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NO.1642 「もうガマンしない!」 全国青年大集会2010によせて

 「もうガマンしない!」・・・このフレーズが集会のメインステージの看板に掲げられるということについて、考えてみたい。

      もう我慢しない
      とくいちゃんから拝借

 「もうガマンしない!」は、自己責任論の前に分断され孤立しガマンするしかなかった時代から、分断の鎖を断ち切り連帯の力で社会問題に立ち向かう新しい時代への、青年たちのたくましい決意表明と受け止める。

 思うに殊ほど左様に、青年たちは孤独のなかで我慢を強いられてきたのだった。

 青年たちにガマンを強いてきた「貧困と格差」。 その根本原因は、①労働法制の度重なる制規制緩和による非正規労働者の拡大による「労働所得」の格差拡大と、②社会保障連続改悪による再配分機能の低下に求められる。 ここでは、「労働所得」にもありつけないほどの貧困な青年たちを大量に生み出した労働法制の改悪について振り返っておきたい。

労働者派遣法の制定

 労働者派遣法の制定は1985年。それは労働者を物か、部品のように扱う時代の本格的始まりだった。 そのお手本は、コスト削減の「トヨタのカンバン方式」。 この法律つくりにかかわった学者は、「必要なときに、必要なスタッフを、必要な期間、企業の要請に応じて派遣する」と、わかりやすく説明している。 それは、トヨタが下請けいじめでのし上がった「トヨタのカンバン方式」(=「必要な部品を、必要なときに、必要な量、トヨタの必要に応じて納品する」)の「労働者版」である。
その時、はっきりと、労働者は部品や物と同列に置かれたのであった。

 当時、中曽根内閣は、経団連のメザシの土光率いる「第2臨調」路線を忠実に実行していた。 その政治路線は「戦後政治の総決算」というスローガンで、レーガン、サチャーと連携しながら、次第に新自由主義の政治路線を具体化していた。 ユニオンジャックによる、「総評」解体、労使協調の「連合」誕生による、労働運動・国民運動の分断を利用しながら、国鉄の分割民営化につ続き、社会保障分野を目の敵に、老人医療の有料化や健保本人窓口負担が持ちこまれた時期。 同時に雇用・労働分野に、新たな搾取・収奪の方法として強行されたのが「労働者派遣法」だった。


 労働者派遣法は、戦後、労働基準法で禁止されていた旧炭鉱時代の「納屋制度」を合法化し、現代の「たこ部屋」を作り、ピンはねを合法化するものだった。

 派遣は臨時的・一時的業務に限定し、常用雇用の代替としないことが原則として謳われていた。 しかし、そんな原則はことごとく破られ、労働基準法の相次ぐ改悪とあいまって、労働コストの削減に成功した財界経済は「バブル成長」し続けた。

労働法制の歴史

「新時代の『日本的経営』」と派遣の解禁

 しかし、90年代に入りバブルがはじけ不況が進行すると、財界は新たな儲けの手段として、更なる労働コスト削減戦略を打ち出す。 1995年「新時代の『日本的経営』・・・挑戦すべき方向と具体策」である。 その提言は労働者を「長期蓄積能力活用型」「高度専門能力活用型」「雇用柔軟型」に分けるというものである。 平たく言えば、「幹部候補のエリート正社員」と「高いスキルを持つスペシャリスト」と、「いつでも使い捨てにできる激安労働力」に分けるのである。

 日経連の雇用の多様化・非正規化要求=派遣法の更なる規制緩和要求を受け入れた政治は、1999年の「派遣労働の原則自由化」に突き進んだのであった。 そして2003年には製造業までもが自由化され、日本の製造大企業トヨタやキャノンらはこれで徹底的に労働コストを削減し、ぼろ儲けをする事になる。

 もともと、派遣労働には○使用者責任があいまい ○強制労働が出来る ○中間搾取ができると言う危険があり、これを原則自由化するとどうなるかは目に見えていた。(当時、この法律に反対したのは日本共産党だけであったことを付け加えておく)

人貸し業、「タコ部屋」の復活

 1986年の労働者派遣法施行までは、労働者供給事業は禁止されていた。 上の表で、並行的に順次、関係法が改悪されてきた事がわかるが、人貸し業と「タコ部屋」の復活は法により守られたきたのである。 そして、1999年に派遣の対象業種が原則自由化され、2003年に製造業まで解禁されてからというもの、「ハケン」は急激に増えたのだった。


 こうして、青年たちを初めとする働く貧困層は生み出されてきたのだ。

「フリーター」から「ワーキングプア」へ

 1980年代後半、終身雇用で会社に人生を縛られた「サラリーマン」に対し、「フリーター」は自由に働き方を選ぶ青年の働き方かのようにして登場した。 それから20年足らずで、彼らは「貧困」の代名詞となったのである。
 2007年ごろから「ネットカフェ難民」が登場し、「ワーキングプア」がその言葉の定着と共に拡がることとなった。

 その時代と共に歩んだ「ロスト・ジェネレーション」と呼ばれる青年たちは、「頑張れば何とかなる」「上手く行かないのは自己責任だ」と思い込まされ、自己責任論を内面化しながら孤立を深めて行ったのである。

 そしてもがきながら、或いは病むことで生き延びる術を探したり・・・。 「病むこと」によって、精神障害者手帳で障害者年金をもらったり、生活保護を受けたり・・・。 過酷な労働市場から避難したり・・・。 或いは、疲れ果て孤独のうちに、自ら命を絶ったり・・・。

 「35才までもフリーターはしないだろう」と思っていた若者たちは、やがて袋小路に追い詰められ「自殺か餓死か、ホームレスか刑務所か、という最悪の四択」(雨宮処凛)を迫られるようになったのである。

自らの貧困を社会問題として

 しかし、それだけではなかった。 困難な時代をくぐりながら少なくない若者たちが、交流し学び行動する中で少しずつ「自己責任論」を乗り越え、自らの貧困を社会問題としてとらえ返し、立ち上がり始めたのであった。 そして、09年暮れから00年正月にかけての「年越し派遣村」が、現代の貧困を日本中に、社会問題として可視化したのだった。

 そして、今、青年たちは、曲がりくねり行きつ戻りつしつつも、分断の鎖を断ち切り連帯の力で社会問題に立ち向かう新しい時代へたくましいく踏み出し始めたのである。そうして、「全国青年大集会2010」に結集したのである。

「もうガマンしない!」は、青年たちの連帯と希望へのスローガンである、と理解したい。


 青年たちは希望です。とても励まされます。

      テンバイ3410

最後に紹介。
 去る16日、東京・明治公園で開かれた「全国青年大集会」で、日本共産党の志位和夫委員長は、次のように青年たちを励ましている。

大企業の無法にたいして労働者が立ち上がった
 前回の青年大集会は、リーマン・ショックが世界に広がる最中に開かれ、その直後から大企業による「派遣切り」の嵐が日本列島を襲いました。

 この大企業の無法にたいして、これに立ち向かうたたかいが全国で起こりました。労働組合をつくり、団体交渉権を行使して不当な解雇・雇い止めを撤回させるたたかいが全国のあちこちで起きました。労働局に申告して無法をただすたたかい、裁判を起こして働く権利を守るたたかい、さまざまな形でたたかいが広がり、連帯が広がった。これは素晴らしい歴史的な出来事ではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)

未来に生きる三つの力をかちとってきた
 みなさん。一つひとつのたたかいには、紆余曲折(うよきょくせつ)があります。要求が通って大きな成果をおさめた、たたかいもあります。不当にも要求がまだ通っていない、たたかいもあります。

 しかし私は、この1年7カ月のみなさんのたたかいをつうじて、みなさんは未来に生きる三つの力をかちとってきていると考えています。

 第一に、「派遣だから仕方がない」とか、「自分が悪い」などという、自己責任論を乗り越える流れが、大きく広がっているのではないでしょうか。(拍手)

 第二は、「同じように苦しむ労働者を二度と生み出したくない」と、自分個人の問題としてだけでなく、社会全体の問題として、みなさんがたたかいに立ち上がっていることです。これは、すばらしいことだと私は思います。(拍手)

 第三は、正社員と非正規社員が連帯し、民間労働者と公務労働者が連帯し、労働者と学生・高校生が連帯し、国民各分野の運動と連帯し、「年越し派遣村」に象徴されるような社会的連帯が広がった。これこそ、未来ある流れではないでしょうか。(「そうだ」の声、大きな拍手)

 たたかいによって、みなさん一人ひとりが、みなさんを苦しめている社会の仕組みを見抜き、たくましく成長している。ここにこそこの1年7カ月のたたかいの最大の成果があると、私は考えるものです。(拍手)

労働者派遣法――「抜け穴」なしの抜本改正を
 みなさん。こうした力が、労働者派遣法の改正を、政治の焦点に押し上げました。

 派遣法は、「抜け穴」なしの抜本改正が必要です。せっかくみなさんの力で法改正を俎上(そじょう)にのせました。製造業派遣は「抜け穴」なしの全面的禁止が必要です(拍手)。「専門26業務」という「抜け穴」を残してはいけません。(拍手)

 みなさん。労働者派遣法は、「抜け穴」なしの抜本改正をはかり、人間をモノのように「使い捨て」にする働かせ方を一掃し、「雇用は正社員が当たり前の社会」をご一緒につくろうではありませんか。(歓声、大きな拍手)


関連過去ログ:
 ■NO.271 貧困・格差の中心問題は、雇用・労働問題。
         http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-284.html
 ■NO.519 「日雇い派遣」原則禁止?
         http://blog107.fc2.com/control.php?mode=control&process=entry
 ■NO.536 [貧困と格差]を広げたのは?・・・政党が「やってきたこと」を見る。(1)
         http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-594.html
 ■NO.616 1999年前に戻せ!・・・労働者派遣法。
         http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-683.html
         
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2010.05.22 | | Comments(1) | Trackback(2) | ・雇用と労働問題Ⅳ

コメント

第二言論集会に思う。

過日、東京渋谷で第二言論集会があった。マスコミに対抗するユーチューブ、ユーストリーム、twitter、ブログ、デジカメ等を使ってソーシャルメディアによる庶民のメディアを充実させようという趣旨の集会だった。
 フリーランスのライター・制作会社社員ら非正規雇用の人々がインディユニオンを作る。動画で自分たちの活動を説明する。
 そこに私はある種の希望を見出した。この国もインディユニオンの登場で働きにくい構造を変える希望を持った。
 会場には若者がビラまき等でゲリラ的活動をしようと発言した。
 日本の若者も頼りになると思った。

2010-05-25 火 13:53:08 | URL | ぶじこれきにん #U9m.xr6A [ 編集]

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