NO.2017 障害者自立支援法違憲訴訟団 が災害特別立法への意見書
3月29日、午前8時~9時半、参議院議員会館講堂で、与党民主党の障がい者政策PT・難病対策WT合同会議が開かれ、ヒヤリングを求められたJDFなど30をこえる障害者団体が大震災関連での緊急要請をおこないました。
その際、障害者自立支援法違憲訴訟団にも参加要請があり、藤岡弁護団長らが参加し以下の意見書を民主党に提出しています。
「障害に起因する社会的困難は個人が負うものではなく社会全体で支えるべきである」という基本的な考えの下、災害時における災害弱者への特別な配慮が求められます。
災害特別立法への意見書
民主党 御中
障害者自立支援法違憲訴訟団
2011年3月29日
このたびの東北地方太平洋沖地震において、被災された市民の命と生活を守り、未曾有の事態を乗り切るべく、政府、与野党、自治体、民間、関係者が日夜ご奮闘、ご尽力されていることに心より敬意を表し、感謝申し上げます。
初めて立ち向かう事態に誰しも困惑しながら最善を尽くしており、完全な対応はあり得ませんので、この事態、経験を活かして、さらに誰でも安心して暮らすことのできる社会の構築に向けてみんなで知恵と力を合わせるべきときと思います。
一 災害「弱者」に対する特別な支援を意識した法制度へ
私たち訴訟団(原告団・弁護団)は、障害に起因する社会的困難は個人が負うものではなく社会全体で支えるべきであるとの考えをもとに運動してきました。今回の災害にあたってもその困難は当然社会全体で分かち合うべきと考えています。
被害は当該地域のすべてにもたらされました。
しかしながら、その中で、どうしても救助・支援から「取り残される」障害者・高齢者・乳幼児・妊婦・患者等の「災害弱者」に対する支援は、法律の中で関係者が法的根拠に基づき意識的な取り組みを行うことが必要と考えます。
実際、移動に、車いす、支援者の介助・支援が不可欠な障害者の場合、災害から逃げ遅れて犠牲になった人々の率が高いことは容易に推察されます。
災害発生後の急性期において、支援物資が届かないという声が多数ありましたが、救援物資の配布を受けるための外出も支援者なしで行くことのできない障害者にとって、健康な方に比べて救援を受けること自体が困難な状況に置かれることが多いことは、現実に発生していた事態です。
また、高齢者・障害者に限らず、「情報」取得が不足することによる様々な困難、支障が報じられましたが、テレビや携帯電話の画面や文字情報の入らない視覚障害者、ラジオ・電話・人の音声による情報の入らない聴覚障害者、抽象概念の理解が困難な知的障害者等、災害における情報保障は、これらの人々に関しては特に意識的な支援が必要であり、法により明記されるべき事項です。
二 各論
1 コミュニケーション障害のある人への情報保障の徹底
津波・地震・停電・救援・避難方法・救援物資の配布・家族の安否・行政情報等、災害時に情報が行き届かないことによる支援の欠如、孤立を防ぐ必要があります。
緊急時に避難所で手話通訳体制が十分ない場合、紙の掲示による情報告知を徹底し、紙とペンによる筆談、携帯電話や携帯パソコン等での画面を利用したコミュニケーションを図るなど、可能な支援はあります。
テレビでの情報は重要な手段ですので、政府の会見等の手話通訳、文字情報の提供を法定化することはもとより、コミュニケーション障害者に対する、災害情報周知が行き渡らないことはそれ自体人権侵害のおそれがあることを公共放送事業者が認識できるよう、コミュニケーション支援の保障の徹底を法制化してください。
2 在宅障害者被災者支援方法の構築
現在の障害者改革の方向は、入所施設での入所・入院生活から地域での在宅生活です。
しかしながら、一か所に集まっている入所施設での被災者への対応に比べ、地域に点在する大勢の障害者への支援には、困難があります。
まず、どこに障害者が暮らしているのかの基礎情報の把握からして困難です。
そこで、訪問系福祉施策の利用をしている市民の個人情報の集約について、個人のプライバシーの尊重の精神を基本としながらも、災害時の救援体制の基盤整備の必要性に関する啓発活動を促進することを前提に、災害救助・支援に関しては個人情報保護の免責条項等を作って、地域で暮らす障害者の住所・氏名・必要な支援の内容等の情報整備が円滑に進むような法改正を検討するべきと考えます。さらに、それらの基本情報をもとにして、自治体横断的な地域生活に対する災害支援制度が必要です。
激甚災害は特定の自治体に対して根こそぎ被害を与えますから、当該自治体だけの自主努力では限界があり、国と都道府県が、地域を超えた横断的な体制で、支援を構築する必要があります。
たとえば、災害にあたっては、他の都道府県での指定・許認可を受けている事業所による被災地域に対する出張支援を法的に認め、その活動を積極展開するための報酬付与を公的に保障する仕組みが必要です。
3 知的・発達障害者・精神障害者への配慮義務
自閉症、広汎性発達障害等の発達障害児者、精神障害者にとって、避難所での集団生活を送ることは困難が伴います。
災害におけるただならぬ雰囲気に影響されて興奮状態に陥ったり、こだわり行動により、避難所での他の避難者との間でのトラブルの発生も心配で、避難所生活はとても自信がないことから家族が孤立する事態も聞き及びます。
限られた避難所資源の中で限界はありますが、個別支援の必要な人を行政も把握し、避難所での配慮、被災者同士での助け合いも円滑に進むように、配慮規定を設けるべきでしょう。
避難所に行き難い精神障害者は、自宅で閉じこもり孤立するケースがあります。薬品の不足による症状の悪化も心配されます。在宅での被災障害者の支援が行き届くよう、災害の場合のこれらの特性の障害者への支援を意識した救援法制が早急に必要と考えます。
三 停電のもたらす人権問題
1 人工呼吸器等を利用する重度障害者、患者にとって「電気供給を受ける権利」が人権であることの確認の法制化。
東京電力の福島第一原子力発電所の原発事故の影響により、東電により、「計画停電」の実施が打ち出され、政府も直ちに了解されました。
原発停止状況等における大幅な供給不足の事態において計画停電の実施の可能性があること自体は避けられません。
しかしながら、今回の実施は事前に準備の余裕もできないほど、あまりにも唐突であり、人工呼吸器により生命を維持しているALS等の障害者にとって、停電は突然の生命停止に直結し兼ねない危険に他ならず、生命権・生存権が危殆にさらされました。計画停電を政府が了解するにあたり、停電により、人工呼吸器装着障害者の生命に危険が発生することへ危険性、対処について、どれだけの議論があったのでしょうか。数時間で決定した経過からはおそらく、そのような検討はなされなかったのではないでしょうか。
計画停電に関連して、厚生労働省から注意喚起を促す通知等を出すなどの厚生労働省の対応を一定評価しますが、これらは本来、一片の役所の通知レベルの問題ではありません。
結果として大きな事故は報道されていませんが、訴訟団事務局にも、ALS障害者家族から「とうとう停電が来ました。目の回る忙しさをぬって、車のバッテリーを買ってきてつないだのですが、12Vを100Vに変換するインバーターのプラスとマイナスを逆につなぎ、一瞬にして壊してしまいました。茫然自失です。幸いにして、以前に買っておいた低レベルのインバーターにつなぎ替えたのですが、電気の質が悪く、呼吸器はもちろんのこと、吸引器にもつなぐ勇気がありません。つないで故障したとの情報が回ってきているのです。
なんとか、持続吸引とバッテリー式吸引器とアラーム(これが意外に重要)、最後は卓上蛍光灯を稼働して、乗り切りました。」など、必死に非常事態を凌いでいる状況が報告されています。
「東電は、停電のときは病院に行けというが、電源の確保を理由とした入院など受け入れてくれません。行政のいう指定病院など本人がいくのに往復3時間。3時間の停電のためにいけるわけがありません。
今回の対応のための代替電源の購入等で著しい出費です。 小型自家発電機(10万)、自動車用バッテリー(2万)、発電機用のガスボンベ(1個500円×100個=5万円)、充電池(3万円)、インバーター(3万)、万一の場合のアンビューバック(2万)等々 30万円くらいはかかっています。東電か国が補償するべきではないでしょうか。」
いままで事故が聞こえて来ないのは各人の自己防衛による紙一重の結果というべきです。人工呼吸器等を利用する重度障害者、患者にとって「電気供給を受ける権利」は憲法第25条の生存権等に基づく人権であることの確認の法制化が必要です。
そうであれば、少なくとも計画停電実施前に、障害福祉所管部署等を通じて障害者団体への情報提供が24時間以上前に行われることを法的な義務とするべきと思われます。そして、電気供給がなくなる以上、小型自家発電機、自動車用バッテリー、発電機用のガスボンベ、充電池、インバーター等の代替電源策の確保、万一の場合のアンビューバック(手動式呼吸器)費用等も電気供給事業者及び国・地方公共団体の法的義務として、法定化するべきですし、障害者、患者がそのための支出を強いられた場合の補償条項も必要です。
東京電力等の電気事業者は、電気事業法第3条に基づき経済産業省の許可を得て、市民の生命維持に直結する事業を行っているものであって、市場での一民間事業者ではありません。
今回の特別立法はもとより、電気事業法第1条の目的条項やその他の条項、総合福祉法、災害救助基本法等に、それらのことを明記するべきです。
2 「被災者」概念の範囲の拡大
生命維持に不可欠な薬が「要冷蔵」である疾患も多数あります。体温が外気温に影響されやすく、真夏日にクーラーがないと体温が38℃に上昇するような疾患もあります。計画停電は数年単位で行われる可能性があるとも言われており、特に夏場になれば、冷房・冷蔵庫が停止すると生きられない者も出てくる可能性があります。東京電力管内から、遠方へ避難・移住する者も予想されます。しかし、行政は災害救助における「被災地」は東北地方及び原発周辺地域を想定し、「計画停電管内にいる者」というだけで、「被災者」としての救援・補償の対象としない見通しです。
従いまして、上記のような事情のある障害者、慢性疾患者が「被災者」の概念に該たり、救済の対象となるとする法令の改正等をぜひ実現していただきたい。
四 原発被災者、被災障害者が首都圏等で地域生活を送るための特別支援制度を
いまなお続いている深刻な原発事故により、避難を余儀なくされているみなさんの生活を成り立たせることが重要であり、国策として遂行されてきた電気事業である以上、それは国の人権保障としての義務・責任です。
原発周辺地域のみなさんの状況は日に日に悪化する一方であり、長期的視点での抜本的対策が不可欠です。
原発事故地周辺地域から、首都圏等全国に移住して地域生活を営むことが出来るため、公営住宅の優先貸し出し、賃貸家屋、アパート、マンション等の家賃の数年分の公的保障、数年分の当事者の所得保障も法制化するべきと考えます。
以上
★きょうされんの情報ページです。
●東北関東大震災 作業所・施設の情報のページ">●東北関東大震災 作業所・施設の情報のページ
作業所・施設の復旧・復興にご支援ください
【東北関東大震災】(2011.3.11 14:46 国内観測史上最大のM9.0)
3月11日(金)、きょうされんは、西村直理事長を本部長とする「東日本大震災きょうされん被災対策本部」を設置しました。
そこで、被災地の作業所・施設・事業所、障害のある人びとやその家族への支援金を呼びかけます。
皆さまのご支援・ご協力をよろしくお願いします。
■郵便振替 口座名義 きょうされん自然災害支援基金口
口座番号 00100-7-86225
★今日のつぶやき→http://twilog.org/oowakitomosan
「大脇道場」消費税増税反対キャンペーン中!
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-588.html
福祉目的なんて嘘っぱち!財政再建目的なんて嘘っぱち!
消費税は、昔も今もこれからも「法人税減税目的税」

ポチポチッと応援よろしく。
↓ ↓


- 関連記事
-
- NO.2020 被災障害者の相次ぐ急死 先ずは現地に全力で手厚くきめ細かい対策を (2011/06/17)
- NO.2059 (緊急提言) 被災障害者の避難所等での障害福祉施策の利用の扱い 利用者負担の免除等について (2011/05/14)
- NO.2028 基本合意と総合福祉法を実現させる4.21フォーラム 案内 (2011/04/14)
- NO.2026 「眼は臆病で、手は鬼になる」・・・三陸の漁師町に伝わる言葉 & お知恵をお貸しください! (2011/04/10)
- NO.2017 障害者自立支援法違憲訴訟団 が災害特別立法への意見書 (2011/04/01)
- NO,2016 東北関東大震災特別援助助成法に盛り込むべき項目・内容等 (2011/04/01)
- NO.2015 東北関東大震災に際してJDF(日本障害フォーラム)緊急要望(3月24日版) (2011/04/01)
- NO.2014 与党民主党に30をこえる障害者団体が大震災関連での緊急要請 (2011/04/01)
- NO.2013 JDF(日本障害フォーラム) 仙台市内に 被災者総合支援本部「みやぎ支援センター」開設 30日 (2011/03/31)
2011.04.01 | | Comments(3) | Trackback(9) | ・災害と障害者
