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NO.1206 一人の人を良く見るということ・・・江川詔子さんのインタビューより

 大事な休みをボーっと過ごすと、「ああ、なんもせんで勿体なかった!」と落ち込みそうだ。
せめて一つぐらいは収穫をと思う貧乏性である。で、ボーっとした中の収穫は、・・・。

 フリージャーナリストの江川紹子 さんのサイトを紹介したい。
足利事件の菅谷利和さんが6月4日に釈放された後に、単独インタビューをされている。

        buru2204.jpg

 「足利事件から学ぶこと」という記事はインタビュー後のものだろう。

 では、菅家さんはなぜ自白したのか。そして、それを維持したのはどうしてだろうか。
 菅家さんに話からは、次の4要素が浮かび上がってくる。二つ(ママ)は捜査側の構造的な問題点、二つは菅家さんの側の事情だ。
 前者としては、
A)強引な取り調べ
B)被疑者を孤独を強いる
という点が挙げられる。
 後者としては
C)気の弱い性格で、対立的な人間関係でのコミュニケーションが極めて苦手
D)黙秘権など被疑者の権利についても、検察官や弁護人の存在など刑事手続きの仕組みについて全く知らなかった
という事情がある(以上、部分引用)

 こうした事情を丁寧に検証しながら、以下のように結論付ける記事だ。

 今回の事件は、これまで見ないで(あるいは見ないふりをしてきて)いた事柄を、きちんと直視し、そのうえで法や制度を変えなければなければならないのだと教えている。
 
 その一つとして、現在、捜査過程をもっと透明化するために、「可視化」の必要性が論議されている。
 取り調べをすべて可視化する必要性を訴える声に対して、捜査機関は反対を唱え、取り調べの最終段階、自白をまとめて喋る程度ならOKと言っているようだ。
 しかし、菅家さんのように、”任意”の段階で事故を守る砦を完全に破壊されてしまっている例があるわけで、冤罪を防ぐためには、取調室に入った時から、被疑者の様子も分かる形で映像に残しておく必要があるのではないか。

 上記の記事自体分かりやすくまとまったもので、本文に飛んで一読をおすすめしたいが、是非読んでいただきたいのは、上記記事のもとになったであろう次のインタビュー記事である。(結構な長さだが一気に読ませてくれる)

 インタビューは、 
 C)気の弱い性格で、対立的な人間関係でのコミュニケーションが極めて苦手
 D)黙秘権など被疑者の権利についても、検察官や弁護人の存在など刑事手続きの仕組みについて全く知らなかった
という菅谷さんの事情を丁寧に描き出し、そのことから、  
 A)強引な取り調べ
 B)被疑者を孤独を強いる
という捜査側の問題点をあぶりだし、問題を投げかけている。
その一部を引用し紹介させていただきたい。

「足利事件・菅家さんインビュー」

(2009年6月7日 横浜市の佐藤弁護士の自宅で)とある。

・・・(前略)・・・
――でも嫌なこと、いっぱいありましたでしょ?
「嫌なことはありますね」
――例えば?
「自分がね、入所してすぐ、(同房の人に)一週間は菅家さんはお客なんだからと言われました。それで、一週間のあいだに、見ててもらって、全部覚えろというんですよ。布団のあげかた、毛布の揃え方、トイレ掃除、窓の拭き方、全部覚えろっていうんですよ。ところが、誰も一週間じゃ覚えることはできなかったんです。自分だけじゃなく。新しい人が来るとみんなその人が命じるんですよ。絶対一週間以内で全部覚えろと。誰も覚える人いないんですよ。全然無理ですよ」
――できなかったら、怒鳴られたりするんですか?
「怒鳴られましたよ」
――どんなふうに?
「殴られたり、肋骨を2本折られて。洗面器の中に水をいっぱい入れられて、顔を頭から押さえつけられて、もがきましたよ、私は」
――どういう人なんですか、そんな事をするのは?
「その人は昔、暴走族だったんですよ。ものすごい乱暴者で。自分だけじゃなくて、他の人にもやったらしいんですよ」
――そういう人と同じ房だった
「そうです、そうです」
――それに対して、抗議したりしなかったんですか?
「できないですよ、自分は。入ったばかりで…。その人は17年いるんですよ。無期懲役で。だから、あれから8年経ちましたから、20何年いるんです」
――でも、そういう時のために刑務所の職員がいるじゃないですか?
「それを(刑務官に)言ったら大変ですよ。殺されちゃいますよ。自分はそんな目にあいましたから。12月の寒い時ですよ。トイレの中へ、裸で、すっぽんぽんですよ。閉じこめられたんですよ、一晩中ですよ。『てめえ、中入ってな、こごんでろ!』こういう風に、(便器を)またいでろって言われたんですよ。
 しまいには、『しょんべん飲め』とか。溜まってるんですよ。タワシの中にこういう、タワシを置く入れ物がありますよね。溜まっちゃうんですよ、どうしても。それを飲めっていうんですよ。それからあと、もう一つ。うんこですよ。食えっていうんですよ。そういうんですよ。
――そんなひどい事されて、房を変えてくれって言えなかったの?
「その時は、入ったばかりで…。「言ったら殺す」っていわれるんですよ(だから言えなかった)」
――いじめられた時に、抗議とかしない方ですか?
「できなかったですよ。もう、性格ですよね。自分は気が弱くて、言い返す、それは出来なかったですよ」

――事件の前にお仕事されてましたけど、社会でも嫌なこととかあっただろうけど、そういう時は抗議したりケンカしたりはしなかった?
「そういうことは、ありませんでしたね。おとなしい性格で、人に対して攻撃、できない質でした」
――ましてや、刑事さんに言われたときに、言い返すっていうのは?
「出来なかったですね」
――思いもよらなかった?
「思いも寄らなかったです」
――事件が起きる1990年まで普通に生活してて、それまで、警察ってどんな所だと思ってました?
「やはり警察というところは、市民を守る。そういう風に思ってました。ところが、実際に自分がね、無実の罪でね、捕まって、取り調べをされて、髪の毛をひっぱったり、蹴飛ばされたりしてね。取り調べのときね、私はね、『やってない』『やってない』と言ってたんですよ。ところがね、頑として聞き入れてくれなくて。(語気を強めて)『お前がやったんだ!』と、こうですよ。デカい声で。『証拠があるんだ』と。でもその時、言い返すことが、自分はできなかったんですよ」
――その時はどんな気持ちでしたか?
「もう、ムヤムヤもやもやしてて…。何も考えてなかったですね」
――この時に、「やりました」と言ったら、自分は刑務所へいっちゃうとか、死刑になっちゃうとか、そういうことは考えていました?
「考えてません。やはり、自分は事件のことは、全く身に覚えがないので、死刑になるとか、刑務所に送られるとか、全然考えてません。はい」
――例えば自白したら、逮捕されて裁判になるとは考えてました?
「それは考えてましたけど、でも、死刑とかは全く考えてなかった」
・・・(後略)・・・


 冤罪問題や犯罪捜査の問題にとどまらず、
私は知的障害者と関わり、日頃から障害を持つ「仲間たちが主人公」の作業所運営を語りながら、
マンネリ化し慣れっこになり、こういうふうに本当に一人ひとりの仲間たちをどんな場面でも具体的に良く見て、向き合うことが疎かになっていたのではないかと、
今一度点検が必要だと反省させられた。

 この社会に生まれ生きて、
どんな一人ひとりも十派一からげの人間たちではなく、その人自身である一人ひとりなのだ。
そう、同じように見える景色さえ、一人ひとりの目にはその人らしい写り方をするであろうし、同じご飯でもその人らしい味わい方があるだろう。

 社会の制度や仕組みも、そういう一人ひとりが守られるものでなければならないと・・・。
そしてこの場合は、「取調べの全面可視化」こそがその最低の基本条件になるのではないかと・・・。

 私も足利事件については何度か言及し、「取調べの可視化」を導入するように発言をしてきたが、江川さんのインタビューの詳細は、それ以上のことを改めて考えさせてくれるものだった。

・・・ということで、今から晩飯作りでもして、誰かの「役に立った」一日の〆にしないと・・・(苦笑)
ではでは。


 
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2009.06.15 | | Comments(4) | Trackback(1) | ・社会評論Ⅱ

コメント

冤罪と貧乏性

>せめて一つぐらいは収穫をと思う貧乏性である。

この発想が貧乏性ですね、たしかに。爆

一日何もせずに過ごし、「ああ、私は一日をぜいたくに使った」と思う、これです。何もしないようにがんばってください。(←無責任)

...もちろん、私も人のことは言えません。一日一つも記事を書かずに過ごし、「ああ、私は一つも記事を書かず、一日をぜいたくに使った」と思えるようにがんばります。(違

えーと、何の話でしたっけ。そうそう、冤罪の話でしたね。とりあえずトラックバックを送ります。笑

2009-06-15 月 21:54:15 | URL | 村野瀬玲奈 #6fyJxoAE [ 編集]

村野瀬玲奈 さんへ。

こんばんわ。

> 一日何もせずに過ごし、「ああ、私は一日をぜいたくに使った」と思う、これです。何もしないようにがんばってください。(←無責任)

そうそう、いつもうちの嫁さんに言われてますわ。
貧乏性を返上したいものですううう。

2009-06-15 月 23:31:57 | URL | 友さん #- [ 編集]

ちょっと自慢

我が家には、江川さんのサインがあります。それと、一緒に写った写真も。
10年位前、次男の問題行動での悩みを脱したころ、NHKで「どこがおかしい日本の子育て」をテーマに、長時間の生番組が放映されました。友人に頼まれて簡単に引き受けましたが、会場が東京のNHKホール。長女がまだ小さく子連れでの参加でした。福岡から4組。録画中は、アルバイトのお姉さんが子どもたちを見てくれて。
たくさんの知識人の中に、江川さんもおられ、子どもの味方の発言をしてくださいました。嬉しくなり、休憩中にあつかましく控室に伺い、一緒に写真をお願いしました。本当に素敵な方です。奢らず高ぶらず、よく話を聞いて下さいました。

ですから、菅家さんも、悔しかった胸の内を吐露されたのだと思います。

2009-06-16 火 21:01:43 | URL | 嶽村 #- [ 編集]

嶽村さんへ。

それはそれは。
インタビュー記事を見て、江川さんは、なかなか丁寧で優しい方とみました。
地道にこつこつと物事に向き合ういいジャーナリストと評価しています。
今、「聞く力」が求められているといわれていますね・・・。
心しなくちゃ・・・。

2009-06-16 火 23:50:10 | URL | 友さん #- [ 編集]

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