NO.2096 「一律統制」を容認しない 「君が代」起立裁判 最高裁判決 各社説を読む
3日、大阪府議会が、教師の「君が代」起立を強制する全国初の条例を維新の会の賛成多数で可決した。
罰則はないが、橋下知事は罰則を規定する条例を作ると明言している。
橋下知事のツイッター @t_ishin を読めば(初めてのぞいたが気分が悪くなった。勇気ある方はどうぞ、笑)、彼にとっては『君が代』などどうでもいい。ただトップとして組織を管理統制したいだけだということがよくわかる。「俺が一番なんだ!俺のいうことを聞け!」と言わんばかりで、「始末の悪いガキだな。権力を持っているから余計始末におえない」という印象だ。
橋下知事のねらいは、「君が代」を利用しながらトップダウンの管理支配体制を作るところにあるとみた。
そういう意味では「君が代」支持者も支持できるものではないと思うのだが・・・。
これに先立つ5月30日、「君が代」起立裁判の最高裁判決が出た。
(「裁判要旨 公立高等学校の校長が同校の教諭に対し卒業式における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し国歌を斉唱することを命じた職務命令が憲法19条に違反しないとされた事例 」)
「君が代」をめぐる問題は、白か黒かという単純なものではないようだ。
それは大阪で、自公民も反対したことにも表れている。
だからこそ強制ではなく丁寧な議論をすべきだといえる。
様々な角度から検討する必要があるが、今日のところは新聞社説を読み比べてみることに留める。
特徴は、「読売」は全面支持だが、その他の各紙は決して一律の統制を支持しているわけではないという点。
それぞれの社説には脈絡があるので省略は難しい。以下、結論部分を転載しておく。
君が代起立命令 最高裁の「合憲」判断は当然だ5(読売 社説5/31)
ん~ん。流石は「読売」の面目躍如と言いたいところですね。これはむしろ例外。妥当な判断である。この判決を機に、教育現場で長く続いている国旗・国歌を巡る処分や訴訟などの混乱に終止符を打つべきだ。
・・・
君が代の斉唱は、学校の式典などで広く慣例的に行われている。教師は生徒に国旗・国歌を尊重する態度を教え、自らその手本を示す立場にある。
職務命令について、最高裁は、「思想・良心の自由を間接的に制約する面がある」とも述べた。だが、職務命令の目的や内容が正当なものであれば、制約は許されるとして合憲の結論を導いた。
国旗掲揚と国歌斉唱は、学習指導要領が「入学式や卒業式で指導するものとする」と定めているにもかかわらず、一部の教師がこれらを拒否してきた経緯がある。
・・・
判決が指摘するように、公立学校の教師は本来、「法令や職務命令に従わなければならない」ことを自覚すべきだろう。
・・・(大阪府議会の教職員に起立・斉唱を義務づける全国初の条例案提出の)動きが出てくることもやむを得まい。
自国、他国の国旗・国歌に敬意を表すのは国際的な常識、マナーである。そのことを自然な形で子供たちに教える教育現場にしなければならない。

以下各紙はそれぞれに重要な論点を指摘し、温度差はあれ、むしろ「一律統制」に批判的のようだ。
私としては地方紙の方がより健全だという評価をしたい。
社説:君が代起立判決 現場での運用は柔軟に(毎日新聞 社説5/31)
・・・公立学校の教職員に対する君が代斉唱・起立をめぐっては、基本的人権としての19条と、「全体の奉仕者」として上司の命令に従わなければならない地方公務員の立場のどちらに重きを置くかにより、司法判断が分かれてきた。
・・・
元教諭は、「日の丸」や「君が代」が戦前の軍国主義との関係で一定の役割を果たしたと主張した。最高裁は「国歌の起立・斉唱行為は、式典における儀礼的な所作であり、職務命令は、元教諭の歴史観、世界観それ自体を否定するものではない」と、判断した。
ただし、最高裁は「君が代の起立・斉唱行為には、敬意の表明の要素を含み、思想・良心の自由に対する間接的な制約となる面があることは否定し難い」との考え方を初めて示した。その上で、職務命令をする場合は、その制約が許される程度の必要性や合理性があるかの観点から判断すべきだと述べた。
命令の目的や内容、制約のあり方によっては、認められない場合もあり得ることを示したものだ。
須藤正彦裁判官は、補足意見で「本件職務命令のような不利益処分を伴う強制が、教育現場を疑心暗鬼とさせ、無用な混乱を生じさせ、活力をそぎ萎縮させるということであれば、かえって教育の生命が失われることにもなりかねない。強制や不利益処分も可能な限り謙抑的であるべきだ」と述べた。
同感である。99年に国旗・国歌法が成立した際、過去の歴史に配慮して国旗・国歌の尊重を義務づける規定は盛り込まれなかった。教育現場の自治や裁量に委ねることが本来、望ましい姿ではないか。
・・・最高裁判決は、過度のペナルティーを認めたものではない。(大阪府の動きについては)その点を踏まえた議論が必要だ。
君が代判決―司法の務め尽くしたか (朝日新聞 社説 6/1)
「朝日」は、この件に関してはいい線いってると思う。何せ、橋下と喧嘩中だから張り切らざるを得ないだろうな。おまけに、橋下府知事の高支持率に支えられた傲慢で幼稚なツイートを紹介しておく。品性のかけらもない・・・。・・・手放し、無条件の合憲判断ではないことに留意しよう。教育行政に携わる人、そして起立条例案の採決が迫る大阪府議会の関係者は、判決の趣旨をしっかり理解してほしい。
一方で、最高裁の姿勢には疑念と失望を禁じ得ない。
原告の元教員は1度だけ起立を拒み、戒告処分を受けた。その後は現場を混乱させたくないとの思いで命令に従ったが、定年後の再雇用を認められなかった。ところが、別の理由で停職や減給などもっと重い処分を受けた教員は採用された。
一審の東京地裁は扱いの不均衡を踏まえ、裁量権の乱用があったとしたが、最高裁は職務命令と憲法の関係のみを論じ、不採用の当否は判断しなかった。結果として、原告が逆転敗訴した二審判決が確定した。
最高裁にその思いがあれば審理できるにもかかわらず、そしてそれに値する重要な問題であるのに、あえて避けたとしか思えない。このようなケースにすら救いの手を伸べず、ただ判決文の中で「慎重な配慮」を求めても説得力に欠けよう。
多数者の意向や勢いに流されず、少数者を保護する。それが司法の大切な使命だ。とりわけ思想、良心、表現、信教など精神的自由に関する分野では、厳格なチェックが求められる。
裁判所がその職務を放棄したとき、私たちの社会は多様性を失い、やがて色あせていく。
@t_ishin橋下徹 5月26日
それと朝日新聞はあの一票はなんだったんだと社説で言っていますが、府民に対して極めて失礼な話。あんたたちは府民の代表か!政治に対して批判するのはメディアの役割だけど、見出しはもっと気を付けた方が良い。以前僕に弁護士資格を返上せよとこれまた横柄な見出しを付けた新聞だからもう病気ですね
@t_ishin橋下徹 5月26日
新聞なんか、書きっぱなしで何の責任も負わない。こちらはダメなら身分を失う。廃業だ。今回の君が代起立条例は、11月の市長・知事ダブル選挙で審判を受ける。朝日新聞よ、そこまで言うなら、選挙で勝負しよう。11月まで徹底して論戦しようじゃないか。そしてこちらが負ければ、全て修正。
【社説】君が代訴訟 少数者の「心」も大事に(東京新聞 社説5/31)
君が代斉唱時の起立命令は憲法に反しないと、最高裁が断じた。大阪府では起立・斉唱を義務化する条例案が提出されたばかりだ。国旗・国歌については、おおらかに考えてもいいのではないか。
・・・
憲法一九条が保障した「思想・良心の自由」に抵触するかどうかが最大のポイントだった。最高裁は、校長が命じた起立・斉唱の行為を「慣例上の儀礼的な所作」という性質があり、「歴史観や世界観それ自体を否定するものではない」と合憲判断に導いた。
懸念されるのは、大阪府の橋下徹知事率いる地域政党が、君が代の起立・斉唱を義務付ける全国初の条例案を提出したことだ。秋には複数回の違反で懲戒免職となる条例案の成立もめざしている。
「公務員に(不起立の)自由なんてない」「三回違反すれば免職とするルールとすればいい」などと橋下知事は発言している。
教員をクビにしてまで、君が代を押しつけることに、どんな深い意味があるのか。一九九九年の国旗国歌法が成立した際には、当時の小渕恵三首相は、わざわざ「新たに義務を課すものではない」と談話を発表した。野中広務官房長官も「むしろ静かに理解されていく環境が大切だ」と述べていた。少数者の思いを理解する寛容さがほしい。
サッカーの国際試合やオリンピックなどで、大勢の国民が日の丸を振りつつ、君が代を口ずさむのは、決して誰かに強制されたものではないはずだ。
判決の補足意見では「自発的な敬愛の対象となるような環境を整えることが重要」との一文があった。自然な方がいい。「歌え、歌え」と強制される君が代は、ややもすると「裏声」になる。
国旗国歌訴訟 強制から敬愛は生まれぬ (新潟日報 社説 6/1)
・・・ 強制からは、反発やゆがんだ感情しか生まれない。締め付けの厳しい教育現場で、子どもたちの多様な価値観を育むことができるのか。憂慮される。
最高裁判決を受けて命令が乱発されたり、起立、斉唱しなかったことで安易に身分が脅かされたりすることがあってはならない。
「思想、良心の自由の重みに照らし、命令に踏み切る前に、寛容の精神の下に可能な限りの工夫と慎重な配慮が望まれる」。教育委員会などは裁判長の補足意見を重く受け止めるべきだ。
「君が代起立」 合憲 一方的な締め付け避けよ (岐阜新聞 社説 6/1)
・・・ただ日の丸や君が代をめぐっては多様な考え方がある。「侵略戦争」を思い起こす人もいれば、「国旗国歌への敬意は当然」という人もいる。補足意見は「職務命令を合憲として決着させることが必ずしも、この問題を社会的にも最終的な解決に導くことになるとはいえない」としている。
締め付けによって教育現場を萎縮させるような事態は避けたい、との思いもにじむ。大阪府議会に提出され、近く可決される見通しの「君が代起立条例案」には、そうした視点が欠けている。力ずくで起立させようという意図しか見えない。
国旗国歌判決 一律の統制に懸念も示す (山陽新聞 社説 6/1)
・・・ただし判決は、教育行政の一律の統制や処分にお墨付きを与えたとまでは言えまい。個人の歴史観や世界観に基づかない行動を求める点が「思想、良心の自由を間接的に制約する」と踏み込んだからだ。
補足意見でも2人の裁判官が「命令に踏み切る前に、可能な限りの工夫と慎重な配慮をするべきだ」「司法での決着が、問題を社会的な解決に導くとはいえない」と述べている。
戦前の軍国主義と絡んで、日の丸・君が代には今も多様な受け止め方が存在する。教育現場の混乱、萎縮を招かないような柔軟な対応が今後も必要ではないか。
大阪府では、公立学校の教職員に起立・斉唱を義務づける全国初の条例案が提出された。国旗国歌の在り方は社会の中で議論し続けねばならない。
【君が代斉唱合憲】 教育に一律はなじまない (高知新聞 社説 6/1)
・・・結論こそ「合憲」だが、職務命令が間接的でも憲法19条を制約しているとした判断の持つ意味は重い。
1999年の国旗国歌法成立時、政府は「教育現場に強要しない」とした一方で、全国の都道府県教委は指導を強化し続けている。
公務員が法令を順守するのは言をまたない。ただ日の丸や君が代は個人の思想や信条も絡み、考え方は多様だ。職務命令などで一律に統制する性質のものではないはずだ。
私たちは、教育現場に強制はなじまないと主張してきたが、合憲判決を受けてもなお、その思いを強くする。
今後一番の心配は、判決を盾に教育現場で職務命令が乱発されることだ。
むろん保護者や児童生徒が意に反して起立斉唱を強制されることはない。ただ職務命令によって教職員が一斉に同じ行動を取らざるを得なくなった時、子どもらへの影響は小さくない。
大阪府議会では教職員に起立斉唱を義務化する条例案が近く成立する見通しだ。職務命令を複数回拒めば懲戒免職とする条例案も提出されるという。
今回の判決が、条例化などの流れを加速させれば教育現場で国旗国歌について自由に意見が言えなくなる。そんな懸念は、各地の教職員の間から既に出ている。
合憲判決の一方で、裁判官の補足意見にも注目したい。国旗国歌の在り方を「強制的でなく、自発的な敬愛対象となるような環境を整えることが重要」としている。自然と国民に浸透させる大切さを説いた妥当な考え方だ。
自主、自律的であるべき教育現場にはやはり強制はなじまない。多様な意見や信条を一律に縛らず、認め合うことこそが本来の教育現場の姿だ。
[君が代起立合憲] 補足意見に注目したい (南日本新聞 社説 6/1)
・・・憲法が保障する基本的な自由の制約は、最小限にとどめなければならない。そのことは「思想、良心の自由の重みに照らし、命令に踏み切る前に、寛容の精神の下に可能な限りの工夫と慎重な配慮が望まれる」とした裁判長の補足意見でも明確だ。
別の裁判官は「国旗国歌が、強制的にではなく、自発的な敬愛の対象となるような環境を整えることが何よりも重要」と表明している。こうした補足意見に耳を傾けたい。
国旗国歌法は自民党政権下で施行されたが、義務規定や罰則規定はない。君が代斉唱で踏み絵を迫り、従わない教職員を排除するような手法は法の趣旨にそぐわないし、学校現場を息苦しくさせるばかりである。
異論はあろうが、国旗国歌は国民の間に定着した。日の丸君が代に疑問を持たない教職員も増えている。強制で混乱を招くより、子どものための議論を尽くす方が大切だろう。
[君が代起立命令] 強制は現場を暗くする (沖縄タイムス 社説 6/1)
・・・判決の中で注目すべきなのは、職務命令が思想・良心の自由を「間接的に制約する面がある」と認めている点だ。音楽教諭に対する君が代ピアノ伴奏の職務命令を合憲とした07年の最高裁判決は、そこまでは踏み込んでいない。
判決では4人の裁判官のうち3人が補足意見をつけた。現場での対応を考える上で参考になるのは、この補足意見である。
須藤正彦裁判長は「命令に踏み切る前に、寛容の精神の下に可能な限り…」と指摘し、千葉勝美裁判官は「自発的な敬愛の対象となるような環境を…」と述べている。職務命令万能主義に陥るのを戒めたものだ。
大阪府の橋下徹知事が率いる「大阪維新の会」は、教職員に君が代の起立斉唱を義務付ける条例案を府議会に提出した。
国旗国歌法が成立した時の政府の言い分は「強制はしない」ということだった。なし崩しの強制が心配だ。
日の丸・君が代問題は、その人の歴史観、国家観と密接にかかわる。このテーマになると、途端に声のオクターブが高くなり、議論が感情的になるケースが多い。静かな環境の下での、冷静な議論が求められる。
起立斉唱命令合憲 人権制約の乱用許されぬ (琉球新報 社説 6/1)
・・・最高裁判決を盾に、命令が乱発されることがあってはならない。教育現場の混乱のしわ寄せが子どもたちに及ぶのは避けるべきだ。
今回の最高裁判決で、千葉勝美裁判官は「司法が職務命令を合憲、有効として決着させることが、問題を最終的な解決へ導くことになるとはいえない」と補足意見を述べた。日の丸・君が代に対する国民の見解はさまざまだ。愛着や敬意を抱く感情は、強制や強権とは対極にある。多様な意見を尊重する民主主義の成熟を追求したい。
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2011.06.04 | | Comments(1) | Trackback(2) | ・言論・表現の自由
