NO.1552 足利事件再審判決 菅谷さんは18年分の笑顔を取り戻せるのだろうか・・・?
「菅家さんの真実の声に十分に耳を傾けられず、17年半もの間、自由を奪う結果になったことを裁判官として申し訳なく思う。」
足利事件再審判決。
佐藤裁判長は、異例の謝罪をし、3人の裁判官は法壇で立ち上がり、深々と頭を下げた。
「感無量!」おめでとう ご苦労様でした。
「真っ白な無罪判決。感無量です」
菅家利和さんの晴れやかな顔が涙ぐんでいた。
「日本一の支援者と弁護団がいたから、ずっと夢や希望を持っていた。」
「これからは、ほかの冤罪被害者の支援や冤罪が二度と起きないように活動したい」とも語った。
メディアが一斉に報じている。
教訓をどう生かすかである。
以下は、菅家さん無罪 足利の教訓生かすには(3月27日)(北海道新聞社説)より転載。菅家さん無罪―誤判防ぐ仕組み作りを 朝日新聞 社説 3/27
「足利」 再審無罪 菅家さんの無念を冤罪防止に 読売新聞 社説 3/27
足利事件無罪 次は第三者で検証を 毎日新聞 社説 3/27
菅家さん無罪 可視化の願い実らせて 東京新聞 社説 3/27
[足利事件無罪] 司法への信頼取り戻せ 南日本新聞 社説 3/27
菅家さん再審無罪 冤罪なくすための出発点に 熊本日日新聞 社説 3/27
菅家さん無罪 再び冤罪起こさぬために 西日本新聞 社説 3/27
【足利事件】 取り調べの可視化を急げ 高知新聞 社説 3/27
菅家さん無罪 痛恨のあやまちに学ばねば 愛媛新聞 社説 3/27
菅家さん再審無罪 教訓を無駄にするな 徳島新聞 社説 3/27
菅家さん無罪 裁判長の謝罪を出発点に 信濃毎日 社説 3/27
足利事件再審 冤罪根絶へ教訓とせねば 新潟日報 社説 3/27
菅家さん無罪 この教訓を生かす仕組みを 宮崎日日新聞 社説 3/27
主張 足利事件再審判決 自白強要と冤罪の根を絶て 「しんぶん赤旗」3/27
DNA鑑定の証拠能力は認められない。自白内容も信用性がなく虚偽であり、菅家利和さんが犯人でないことは、誰の目にも明らかになった-。
20年前に栃木県足利市で女児が殺害された足利事件。宇都宮地裁が再審で下した無罪判決は明快だった。
佐藤正信裁判長は、真実の声に十分に耳を傾けられず、裁判官として誠に申し訳なく思うと謝罪した。
「真っ白な無罪判決。感無量です」。涙ぐみながらも、菅家さんは晴れ晴れとした表情だった。
地裁は取り調べ録音テープの再生や、取り調べに当たった検事の証人尋問も行った。再審としては異例の展開だったが、それでこそ、普通の市民感覚に沿った訴訟指揮ではないか。裁判長の姿勢を評価したい。
それにしても、だ。虚偽の自白を強要され、17年半も獄につながれた菅家さんの人生や家族の痛みは取り戻すことも癒やすこともできない。
菅家さんが話すように、冤罪(えんざい)はもう二度と起こしてはなるまい。司法当局や法曹界、メディアは足利事件をどう教訓として生かしていくのか。それぞれが重い課題として受け止めていかなければならない。
有罪の根拠としたDNA鑑定の結果と、自白の証拠能力について裁判所がどこまで踏み込んで判断するのか。それが再審のポイントだった。
判決は、当時の警察庁科学警察研究所の鑑定を科学的に信頼できないとし、実施方法も疑問だとした。
となれば、同じようなDNA鑑定が証拠採用されて有罪となり、死刑が執行された飯塚事件など他の事件の再検証も必要になってくる。
また、検事の取り調べについて判決は弁護人への事前連絡や黙秘権の告知をせず、違法と断定した。
ただ、なぜ虚偽の自白をしたのかについては、菅家さんの性格以外に触れていない。逮捕された経緯や、密室での厳しい取り調べが冤罪を引き起こしたという点に踏み込まなかったのは残念だ。
無罪判決だから良かったで済ませてはなるまい。誤判の原因を解明する仕組みもこの際、考えるべきだ。
録音録画による取り調べの全面可視化も欠かせない。にもかかわらず野党時代から熱心だった民主党政権の変わり様は一体どうしたことか。
それどころか、おとり捜査など危うい捜査手法と絡める動きさえ出ている。可視化導入の法改正案提出は再来年以降との見方もある。理解できない。実現を急いでほしい。
「疑わしきは被告人の利益に」が刑事裁判の鉄則だ。足利事件は、一般市民が参加する裁判員裁判にも大きな課題を突きつけた。裁判員の責任と負担はますます重くなる。
しかし、菅谷さんは18年分の笑みを取り戻したであろうか?
「私が拘置所にいるなんて、私自身も信じられません。・・・ここを出れば、みんなと東京見物やディズニーランド・・・にも行けると思います。・・・本当に待っていてください。・・・どうか私を信じてください。」
・・・かつて家族にあてた手紙に書いていたという。
そして冤罪が晴れて今、「私と同じように苦しむ人が二度とでて欲しくない」と。
この菅谷さんの訴えに正面から向き合うことこそが求められていると思う。
冤罪と誤審を生んだものは
日本の司法の深刻な実情を浮かび上がらせた今回の判決。
何が冤罪と誤審を生んだのか徹底的な検証が求められている。
誤審の大きな原因の第一は、「科学捜査」への妄信。ずさんなDNA鑑定の結果だった。
妄信は、警察、検察、裁判所のみならず、メヂィアの報道を通じて、国民の中に「菅谷が犯人だ」という見方を広げていった。
政治の責任
いまひとつとりわけ重要なのは、密室の取調べによる「自白」の強要。
警察、検察の自白強要は根本から改めなければならない。代用監獄の廃止、取調べの全面可視化が急務である。
菅家さんを無実の罪で長期間獄中に閉じ込めた「足利事件」だけでなく、冤罪事件が後を絶たないのは、警察や検察の取り調べが密室でおこなわれ、自白の強要がまかり通っているからだ。
無実のものが犯人にされ、真犯人が野放しにされる冤罪事件が繰り返されてはならない。録音・録画で取り調べを全面可視化するなど、密室での自白強要をやめさせることは不可欠であり、政府はその実現を急ぐべきであろう。
「・・・にもかかわらず野党時代から熱心だった民主党政権の変わり様は一体どうしたことか。」(上記社説より)
一方、毎日新聞は、クローズアップ2010:足利事件判決、菅家さん無罪 誤判の検証 裁判所、動き鈍くで、以下のように報じている、
足利事件の再審判決で宇都宮地裁の佐藤正信裁判長は26日、菅家利和さん(63)に無罪を言い渡したうえで謝罪した。ただし、再審公判では一定の「誤判」解明がされたものの、裁判所全体として足利事件を検証し今後の教訓にしようとの動きはなく、誤判原因を調査する第三者機関の設置を求める声も上がる。一方、判決は捜査段階のDNA鑑定の証拠能力を否定し、検事の取り調べを違法と指摘。捜査機関も改めて課題を突きつけられた。【銭場裕司、石川淳一、千代崎聖史、北村和巳】
◇「裁判官の独立重要」「再審で是正は可能」
憲法で裁判官は「良心に従って独立して職務を行う」と規定されている。あるベテラン裁判官は「この規定があるので裁判所は警察や検察のように組織として謝ることはできない」としつつ、佐藤裁判長の謝罪を「菅家さんと向き合った裁判官として悩み、感じた気持ちを素直に表したのだろう」と評した。
事件では、有罪の決め手となったDNA鑑定が時を経て無罪を証明する証拠となったことが、多くの裁判官に衝撃を与えた。東京地裁と東京高裁は1月、年1回開いている「鑑定研究会」のテーマにDNA鑑定を選び、100人以上の刑事裁判官が専門家に基礎から学んだ。最高裁司法研修所も昨年11月と今年2月、全国から刑事裁判官が集まる研究会でDNA鑑定を議題にし、証拠価値としてどのような限界があるかを議論したという。
だが、記録などを精査して足利事件の誤判原因を検証する動きはない。裁判員制度が始まり、一般市民が誤判にかかわってしまう可能性もあるのに、だ。(以下省略)
第三者機関による検証を
今回は警察や検察によって、捜査の検証が行われた。
しかし、日弁連はこれらの機関による検証だけでは不十分だとして、
「わが国において,誤判原因を解明し,誤判の未然防止のための対策を考える,公的な独立した第三者機関としての調査委員会を立ち上げることが, 今こそ緊急に求められている」という意見書を出している。
「誤判原因を究明する調査委員会」の設置を求める意見書(全文はリンク先でどうぞ)
2 0 1 0 年( 平成2 2 年) 3 月1 8 日
日 本 弁 護 士 連 合 会
第 1 意見の趣旨
わが国で起訴後にえん罪であったことが明らかにされた無罪確定事件と有罪判決がなされた後に上級審あるいは再審において誤判であったことが明らかにされた有罪破棄無罪確定事件・再審無罪事件について,誤判( 誤起訴を含む。以下同様とする。)発生の原因を明らかにするとともに,捜査と公判における問題点を摘出して,わが国の刑事司法制およびその運用において緊急に改善すべき点と今後検討を進めるべき課題を明らかにするため,公的機関としての「誤判原因を究明する調査委員会」を設置すべきである。
あわせて、今回の判決に関する日弁連会長声明も転載しておきます。
会長声明集 Subject:2010-3-26
足利事件再審無罪判決に関する会長声明
宇都宮地方裁判所は、本日、菅家利和氏に対して再審無罪を言い渡した。
その中で、当時のDNA型鑑定の誤りと検察官の起訴後の取調べの違法性を指摘するとともに、「菅家氏の自白は、信用性が皆無であり、虚偽であることが明らか」とした。また、佐藤正信裁判長は、菅家氏に対し「菅家さんの真実の声に十分に耳を傾けられず17年半の長きにわたり、その自由を奪う結果となりましたことを、この事件の公判審理を担当した裁判官として、誠に申し訳なく思います」と謝罪し、この事件に込められた菅家さんの思いを深く胸に刻むことを表明した。
足利事件は、捜査機関と裁判所が当時のDNA型鑑定を過大評価し、自白を偏重して適正な判断をしなかったこと、裁判所が長い間DNA再鑑定を拒否するという非科学的態度をとったこと等の複合的な問題が顕在化した事件である。
これらの課題に対して、
1.まず、任意性を欠く自白や虚偽自白を生じないよう取調べの可視化(取調べの全過程の録画)が必要不可欠であるが、未だ実現の目途が立っていないことは誠に遺憾である。
本日の判決を契機としてただちにその実現を進めるべきである。
2.また、冤罪を訴える者に適切に保管した資料をもとにDNA鑑定などを迅速かつ適正に受けられる権利を保障すべきである。
3.判決言渡しに際し、裁判長は「このような取り返しのつかない事態を思うにつけ、二度とこのようなことを起こしてはならないという思いを強くしています」と述べた。このような裁判所の反省を生かすためにも、誤判を生じさせた原因を徹底して調査する第三者機関をただちに設置すべきである。
本日の判決を受けて、当連合会も、司法の一翼を担うものとしてその責任の一端を痛感している。17年半もの間、不当にも身体を拘束され、心身共に重大な苦痛の中で無実を訴え続けて闘ってきた菅家氏のご苦労を思うとき、われわれは、冤罪に苦しむ人を救済するために、今後とも最大限の支援を惜しまない決意を改めて表明する。
最後に、当連合会は、艱難辛苦に堪えた菅家利和さんの今後が、穏やかで幸せに満ちたものとなることを心から願うものである。
2010年(平成22年)3月26日
日本弁護士連合会
会長 宮 誠
関連過去ログ:
★NO.1192 足利事件 「取調べの可視化」と麻生太郎の重大失言。
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-1223.html
★NO.1201 「絶対に許さない!」・・・なぜ誤りを犯したのか、取調べの可視化を。
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-1228.html
★NO.1228 菅谷事件は、日本における正義の欠落である。 (ル・モンド紙)
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-1259.html
冤罪をなくすために、取調べの全面可視化を!
鳩山政権はサボるな!!
と思われたら

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「大脇道場」消費税増税反対キャンペーン中!
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-588.html
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2010.03.27 | | Comments(0) | Trackback(5) | ・社会評論Ⅲ
