NO.1446 トラウマ。
タッチンには悪いと思うんだけどよ、・・・とにかくあいつが怖いと言うかいやなんだ。
俺は、陶友に来て10ヶ月が過ぎた。
兄ちゃんが先に来ていたので、俺も来ることになったんだ。
うちは兄妹5人。
どういう訳か、みんな、自閉症だの高次機能障害だの発達障害だの、わけの分からない名前がついている。
この10ヶ月、みんな俺の声も聞いたことが無いだろう、あの若い男職員以外は、多分ほとんど。
ただし、おれが「ガー!」とか「ウー!」と言う声は、何度か聞いただろうな。
みんなびっくりしてるもん。
タッチンが側に来て、いやな時にはそう言って、ドタバタするんだ。
はじめのうちは作業所の建物にも入ることが出来なかった。
その原因は、多分タッチンだけではなかったかもしれない。
毎日毎日外から作業所を眺めていただけだが、もう忘れたが、いつの間にか入れるようになった。
ここの人たちは悪い人じゃなさそうな気がしたからかもしれない。
紙漉き班で、牛乳パックのパルプはがしが俺の日課だ。
タッチンが視野に入らないように、上着をスポンと頭にかぶり・・・だ。
この俺の奇妙な行動を、職員達は、
「なんでやろう?」「何が原因なんや?」ち、議論したことがあったらしい。
「タッチンが、ユーがポテトチップを持っているのにちょっかい出したからかな?」と、若い担当の職員が言いよった。
鬼瓦所長は、
「そんぐらいでそげな事はなかろうもん。もしかしたら、タッチンが親父さんに似てるんじゃないか?母親に聞いてみてくれ。」と言うとった。
その時には、なんかあいまいになって真偽のほどは分からなかったようだ。
俺は、親父にさんざん叩かれて、今で言う「トラウマ」になってしまったのだ。
だから、大体、男は怖くて好かん!
そんなこんなで今は、離婚して母ちゃんと兄妹の6人家族やけど・・・。
このことは面接の時に話しとったけん、鬼瓦が現場の勘(?)て奴で「親父が原因」と思ったらしい。
この間の、一泊旅行の時は班行動やった。
ウエ!やばい!タッチンと一緒か!
でも旅行には行ってみたいな。
若い職員達は、俺たちを別々にしようと心配してくれた。
ところがだ、あの鬼瓦の奴!
「初めから別々に離さんがよか」と。
「いつまでもこんな関係でいい分けじゃなかろうもん。とにかく行きの車だけは一緒に乗せて様子を見ろ。視野に入らないような席取りをして・・・。どうしてもダメなら差し替えればいいんだ。」とか、えらそうに荷物を積み替えるかのように指示しやがった。
鬼瓦の奴は、「物事を固定的に見るな。全ては変化し発展するんだ。現状を変革する、変化をどう作り出すかが実践だ。」などと日ごろからえらそうに言うんだ。・・・人の気持ちも知らないで!
ご丁寧に、「旅行にいきたいという気持ちと、一緒はいやだなと言う気持ちがぶつかるんだ。そういう過程を経て、要求が今ある困難を乗り越えるエネルギーになるんだ。その矛盾を、どうとらえ止揚するかなんだ、教育とか実践は・・・」と、えらそうな理屈までのたまいやがった。
鬼瓦が所長の権限を傘に屁理屈を言うと、若い職員達は従うしかない。
かくして俺は地獄の2時間を味わうことになった。
8人乗りのレンタカーの、一番後ろ奥にタッチンは乗り、順々に詰めて、俺は若い職員が運転する助手席。
一番遠くて、視野に入らない距離なんだ。
イヤでイヤで、乗りたくなくて、しばらく抵抗したが、
やっぱり旅行は行きたいと思ったので、しぶしぶ、自分から乗り込んだ。
職員も、鬼瓦の奴も「先ずはしてやったり」と言う顔で出発したのだった。
ああ、車の中のことはあまり覚えてないよ・・・、と言っておこう。
果たして現地に到着。
流石に若い職員も鬼瓦も、俺の忍耐を認めてくれて、現地からは無罪放免、いや、班を変えてもらった。俺にとっては一歩前進だったのかもしれないな。
かくして2日目は別行動だから、そこそこにリラックスして楽しめた旅行だった。
鬼瓦の奴、次は何を企んで拷問をしかけてくるかわからない。
・・・でも、まあ、人生で初めて仕事をしにくる場所が出来て、給食もうまいし、第一家にいないだけで母ちゃんも少しは楽だろうしな。
明日からも、パックはがしに頑張るとするか。
憎たらしいけど、鬼瓦の読みは、当たっていたよ。
当時はあいまいなままだったが、陶友祭の時に母ちゃんがタッチンを見て、「確かに父親に、どこか似ている」と、事務員さんにチクッタらしい。
それにしても、なんでこんなに心の奥深くまで、脳の髄まで怖さが染み付いてしまったんだ!
「トラウマ」と言うらしいが。
俺は巳年生まれで、トラ(寅)もウマ(午)も関係ねえのによ。
タッチン、すまねえな。悪気は無いんだ、許してくれ。
(ダルビッシュじゃない ユー)
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2009.11.12 | | Comments(1) | Trackback(1) | ・仲間とともにⅣ
