NO.1242 山口二郎と、鳩山由紀夫の『新憲法試案』
民主党・鳩山由紀夫代表は、自身の個人献金故人献金疑惑について、「秘書が、個人献金が少ないから心配して・・・」と言い訳していたが、今度は「秘書が、『鳩山は金持ちだから』と、企業献金が集まらないんじゃないかと心配して・・・」と言い訳を変えたそうだ。
こんな言い訳が通用するとでも思っているのかしら。民主党自身も疑惑を解明する気はさらさら無い。
その件はまた書くとして、今日は、政治と金の話ではなく、鳩山由紀夫の改憲論者としての素顔について。氏が新憲法制定議員同盟の顧問を務める超タカ派であることは知る人ぞ知る事実なのだが。
山口二郎と言う政治学者がいる。
「僕は小沢さんに総理になってほしいと思ってこの3、4年一生懸命応援してきた」「民主党はこの選挙(総選挙)に絶対勝たなければいけない」と民主党応援団の立場を公然と表明する学者である。
氏はこの間、「政権交代」のためには、「民主党に票を集約せよ」、「小異を捨て大同につけ」などと煽ってきたのだが、最近どういうわけか、「何のための政権交代か」と論調を変え、「民主党政権が日本をどう造りかえるのか、具体的な言葉は伝わってこない。『友愛』では、世の中がどうなるのか、分からない。」などと言い出した。
私は、いちいち彼の説を論評する時間も能力も持ち合わせてはいないが、政権交代の意味を問う彼の発言の中で、見過ごせないことがあるので一つだけ触れておきたい。
鳩山由起夫は反動的な改憲論者ではない?
山口二郎氏は、「民主党に改憲派の政治家が大勢いるという不信もある。私に言わせれば、現状では決して改憲派は大勢ではないし、改憲論者を自称する鳩山由起夫代表も、反動的な改憲構想を持っているわけではない。」と言うのだ。
いくら民主党びいきとは言え、これはあんまりにもあんまりだろう。政治学者としての見識が問われると言うものだ。
そこで、民主・鳩山代表の著書『新憲法試案』(2005年)の中身をちょっとだけ見てみることにする。
「改憲」よりも「改憲」的な
先ず、民主党がようやく「改憲」の立場に立つようになったとして、民主党の「創憲」論は、「『改憲』よりも『改憲』的だ」と自慢してみせる。
そして「友愛」のために必要なのが憲法改定なのだと言う。それまでの民主党は「護憲」派にも気を遣いながら、大いに憲法を議論しようという意味で「論憲」との立場をとっていたが、それでは何を言っているのかわからない。…「創憲」は新しい憲法を創(つく)ることを意味するから、実は「改憲」よりも「改憲」的なのである。その立場に漸(ようや)く民主党が立つことができるようになった…。
「自立と共生を両輪とした民主主義政治の確立を目指した友愛革命」…そのような理念の下で、国家を構想していくと、どうしても憲法改正が必要になる…。
鳩山氏の改憲論には大きく2つの特徴があると言っていいだろう。
第一の特徴は、9条改憲、自衛軍の保持と集団的自衛権の容認。
第二は、国民主権の否定、天皇の元首化、である。
第1の特長について、次のような文章が踊る。
・・・現行憲法の最も欺瞞的な部分をなくし、誰が読んでも同じ理解ができるものにすることが重要なのだ。
「第五〇条(自衛軍) 日本国は、自らの独立と安全を確保するため、自衛軍を保持する」
・・・今の法制局解釈のように、いたずらに集団的自衛権のハードルを高く設定していることが、われわれの外交政策における選択肢を狭め、国益を損なうことになっていはしないか。この憲法試案は、このような観点から、集団的自衛権の制限的な行使を容認するという立場に立つ。
・・・国連決議による多国籍軍や平和執行部隊、あるいは将来編成されるかもしれない国連常設軍への参加…私の憲法試案では、こうした国連による国際警察軍的な活動への参加を明確に容認している。
憲法の平和原則の要をなす、9条2項「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」の否定である。
同項を「最も欺瞞(ぎまん)的」と攻撃し、「自衛軍保持」を明記しているのである。。
さらに、海外での武力行使を可能にする集団的自衛権の行使を容認すると明記。自民党政府でさえ、憲法上禁じられているとしてきた原則の大転換に踏み込んでいる。
また、武力行使をともなう国連の軍事活動への参加を明確にした。
政府の「海賊対処」派兵新法案に先立って“海賊取り締まり”も可能だとしていたのである。実際、国益のためのソマリア沖への自衛隊派兵は、民主党の長島昭久議員が麻生総理に進言したものであり、鳩山改憲はすでに動き出していると言えるのではないだろうか。
第2の特徴、天皇元首化について。
・・・(中東の)現状を見ただけでも、とても「平和を愛する諸国民」とは言い難い状況であるし、まして、その公正さを信じて日本の生存を保持しようなどと、情けないことを言うべきでない。
・・・頭を撫(な)でられ、ほめられて喜ぶ日本を目指すのではなく、国としての尊厳を確立することによって、国際社会をリードする気概を持たねばならない。
憲法前文への非難である。
安倍晋三元首相は、憲法前文に対し、「敗戦国としての詫(わ)び証文」「妙にへりくだった、いじましい文言」などと罵倒したが、鳩山氏もまったく同じ所を非難している。
こうして鳩山「試案」は、憲法前文を非難し、天皇主権の明治憲法を引き継ぐとして、天皇の「元首」化までも明記している。
明治憲法を標榜し、国民主権の民主主義を語るこの欺瞞。・・・「現行憲法の前文にとらわれることなく、新憲法の歴史的位置づけと、新たな国家目標について記すこととした」
・・・「この憲法は、明治二十二年憲法によって創始された議会主義と政党政治の伝統を受け継ぎ…」
「第一条2 日本国は、国民統合の象徴である天皇を元首とする…」
以上、ちょっと見ただけでも、山口二郎センセの「改憲論者を自称する鳩山由起夫代表も、反動的な改憲構想を持っているわけではない。」と言う評価はトンデモであると言わねばならない。
今や、民主党は改憲派がその中枢を占めているのである。
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2009.07.05 | | Comments(6) | Trackback(3) | ・2009総選挙Ⅰ
