NO.117 自立支援法・応益負担は許さない!(1)
自立支援法の応益負担がなぜ許せないのか。
障害観に関わる問題であり、生命観に関わる問題です。
2回に分けて、一緒に考えてみたいと思います。
1) 応益負担とは何か。
施設を利用したりホームヘルプを利用したり・・・障害を持つ人たちへのサービスには当然費用がかかっています。陶友の場合、その運営費(人件費や管理費など)は最低でも年間2400万円ほど。これまでは国と福岡市から公費として全額支給されてきました。仲間一人当たり月額14万円程度。
施設やサービスを利用するとき、利用料をどうするかが「負担」問題。
これまでは「応能負担」でした。つまり支払い能力に応じて払うというもの。お金がなくても必要なサービスを受けることができ、生存権を保障しようとしてきました。従って一部の高額所得者以外はほとんどの人たちが無料で利用できました。
ところが、今度の障害自立支援法で「応益(定率)負担」が持ち込まれました。皆一律に経費の一割の利用料を払わなければならなくなりました。払えなければ利用をやめたり、控えなくてはなりません。(厚労省調査で既に1,600人以上の人が施設をやめています。)障害の重い人ほどたくさんの支援が必要でそれだけお金がかかる仕組みです。
わたしたちは、この仕組みだけはなんとしても元に戻すように求めています。
この法は、公費の支出を抑える目的だけが先行し、障害者の自立支援とは正反対のものといわなければなりません。(おおよそ今の政府の政策用語としての「自立支援」は、「国の厄介になるな」と表裏一体のものだが・・・)
政策問題の中心には、障害をどうとらえるか、障害観の問題が潜んでいます。(つづく)
2) 「障害」とは何か?
政策問題の中心には、障害をどうとらえるか、障害観の問題が潜んでいます。
いくつかの視点で考えてみたいと思います。
まず、障害を持つ人たちがサービスを受けるのが「利益を得ることだ」という考え方。厚労省の役人は、普通の市民が電気代、ガス代を払うようなものだと言ったそうですが!(さすがに後で訂正したそうだが)「益」のもともとは「溢れる」。余分で贅沢なものの意味です。食事や排泄を支えるホームヘルプ、移動のための車椅子、聴覚障害者の手話通訳・・・日々の生命活動の維持とぎりぎりの社会生活への参加を手に入れようとすることが「益」だと。
こういう考えは「障害は自己責任」論と連なっています。
障害は、本人や家族の責任だから、それにかかわる費用は自己責任で支払いなさいとする考えです。
障害の科学的な定義は、紙面の都合(能力の?)で他の機会に譲るとして,ここでは、「身体のある部分の機能・構造に問題が起こり(機能・構造障害)、普通にできることが出来なくなって(能力障害=活動制限)、それによって、身の回りのことや家事や就労や、通常の市民生活が出来なくなった(社会的不利=参加制約)状態、この3レベルからなる全体像」とでもしておきましょう。
平たく言えば、どこそこが悪いとか、何かにが出来ないとか言うことだけで見るのではなく、その人が社会的に生きて、暮らしている存在としての「生き辛さ」と言う視点が大切です。
社会福祉の主要な領域は、社会的不利をどう軽減し、生き辛さをいかにして克服するかにあるとも言えるでしょう。
3) 障害は自己責任か?
障害を持ってしまったというのは、個人の責任だといえるだろうか?
まず、誰も自分から好んで障害を持つにいたった人は誰一人としていません。自己選択のないところに、自己責任の論理は成り立たないでしょう。
一般に、障害には、「不可知性(前もって予測できない)」、「不可逆性(いったん障害を持つとほとんど元には戻らない)」、「普遍性(誰でも障害を持つ可能性がある)」という特徴があるといわれています。
だからこそ、障害によって被る「生きることの困難」への支援や、不利益を補うための支援は公的に保障さえるべきものとしてきたのです。たとえ一割の負担でも、自己責任にしてはならないと。(つづきは明日)


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テーマ:医療・介護・障害制度改正の余波 - ジャンル:福祉・ボランティア
2007.10.23 | | Comments(2) | Trackback(1) | ・障害者自立支援法Ⅰ
