NO.1637 違憲判決に匹敵する「和解」 障害者自立支援法違憲裁判
聞くところによると、自民党がマニフェストで「障害者自立支援法改正」を掲げたそうです。(未確認ですが)
「じゃ、自民党が政権に返り咲いたら現政権の自立支援法廃止は反故ということか?!」という話になりました。
そこで、今回の一連の障害者自立支援法違憲裁判での「和解」の意義について整理してみたいと思います。
国(厚生労働省)は訴訟団と「 基本合意文書」に調印しました。それは、自立支援法が障害者の尊厳を深く傷つけたと国が総括する公文書です。
二 障害者自立支援法制定の総括と反省
1 国(厚生労働省)は、憲法第13条(個人の尊厳の保障)、第14条(法の下の平等)、第25条(生存権保障)、ノーマライゼーションの理念等に基づき、違憲訴訟を提訴した原告らの思いに共感し、これを真摯に受け止める。
2 国(厚生労働省)は、障害者自立支援法を、立法過程において十分な実態調査の実施や、障害者の意見を十分に踏まえることなく、拙速に制度を施行するとともに、応益負担(定率負担)の導入等を行ったことにより、障害者、家族、関係者に対する多大な混乱と生活への悪影響を招き、障害者の人間としての尊厳を深く傷つけたことに対し、原告らをはじめとする障害者及びその家族に心から反省の意を表明するとともに、この反省を踏まえ、今後の施策の立案・実施に当たる。
これは、個人の尊厳保障は今日では日本国憲法の根本規範として理解されており、障害者自立支援法が憲法とりわけ13条に違反する違憲の存在にあることを認めたと評価できるものだそうです。
「国((厚生労働省)は」とあるのは、契約の当事者が厚生労働省という意味ではなく、責任部署が同省であるということ、その責任部署の最高責任者の厚生労働大臣が約束したという表示で、あくまで契約主体は国です。大臣が約束した公文書としての契約書は、裁判所がいちいち確認しなくても成立する約束だということになります。
合意書の確認を記した「和解調書」が持つ意味
今回、14全ての地裁における和解調書で、この基本合意書が確認されました。
2010年3月24日さいたま地裁 障害者自立支援法違憲訴訟 第7回口頭弁論(和解)
期日調書 記載事項(要約版)
次のとおり当事者間で和解が成立した。
和 解 条 項
1 原告ら及び被告らは,障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と国(厚生労働省)が,本訴訟を提起した目的・意義に照らし,国(厚生労働省)がその趣旨を理解し,今後の障害福祉施策を,障害のある当事者が社会の対等な一員として安心して暮らすことのできるものとするために最善を尽くすことを約束したため,別紙平成22年1月7日付け基本合意文書のとおりの合意をしたことを確認する。
2 原告らは,それぞれ本件訴訟のうち行政訴訟の部分の訴えの取下げをする。
3 被告らは,前項の原告らの訴えの取下げに同意する。
4 原告らは,本件訴訟の金銭請求(国家賠償請求または不当利得返還請求)部分の請求を放棄する。
5 訴訟費用は各自の負担とする。 以 上
(別紙)
■障害者自立支援法違憲訴訟原告団・弁護団と国(厚生労働省)との基本合意文書 平成22年1月7日
■要 望 書
内閣総理大臣 鳩 山 由紀夫 殿
厚生労働大臣 長 妻 昭 殿
障害者自立支援法訴訟団
2010年1月7日
裁判では、「和解を調書に記載したときは、その記載は確定判決と同一の効力を有する」そうです。つまり最高裁判決と同じく、裁判所の最終判断と同じ重さがあるということです。そして国を代表して法務大臣が調印しています。(国が被告の場合は、法務大臣が国を代表するのだそうです。)
これら「基本合意」と「和解調書」の意義について、全国弁護団の藤岡毅事務局長は以下のように説明しています。
三権分立・・・立法、行政、司法がそれぞれに牽制しあって権力の暴走を防ぎ、市民の権利を守る仕組みに照らして、その和解判決の重みを強調しています。さらに次のように説明しています。「基本合意の責任部門が厚生労働大臣としても、裁判所での若い成立に当たっては、国家を代表する法務大臣がその合意書の成立を確認しており、いわば、憲法で国権の最高機関とされている立法部門と内閣総理大臣を長とする行政部門が最高裁を頂点とする司法部門に対して、公式に約束をするという意義を持つのが訴訟上の和解の成立ということになります。」
(引用は、『きょうされんTOMO』5月号) この間の自立支援法をめぐるたたかいは、裁判において「違憲判決に匹敵する和解」を勝ち取ったということです。政権の変動があっても影響なし!
厚生労働省が責任部署となる過去の裁判では、国は敗訴判決を受けてもこれに一向に従わないということがよくありました。
しかし、この障害者自立支援法違憲訴訟においては、国がこのように基本合意と和解調書という二重の縛りによって、障害者自立支援法の過ちを総括して、その廃止を確約しているわけですから、仮に政権の変動があっても影響されない重い価値のある公文書であり、違憲判決に匹敵する勝訴の証が基本合意と裁判所での和解調書なのです。
しかし、法的な解釈はそうだとしても、決して安心などはできません。官僚の激しい巻き返しや、未だに応益負担廃止の予算措置さえ明らかにできない政府・厚労省の体たらくや、自民党の公約などを考えると、この「和解」判決を生かすも殺すも,将に障害者運動と国民のたたかいにかかっていると言わなければならないだろう。
参考:
■NO.1634 「民主党政権に失望」……障害者自立支援法違憲裁判訴訟団
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-1713.html
「勝利の和解判決」を生かすも殺すもたたかいにかかっている!

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2010.05.19 | | Comments(3) | Trackback(1) | ・障害者自立支援法2
