁護とセーフティネットが充実したフランスの目から見た日本、という意味で興味深い紹介です。
De < nouveaux pauvres > se passionnent pour la littérature prolétarienne
Article paru dans l'édition du 11.07.08

「新たなる貧困層」がプロレタリア文学に夢中になる。
単なる古典の復活か?
小林多喜二(1903-1933)の「蟹工船」は、1930年代のプロレタリア文学の代表作のひとつである。通常、再版は5,000部であるが、今年は50,000部が刷られ、書店の陳列棚の目立つ場所に置かれている。それも最も売れ行きの良いと格付けされる文庫本が置かれる3箇所のうちのひとつを、常に占めているのである。単なる古典の再発見なのであろうか?おそらく。しかし意外なのは、その読者である。それは若い不安定労働者、ときには「新しい貧困層」と呼ばれる人たちなのだ。
運命づけられた敗者
20歳から30歳の若者たちが、パート労働市場に送り込まれる。彼らは輝きのない未来に捉えられ、そこから逃れる機会も少ないことを感じている。日本における職業訓練は、企業のなかで身につけるようになっている。ひとつの仕事から別の仕事に移ることは、ひとつの技術を獲得する上でよい方法とはいえない。このように「敗者」は、敗者としてとどまるように運命づけられているのである。200万人の若者が、こうした状況に置かれている。すなわち彼らの運命は、社会的な問題なのだ。多くの労働者は深い不安の中に打ち沈む。そしてあるものは「キレる」。
秋葉原通り魔事件
6月8日、25歳の不安定雇用の25歳の若者が、日曜日の秋葉原(情報機器やテレビゲームの店が立ち並ぶ街)で7人の通行人を殺害する事件がおこった。彼の狂気に満ちた殺意は、日本中を悲嘆の底に突き落とした。その計り知れない異常さの深層には、この無差別殺人が、社会的敗者になった者の社会的孤立を悲劇的に照らし出していると、犯罪学者のカゲヤマ・ジンスケは強調している。
80年の隔たりをのり越えて
共産党の活動家でもあった作家小林多喜二が、逮捕され警察の拷問によって命を落すほぼ4年前の1929年に書かれたこの短編小説の中に、彼らはなにを見出すのであろうか?行き先を見失った若者たちは、80年の隔たりをのり越えて、オホーツク海で蟹を捕り缶詰にするための工船に乗り込み、そして自分たちに加えられる抑圧と暴力に対し反逆することになる男たちの運命に(ときどき未成年者も含まれたが)、おそらく自分たちの運命をかさねたのであろう。小林多喜二の本は発売禁止になり、1948年まで再版されたかった。われわれの知るところでは、英訳本がひとつ残っているだけである(The Factory Ship, University of Tokyo Presse, 1973)。
「英雄は、労働者の一団である。」
「この本のなかには、英雄も中心人物もいない。英雄は、労働者の一団である。」と小林多喜二は、出版社あての手紙のなかで書いている。同封された原稿は、「さあ、地獄さ行くで!」という登場人物の一人の言葉で始まっている。
戦後、彼の同世代の作家の中で重要な位置を与えられたこの作家は、登場人物をあだ名や出身地で描き分け、身体的な特徴などは描かなかった。彼らを識別するものは何もなかった。
孤立と労働組合の萌芽と
蟹工船の男たちのように、若い不安定労働者は自分の個性が奪われて、取替え可能で、「使い捨て」られる存在になっていくように感じているのである。彼らのなかのある部分は、組合の芽をつくることで対抗しようとしているが、大多数の労働者は孤立したままである。
新たな貧困の中から
保守的な月刊誌である文芸春秋(7月号)の記事のなかで、学生による体制批判の第2期である1970年代の思想的支柱の一人であった評論家で詩人の吉本隆明が、不安定労働者の間での蟹工船の成功を、「1945年の敗戦いらい貧困のあらたな段階に日本列島が突入する」兆候であると見ている。すなわち「日本人はもはや飢えることはないが、物質的および精神的貧困に直面した。そして若者のある部分は、蟹工船の男たちのなかに自分を見出し、自分たちも罠で捕らわれたと感じている」と。
記念エッセー・コンテストから
小林多喜二が学生時代をおくった小樽商科大学(北海道)が、2008年に彼の没後75年を記念してエッセー・コンテストを開催した。受賞者は、不安定労働市場で転職を繰り返していた25歳の若い女性であった。彼女は次のように書いている。「蟹工船の男たちは奴隷のように働いた。しかし彼らは、自分たちの闘いを共有した。今日私たちは一人ひとりばらばらに、見えない手によって『引きずり下ろされていく』。そして隣の人を闘う仲間としてではなく、ライバルとして見ている。」
自分たちの運命が歴史のなかに刻まれる
プロレタリア文学の豊かな潮流の中で大きな位置を占めるこの偉大な作品は、Jean-jacquesTschudin(日本における戦前の民衆文化についての、興味をそそる三部作の編集を指揮した)が、彼の研究を捧げた雑誌Les Semeurs(種まく人々)にとりあげられた。(College de France, 1979 )。蟹工船によって、今日の若い不安定労働者は、自分たちの運命が歴史のなかに刻まれることを発見した。
(以上、転載。jeanvaljeanさん、翻訳ご苦労様。原文はリンク先でどうぞ。小見出しは友さんです。)
この間、雇用破壊の中で労働者のたたかいが広がっている。
労働組合の新規結成が110、既存組合への加入が125、合計で5000人を超えている。
2009年4月26日(日)「しんぶん赤旗」より、
雇用破壊とのたたかいは 日本社会のあり方変える
第2回職場問題講座開く 志位委員長が報告
今日も、手抜きで紹介だけですが、あつかましくもポチッとよろしく。日本共産党の第二回「職場問題学習・交流講座」が二十五日、二日間の日程で党本部で始まりました。財界・大企業による雇用破壊とのたたかいや総選挙・都議選勝利めざす活動を交流、探求するのが目的です。三年ぶりに開かれた「講座」には、全国各地の職場支部や党機関などから百三十人が参加。冒頭、志位和夫委員長が報告を行い、これを受けて討論が行われました。
志位氏は、「講座」の目的は、雇用破壊とのたたかいの発展方向を明らかにすること、総選挙・都議選勝利めざして職場支部が総決起する意思統一を行うことにあるとのべ、(1)雇用問題をめぐる情勢の特徴と日本共産党の役割(2)雇用破壊とのたたかいの発展方向(3)総選挙・都議選勝利めざし職場支部の総決起をどう勝ち取るか―について報告しました。
情勢の特徴について、大企業による雇用破壊が「派遣切り」という形で猛威を振るうとともに、正規労働者にも及び、公務員や教職員にも非正規雇用が広がっていることをあげて、「大企業による雇用破壊は、労働者の命と生活を根底から脅かすとともに、日本経済、日本社会の前途をも危うくする一大社会問題になっている」とのべました。
同時に、大規模な雇用破壊は、職場支配を自ら掘り崩す深刻な矛盾を拡大しており、非正規雇用の違法・無法ぶりが明らかになるとともに、正規労働者に対する職場支配も成果主義賃金の本質があらわになるなかで深刻な矛盾と破たんに直面していると指摘しました。
その上で、「こうした雇用破壊に対して労働者が連帯して立ち上がりつつあることが、何よりも重要な情勢の進展だ」とのべ、労働組合の新規結成が110、既存組合への加入が125、合計で5000人を超えていることを紹介。「まじめに働き、不当な解雇にあっても泣き寝入りせず、勇気を持って立ち上がった仲間に心から敬意を表したい。最後までともに連帯してたたかう決意だ」とのべると拍手がおこりました。
世界初めての労働のルールとなった十九世紀のイギリス工場立法のたたかいなどを紹介しながら、「人民のたたかいがルールをつくる。不当な攻撃には社会的反撃で応える社会へと、社会のあり方を変え、ルールある経済社会への道を開こう」と呼びかけました。
(以上、部分引用)
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http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-588.html
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2009.04.27 | | Comments(6) | Trackback(2) | ・雇用と労働問題Ⅲ
