NO.1376 「福祉汚職」の土壌は、日本の福祉の「後進性」にある
どこの業界でもあることだ、と言えばそれまでだが・・・。
障害福祉の「業界」でも、未だにこういう「汚職」が起こっている。
歴代の自民党政治の、福祉行政の貧しさの現われとして、見ておく必要があるだろう。
いよいよ、近所にも本格的な秋到来です。
あの、障害向けの低料第三種郵便制度の悪用問題も、官僚が障害者自立支援法成立への根回しとして、議員の口利きを利用してのことであった。
そして、この事件。
「政治家4人に計1千万円裏献金」全精社協の元職員証言 自民元幹事長も (産経新聞 2009.9.23)
補助金の不正流用疑惑が浮上している社会福祉法人「全国精神障害者社会復帰施設協会」(全精社協、東京)の会長らが平成19年以降、複数回にわたり、厚生労働副大臣を務めたことがある元衆院議員ら自民党の国会議員4人に計約1千万円の裏献金をした可能性があることが22日、分かった。全精社協の幹部が産経新聞の取材に証言した。裏献金の原資は国の補助金から捻出した裏金とみられる。
この事件の構図は、何も特殊なことではない。
障害福祉に携わる多くの経営者は、貧しい公費の中で日々の経営に苦労し、福祉労働者は低賃金の中で、目の前の障害者やお年寄りのために頑張っている。
しかし、心ないこういう輩が国民の福祉に対する信頼を掘り崩していくのだ。
なぜ、福祉の現場でこういう事件が起こるのか。そこには日本の福祉の閉鎖性と後進性がある。
ある障害者施設理事長の自殺事件
1980年代初めのことだった。
私が、福岡県で福祉労働者の労働組合(後の全国福祉保育労働組合)つくりにかかわるきっかけにもなった事件を思い出す。
ある郡部の障害者施設の理事長が自殺する事件が起こった。
かいつまんでその全容を言うなら、施設に支弁された公費を不正に流用し、地元の自民党政治家に献金していたというもの。当事者の自殺により口が封じられ全容解明には至らないまま幕が引かれたが・・・。
調査では状況証拠は明らかだった。
例えば、給食材料の業者に通常より高い金額で食材を発注する。差額を、別の口座に「寄付」させ、それを政治献金に回す。100人の入所者がいれば、1日300食、年間では相当な金額だ。
選挙前になると、「識字教育」として、知的障害者に候補者の名前を書く練習をする。当然保護者・家族にも支持を求める。特別に自覚的な親御さんでない限りは、そのおかしさも批判はしない。子供が「人質」にとられ、「世話になっている」のだ。
無権利の利用者と職員
当然、職員は何もいえない。家父長的な権力で経営を支配している。奥さんが施設長、事務長は息子とかは当たり前だった。施設の運営に不満でも言えば、即首である。
当時、建設不況になると、「これだけの土地がある。老人施設を経営したらどれだけ儲かるか。」という、建設・土建関係者からの問い合わせがマジであったと、県の担当課が言っていたが時代だ。
福祉は公的な事業でありながら、社会福祉法人を作るためには土地や自己資金がたくさん要る。したがって、社会福祉事業を起こすことは「投資」なのだ。
そして、国の福祉予算・施策が貧しいから、補助金事業などの「奪い合い」が始まる。施しとしての「福祉」を分けてもらわなけらばならない。そこで、政治家の力に頼るわけだ。政治家に口利きをしてもらうためには、政治献金と票を貢ぐしかない・・・。
そこで、補助金などの公金をあの手この手で流用するのである。
全精社協の手口も全く同じである。
経営者のモラルは当然問われなければならない。同時に、甘い汁を吸って政治家も。
福祉予算の増額を
しかし、その摘発だけでは、根深い問題の温床は残ったままだろう。モラルだけで解決するのか。
福祉がその名に相応しく、それを必要とする人々の願いに応えられる必要な予算を保障し、現場で働く担い手・福祉労働者が責任を持ち安心してその仕事に打ち込める条件を作ることこそが、いま切実の求められている。
精神障害者や知的障害者の場合、特に本人参加が困難な面を持っている。そこに、今回のような事件が起こりやすいという要素もあるのではないだろうかと思う。
精神障害者は長いこと医療の対象として、「隔離」と「社会的入院」(社会参加の場がないから、入院させざるを得ない)政策の対象であった。そして、その実態は今も変わらない。
そういう意味では、当事者参加をどう保障していくのかも重要な課題だ。
私は当時、福祉労働者の責任を、自らにも含めて問うた。
自らモノも言えず、経営者の不正を見ぬフリをして、自らの権利にも無自覚で・・・、それで物言えない障害者の権利をどうやって守ることができるのか!?
・・・それから、福祉分野の労働組合作りに奔走したのが若い頃だった。
権利としての福祉の確立を
福祉は、決して「お恵み」でも「施し」でもない。
人間として、その尊厳に相応しく生きる権利だ。
その権利保障に相応しい、国や自治体の公的な施策こそが求められているのである。
そのために、経営者と労働者が、固有の立場を尊重しながら、共に手を携えて利用者と国民の信頼に足りうる仕事をしなければならないのである。
国民の信頼を掘り崩すような不正などもってのほかだ!
福祉はすこぶる政治的な課題だが、私は、関係者の政治的関心が余りにも薄いという感想を持っている。このブログで、政治を書くようになった動機もそこにあるのだが・・・。
福祉と、そこにかかわる私たちは、「憲法的存在」であり、「政治的存在」でありたい。
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2009.09.23 | | Comments(0) | Trackback(6) | ・福祉・社会保障全般Ⅰ
