NO.1247 スタンピード現象=「小泉劇場」の再来を許すな。
スタンピード現象という言葉があるそうだ。
「スタンピード(現象)」=「Stampede」は、直訳としては動物や家畜などの集団が何かをきっかけに、一頭が走りだすとどっと群れを成して同じ方向に走り出すこと。
ジャーナリズムの世界では、 「視聴者が見たいものにメディアが引きずられ、報道が同一方向へ雪崩のように走り出す現象。」とか、相場の世界では、「参加者が群集心理として一つの方向に一気に流れていく現象を指す」というように使われるらしい。
政治・選挙の世界でも、同様に使えるだろう。
メディアが「政権選択選挙だ」・・・と煽れば、有権者の投票行動がそういう方向に流れる。
「小泉劇場」こそスタンピード現象
有権者の見識が高く、自主的判断ができればそういう現象に歯止めをかけられるであろうが、残念ながら現実はそうもいかない。現に、2005年の「小泉劇場」「郵政選挙」がそうであった。
そして、野中広務氏によると、「とくに小泉内閣の5年は、短い言葉で国民を狂わせて、アメリカ型の市場万能主義をそのまま持ち込み、アメリカの権益がかかわる戦場に自衛隊を派遣して日本社会の屋台骨を粉々にしてしまいました」という状況を作り出してしまったのである。
反省はどこに行ったのか
メディアはあの時反省を口にしていたはずだが、この数ヶ月は、解散総選挙の日程ばかりに関心を奪われた報道に明け暮れ、現在の都議選報道は、総選挙の「前ショー戦」であり、「与野党逆転」が最大の関心ごとであるかのごとき報道だ。
都議選の結果が国政選挙に及ぼす影響は確かに「直結」するであろうが、都議選は都議選である。
「与野党逆転」について言えば、民主党が石原知事の愚案99.3%に賛成し、立派な与党であるのは動かせない事実だ。そうした事実をも覆い隠し、「与野党逆転なるか」という報道は、もってのほかではないか。
オリンピック誘致のために、1キロ1億円のトンネルを掘ったり、築地市場を汚染地区に移転したり・・・こうした無駄な公共事業の影で、老人福祉予算(自治体予算に占める割合)は全国最下位に転落したり、少人数学級は拒んだり、都立病院を半分にしたり・・・、都政をどうするかという都民生活と福祉の現実的な課題は山積しているのである。
有権者は動物じゃない。
「いつか来た道」というより、つい数年前の「小泉劇場」の苦い経験を繰り返してはならない。
メディアのゆがんだ報道に「スタンピード」してはならないのである。
そしてメディアは、「正確」で「公正」な報道にたち、民主主義社会を支えるという責任を果たさなければならないのである。
2009年7月5日(日)「しんぶん赤旗」より。
マスメディア時評
選択ゆがめる誤報は許されない
東京都議会議員の選挙が告示されました。都民の暮らしがかかった大事な選挙です。
ところが、マスメディアの報道や論評には、「政権直結」(「朝日」)、「政権選択占う」(「東京」)といった、まるで国政選挙のように扱う報道が目立ちます。都議選がどんなに大きな影響を持っていても、都政抜きでもっぱら国政との関連から論じるのでは、都民の暮らしと福祉に直接かかわる都議選の意義を台無しにするものです。
民主=野党は事実に反する
なかでも見過ごせないのは、国政での「政権交代」に絡めて、都議会で明白な与党である民主党を「野党」として扱う報道が繰り返されていることです。これは明らかな誤報です。
この4年間、知事が提案した1149件の案件に対し、自民党、公明党は100%、民主党も99・3%に賛成しています。石原知事に「同憂の士」と認められる都議会民主党の元幹部もいます。民主党がにわかに「野党ポーズ」を示しているのは、政党として不誠実このうえないものです。
新聞やテレビなどマスメディアが、こうした事実を無視し、自民と民主のどちらが第1党になるかなどと報道するのは、都民の選択を妨げるものでしかありません。とりわけ現在の都政に批判的な都民にとって、どの党が与党か野党かは重大問題です。都議会で自公民「オール与党」に対決している野党は、日本共産党だけです。マスメディアは直ちに誤った報道を正すべきです。
マスメディアの報道や論評の中でも、新聞社を代表する「社論」といわれる社説で、こうした誤報が堂々とまかり通っているのは重大です。
「社論」の名がこれでは泣く
「毎日」は4日付の「都議選スタート 問われるのは『政権』だ」という社説で「都議会は与野党の対決図式が国政とほぼ同じだ」と書き、自公が過半数を維持できるか、民主が第1党を奪取するのかと論じています。「日経」も3日付で、「都議会は国政と同様に自民と公明が与党」と書いています。「東京」も同日付で、「政権選択占う首都決戦」と書きました。
誤報を前提にした議論は空論というほかなく、これでは「社論」の名が泣くといわなければなりません。
「正確」で「公正」な報道を求めた新聞倫理綱領を引くまでもなく、有権者に事実を正しく伝え、国民が主権者として権利を正しく行使できるようにすることは、民主主義社会を支えるマスメディアとしての責任のはずです。とりわけ社説には重い責任があります。 (宮坂一男)
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2009.07.08 | | Comments(2) | Trackback(2) | ・2009総選挙Ⅰ
