NO.1577 「国際競争力」論 ①「構造改革」正当化の呪文
民主党も「国際競争力」の呪いにかかっているようだ。「国際競争力確保の観点から法人税率を引き下げる」・・・と。
法人税率引き下げを提言 民主研究会が公約素案(東京新聞 2010年4月20日 21時35分)
「大企業が強くなれば、いずれは国民の暮らしが良くなり、経済も成長する。そのためには大企業の国際競争力が、一番大事だ。」という。民主党の参院選マニフェスト(政権公約)づくりに当たる成長・地域戦略研究会(大畠章宏会長)は20日の役員会で、国際競争力確保の観点から法人税率を引き下げることや、厳しい財政事情を踏まえ予算額上限を定める概算要求基準(シーリング)を復活することなどを盛り込んだ素案をまとめた。
同研究会で今後さらに内容を詰め、5月10日までに公約原案を取りまとめる「マニフェスト企画委員会」に提言。最終的には「政権公約会議」(議長・鳩山由紀夫首相)が5月末までにマニフェストを決定する運びだ。
衆院選公約では中小企業に絞った法人税減税を打ち出しており、方針転換を図った形だ。シーリングは政権交代後にいったん廃止していた。
素案はこのほか「消費税を含む税制の抜本的な改革を行う」と明記、「デフレ脱却に向けた数値目標を示す」としている。ただ消費税率に関しては、首相が4年間の衆院議員任期中は引き上げないと明言しており、公約への盛り込みは見送られる公算が大きい。(共同)
そして、財界・大企業は「国際競争力」のために賃金は上げない、法人税は下げろという。
「国際競争力」という呪文
「国際競争力」と呪文を唱えれば、政府も国民も思考停止に陥り、大企業の思う壺になりそうな有様だ。
今日はこの「国際競争力」という呪文について考えて見たい。
この呪文は、自公政権の「構造改革路線」の専売特許でもあった。
その結果は、ご覧のとおりである。賃金の抑制と雇用破壊が進み、さらには法人税率の引き下げで、大企業はウハウハの大もうけをしてきたのだ。「構造改革路線」は、国民の暮らしや中小企業を犠牲に大企業がぼろ儲けをする仕組みを作ってきたのである。
しかし、「日本は資源の無い国だから、資源を輸入しないとやって行けない」と言われると、「そのためには製品を輸出しないとやって行けない」となる。だから、「国際競争に負けてもいいのか」なんていわれると、「そうか、賃上げは我慢しなければいけないのか・・・」「法人税は安いほうがいいのか・・・」・・・となってしまいそうだ。
こうして「呪文」がまかり通るのだ。
経常収支黒字なら問題なし
暮らしと経済研究室主宰・山家悠紀夫(やんべゆきお)さんは、「日本は世界でトップクラスの黒字国。企業に増税して国際競争力が少しくらい弱くなっても大丈夫」と言っている。(しんぶん「赤旗」4月14日)
2009年の日本の経常収支(貿易など国の対外経済取引の収支)は13兆円の黒字になっているという。
内訳は、貿易・サービス収支(商品の輸出入やサービスのやり取り収支)の黒字が2兆円。所得収支(お金の貸借などに伴う利子・配当のやり取りの収支)の黒字が12兆円。
日本は1981年からずっと黒字で、世界でもトップクラスだそうだ。黒字でさえあれば必要なものは輸入できるので心配は要らないと。
また、日本経済全体を見ると、2009年の総需要(GDP+輸入)のうち、輸入の占める割合は約11%。実に89%が個人消費や企業の設備投資など国内需要が占めている。だから、輸入が減ったからといって日本経済がダメになるということはないと。
むしろ、国内で物が売れるようになることのほうが重要なことだ。
そのためには、雇用の安定と賃上げが必要だし、儲かっている大企業に応分の負担を求めることが必要だ、と。
又、日本共産党の志位委員長は次のように話している。
話が広がりすぎたが・・・。内部留保と利益の還元で経済危機の打開を――日本共産党版「成長戦略」
吉田 景気がなかなか本格軌道に戻らない。自民党と民主党で成長戦略でいろいろ議論していますが、何が原因だと思いますか。
志位 どうしてここまで日本の経済状況が悪いかというと、私は、リーマン・ショック前の10年間に答えがあるとみています。その10年間で、大企業の経常利益は15・1兆円から32・3兆円に倍以上になっている。ところが、雇用者報酬――賃金は279兆円から最近では253兆円に1割も減った。直近でもボーナスの大幅減というデータが報道されました。
つまり大企業が利益を上げても、働く人の収入は減っている。どこにお金がいっちゃったかというと、大企業の内部留保が142兆円から229兆円へと膨らんでいる。
この内部留保がどういう形で現存しているか。この10年間で国内の設備投資――工場とか機械とかは少しも増えておらず、むしろ減っているのです。国内にお金が回っているわけではない。海外の子会社とか企業の株式の保有に回っている。
つまり国内で正規社員を非正規社員に置き換えて吸い上げて、中小企業の単価を切り下げて吸い上げて、国内で国民から吸い上げたお金が、国内に回らないで海外のもうけに回されていく。一握りの大企業は大もうけを上げたが、日本のGDPはこの10年間で約500兆円ぐらいでまったく増えなくなってしまった。いまはもっと下がっています。「成長しない国」になってしまった。そして「国民が貧しくなる国」になってしまった。国内で国民から搾りあげたお金は、もっぱら海外での投資に充てられて、国内経済がいよいよ空洞化していく状況がおこっている。
吉田 経済界からは「国際競争力」のためのものだという反論がありますが。
志位 逆なのです。この10年間、「国際競争力」というかけ声で、正規社員を非正規社員に置き換える。中小企業の単価の買いたたきを野放しにする。「大企業が強くなれば、いずれは国民の暮らしが良くなり、経済も成長する」といってきたのに、その結果は、「成長しない国」になってしまった。「国際競争力」という掛け声ですすめてきた自民党流「成長戦略」の結果が、成長力の衰退と産業空洞化なのです。
いまなぜ企業が国内に投資しないかといったら、需要がないからです。需要がないから国内に設備投資もしない。需要を求めて海外に逃げてしまう。この問題の解決の方法は、この巨額の内部留保と利益を社会に還元する。国民の暮らしに還元する。そして国内の需要・家計を活発にしていく。そのことによって国内の投資も活発になっていくでしょう。この道こそ、経済危機から国民の暮らしを守り、日本経済の健全な成長をはかる道になる。これは私たちの、まあ日本共産党版の本当の意味での「成長戦略」なのです。
「国際競争力」とは、あくなき儲けを追求する「構造改革」を正当化する呪文に過ぎないということでした。
財界・大企業優先の政治では、この呪縛からは抜け出せない。
★参考:NO.1563 二つの”呪縛”からの解放こそ・・・その①
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-1623.html
呪文に打ち勝たないかんばい!

↓ ↓


「大脇道場」消費税増税反対キャンペーン中!
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-588.html
- 関連記事
-
- NO.1879 最近のツイートから 社会的富の還流が必要。再配分機能を再建することが日本の経済改革のツボ。 (2010/11/01)
- NO.1877 怒ってる!大企業優遇政治がもたらした富の独り占めと貧困、格差を象徴する数字に。社会に、雇用に中小企業に社会保障に還流を。 (2010/10/30)
- NO.1847 法人税減税は”究極のバラマキ” ”内需拡大で経済立て直し”は世界の常識 (2010/09/16)
- NO.1836 カン敗でしょうな・・・、儲けを吐き出せといえない管。・・・大企業内部留保、売り上げ減でも、09年度11兆円増。年収500万円の労働者220万人分。 (2010/09/06)
- NO.1827 「内部留保」をめぐるダブルスタンダード? (2010/07/29)
- NO.1706 「法人税が高いから企業が海外に逃げる」という大ウソ。 (2010/06/24)
- NO.1577 「国際競争力」論 ①「構造改革」正当化の呪文 (2010/04/23)
- NO.1563 二つの”呪縛”からの解放こそ・・・その① (2010/04/16)
- NO.1550 鳩山首相 「内部留保に適正な課税を検討する」? (2010/03/26)
テーマ:政治・経済・時事問題 - ジャンル:政治・経済
2010.04.23 | | Comments(0) | Trackback(2) | ・ルールある経済社会を
