NO.2089 メディアの劣化と「赤旗」のスクープ
九電のやらせメールに続き、資源エネルギー庁の国民・ネット監視・・・しんぶん赤旗のスクープが続いている。
この問題に関し、20日付ウォールストリートジャーナル日本版は、「私は特に支持政党を持たない、いわゆる無党派層である。」という金井啓子(近畿大学准教授・ジャーナリズム論)の なぜ赤旗ばかりがスクープ飛ばすのか―「やらせメール」「ネット監視」など と題するコラムを載せている。
・・・要約して紹介しようと思ったが時間がないのでポイント(主観的)を色文字にして、そのまま転載します。
きわめてまともな論評であろう。九州電力の原発に関する「やらせメール」が注目を集めた。また、資源エネルギー庁が「不適切・不正確な情報への対応」のために新聞やインターネットを監視し、原発に関する言論を収集していたことも判明した。このニュース、どちらも日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が報じたスクープである。
ジャーナリズムが帯びている役割は、国民にとって大切な問題であるのに、なぜか知らされていない出来事を世の中に知らせるというのがひとつである。そして、もうひとつ非常に大切なのが、権力の監視という役割である。
九州電力そのものは民間企業だが、原子力発電という国家的な事業を担っており、政府の方針とも密接に関わっている話である。その半国家企業が世論を誘導する「やらせメール」問題を起こしたのだ。また、資源エネルギー庁の件はまさに権力そのものに関するニュースだ。このように、権力が暴走しないよう監視を行い、暴走の危険性が高まった時は、取材を繰り返して真実を暴き出して市民に伝えるというのが、ジャーナリズムの理想的な姿であり、負わなければならない最大の責務でもある。
私は特に支持政党を持たない、いわゆる無党派層である。報道機関に関しても、各々の主義主張には関係なく幅広く目を通すようにしているし、果たすべき役割を果たしているメディアは率直に評価するよう心がけている。
さて、これだけ大きなスクープが2本、なぜ間をあまり置かずに赤旗から出てきたのか。言い方を変えると、なぜ赤旗からしかこうしたスクープが出ないのか。私はこれを単なる偶然とは見ていない。誤解を恐れずに言えば、また陳腐な言い方ではあるが、既存の大手メディアの劣化が著しいように感じるのだ。ただし、高い志とあくなき探究心でニュースを追いかけている記者を何人も現実に知っており、劣化が感じられるのはあくまでも一部の記者である。それでも、大きな責務を担うジャーナリズムに関わる人間が劣化すれば、その責務を果たせなくなり、重大な結果をもたらしかねない。
九州電力の件は、経済産業省が主催し6月26日にケーブルテレビで放送した県民向け説明番組が発端となった。その番組にやらせメールが送られていたことを赤旗が報じたのは7月2日だが、当初はあまり反響がなかった。しかし、6日の衆院予算委員会で共産党の議員がこの件について取り上げ、九州電力の真部利応社長が同日夜に記者会見で謝罪すると、急に大きな問題として他のメディアも取り上げ始めるという展開を見せた。
大手紙の中には、赤旗の報道後に九州電力に問い合わせたものの、同社に否定されるとそのまま矛を収めてしまった記者もいたと聞く。最終的には当事者の九州電力の社長が認めるような、これだけ重大な真実が控えていたにも関わらず、である。その記者が他にどんな取材をしたのかは知る由もないが、なんとかもう少し粘れなかったのだろうか。
今回のやらせメールに関しては、内部告発がきっかけとなって明るみに出た。この告発者はそもそも赤旗だけに事実を明かしたのか。それとも、他のメディアにも伝えたのだろうか。もし前者であれば、共産党や赤旗に共感を寄せていたためとも考えられなくはないが、これまでの赤旗の報道ぶりを目にし、「この新聞ならば報じてくれるのでは」という期待が高かった可能性もあるだろう。一方、後者であった場合、赤旗だけが真剣に取り組み裏取りに成功して報道し、他のメディアは関心を寄せなかったか、あるいは裏が取れなかったか、といったあたりということになるだろうか。いずれにせよ、やらせメールの依頼という重大なニュースを当初は赤旗のみが報じていたという事実だけは残るのだ。
経緯はどうあれ、結局のところ、やらせメールに関して多くのメディアが大々的に報じるようになり、玄海原発の運転再開に「待った」をかける動きに変わったことはご存じの通りである。そうした中で、もうひとつ気になるのは、赤旗のみが先行して報道していたことには口をぬぐって何も触れず、他のメディアが淡々とこのニュースを報道している点だ。私もジャーナリズムの世界に長い間身を置いていた人間なので、ある社がスクープしたネタについて、他のメディアは何とかして独自に裏を取って追随しようとするし、スクープを放った社の名前にはできるだけ触れたくないという心情も理解している。それでも、当初は大した扱いもしていなかったネタを、あたかも自分たちは最初からそのニュースの価値を評価していたかのように報道する、というのはどうにも腑に落ちないのだ。
原発をめぐっては、一部の人々がなんとか隠しおおせたいと願うようなネタはまだ尽きないはずだ。次こそは赤旗以外の社に、権力への遠慮をすることなく、また簡単に諦めることなく食い下がって、鮮やかなスクープを放って欲しいと期待している。
「朝日」を初め大手メディアは、東電初め電力会社からの莫大な宣伝広告費で収入を得ており、懐柔されいわば原発利益共同体に組み込まれている。メディアの言論・報道の自由は金でがんじがらめに縛られているのである。
最近、「東京新聞」の評価が上がっているのも、ジャーナリズムの劣化の中にあり、真実の報道と権力の監視を期待する当然のことだろう。・・・いや、私個人としては、「赤旗が一番や。みんな是非購読をお願いします!」と言いたいところだ。

さて、そのスクープの張本人がラジオで語った「なぜ?」が、2011年7月21日(木)「しんぶん赤旗」に載っている。これも、肝を色文字にして転載しておく。
「タブーなく真実を伝える「赤旗」日刊紙の役割は、共産党にとってはもちろんですが、日本社会にとっても必要じゃないかと思ってるんです。」・・・そう思います。「赤旗のネット戦略」にも大いに期待したいものだ。大手メディアでなく「赤旗」がスクープ連発はなぜ?
FMラジオ番組 小木曽編集局長語る
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「九州電力の『やらせメール』問題。さらに、佐賀県玄海町の町長の弟さんが社長をつとめる建設会社が九電から約54億円もの工事を受注していた事実…。これらのスクープを次々とモノにしたのは、いわゆる大手メディアと呼ばれる新聞社やテレビ局でもなく、日本共産党の機関紙『赤旗』だった!」
こんな紹介で、19日夜、FMラジオJ―WAVEのニュース番組「JAM THE WORLD」に、小木曽陽司・赤旗編集局長が登場。テーマはずばり「『しんぶん赤旗』とは?」。ナビゲーター(進行役)の津田大介さん(ジャーナリスト)とリポーター高橋杏美さんとのあいだで、かわされたトークは―。
赤旗」の役割 なぜ日刊紙必要か
中学時代に「しんぶん赤旗」を読んで、それが「物書き」になるきっかけになったという津田さん。「そういった『赤旗』がいま経営難になっているというのは非常に気になる。いろんなスクープをモノにしているんだけれども、そういうこと自体が知られていない。どういうメディアかお話をうかがえれば」
高橋 単純に経営が厳しいならば他の政党のように、(機関紙は)週1回とか、隔週とか、月1回とかの発行にしたらいいのかなとも思うんですが。
小木曽 週1回という点でいうと、うちには「赤旗」日曜版という独立した週刊新聞があります。100万部を超える部数を持っています。
ただ日刊紙についていいますと、単純な経営問題ではないんです。今度の「やらせメール」のようにタイムリーで、パンチの効いたスクープが威力を発揮できるのは日刊紙だからです。世界と日本は日々激しく動いているんですけれど、やはり社会を変えようという立場からそれを伝える「赤旗」日刊紙はどうしても必要だと思っているのです。
率直に言って今のマスメディアの状況の多くは「真実を伝える」、「権力を監視する」、というジャーナリズムの本来の使命を果たしているか少し疑問なところがあるんです。
そのもとでタブーなく真実を伝える「赤旗」日刊紙の役割は、共産党にとってはもちろんですが、日本社会にとっても必要じゃないかと思ってるんです。
やらせメール 「赤旗」に情報なぜ
話題は、九電の「やらせメール」問題に。津田さんは「これは日本の原子力行政のこれからに影響しかねない影響力をもつスクープだったと思う」とのべ、いきさつを詳しく聞きました。
津田 (他紙は)電力会社に遠慮して報じなかったのか、それとも完全に「赤旗」のスクープだったのか、どちらなんでしょうか?
小木曽 いくつかの新聞は情報は事前に入手して、九州電力にも確認を取っていたらしいんです。もちろん(九電側は)否定しましたけれど。しかし実際に記事にしてスクープしたのは「赤旗」だけでした。7月2日付の1面トップで「国主催の説明会 九電が“やらせ”メール」という大見出しで報じた。玄海原発の再稼働をめぐる説明会の正当性が問われる問題でした。ところがこれだけの大問題を他紙が追ってこなかったんですね。これはちょっとびっくりしました。
大手メディアがとりあげたのは、共産党の笠井亮議員の国会での追及を受け、九電の社長が謝罪した6日のことでした。
津田 この事実をつかんだのはいつだったんでしょうか?
小木曽 国による(佐賀県民への)説明会の直前に関係会社の内部資料と、関係者の証言を得ました。綿密な取材を重ねて、6月30日には九電の広報担当者に確認をしました。九電は「いっさいしておりません」という回答だったのですが、われわれは事実関係に確信を持っていましたので、報道に踏み切ったというのが経過です。
高橋 なぜ「赤旗」にそうした情報が集まってきたんですか?
小木曽 直接には福岡の共産党事務所に情報が寄せられたんです。情報を寄せられた方は、職場のなかで「九電はここまでやるのか」と話題になって、こんな行為は自分の会社のためにならないと意を決した。知人に相談したところ、共産党の事務所を紹介してくれたということです。いつでも権力と対峙(たいじ)して不正を追及してきた共産党への信頼があったからこそ、こういう内部告発があったのだと思っています。
東電会見 鋭い質問どのように
津田 「赤旗」というと最近印象的だったのが、原発事故が起こった当初、(東京電力の)記者会見の中継をネットで見ていて、鋭い質問をしていたのがフリーのジャーナリストや、海外メディアの特派員、もしくは「赤旗」の記者だった。東電側にとって厳しい質問をバシバシしていたと思うんですが、ああいった質問は、編集局長が方向性を指示されているんですか?
小木曽 あの質問に関していうと、原発担当の記者たちがいろいろ議論して会見にのぞんで質問したと聞きました。話題になったのが、3月26日の記者会見です。赤旗記者が、電源が失われた場合どうするのかを、国会で共産党の議員が質問していたのに、なぜ想定しなかったのかと質問をしたんです。東電の側からきちんとした答えがなくて、記者が何度も聞き返す。今度はフリーのジャーナリストも一緒になって答えてくださいと声をかける。いつもとちがった緊迫した記者会見になり、ネットで「赤旗GJ(グッド・ジョブ)」と話題になったようですね。
津田 「赤旗」とか共産党というのは、孤高の存在というか、あまりフリーの人との連携もしない印象があるんですけど、いまそういう新しい連携みたいな可能性もみえてきたんですかね。
小木曽 直接連携とっているわけではないのですが、やはり真実を追究するという点では一緒ですから、おのずとそういうことになるのではないでしょうか。
経営危機 どう打開するのか
後半は、「赤旗」日刊紙の“経営難”について、津田さんや高橋さんが、「赤旗」の最高部数は? 広告収入は? など率直に質問。小木曽氏は、発行部数では1970年代末から80年代はじめに日刊紙で60万部を維持していたこと、収入の大半を機関紙の売り上げが占め、部数減により日刊紙の経営が困難になっていることなどを丁寧に説明しました。
津田 (「赤旗」はこの間)大手メディアでは伝えられていないスクープの記事なんかも、出していたと思うんですが、そういったものの(部数増への)効果はなかったんですか。
小木曽 その時々に、紙面の価値を高めたり、政治を動かしたりするんですが、スクープを1回やったら、これだけの部数が増えるなどという、単純なものではないんですね。党の機関紙ですから、党員が増えてしっかりしないと、なかなか増えないというのはあるのですよ。
ただ私は、共産党はそれを乗り越える力をもっていると確信しています。いま日刊紙発行の危機を党員のみなさんや読者のみなさんに率直に訴えているんですけれど、この危機をなんとしても乗り切らないといけないと応えてくれる動きがずっと広がっています。
国民の探求に応える紙面を
津田氏は、インターネットや、デジタルなどで、ほかのメディアとの連携をふくめた展開を提唱。小木曽氏は、「研究しますので、ぜひお知恵を」と応じました。津田氏から、今後、読者獲得のためにはどんなことを考えているのかと問われ、次のようにのべました。
小木曽 やはり一番思うのは、今度の大震災・原発災害を契機にして、いま多くの国民がなにが真実だったのか、真実をみきわめたいという気持ち、日本は一体どういう国なんだということを知りたいという探求を始めていると思うのです。「赤旗」はそういうことに正面から応えられるような紙面を届けたいと思っています。

ついでに、
”やらせメール”だけではない、玄海原発再稼動に向けた経産省ぐるみの説明会番組。
「番組直前の6月17日、番組を受託した日本生産性本部が資源エネルギー庁に計画変更を申請。「再起動に係る地元了解が必要であり、県民に対し原発の安全性と必要性を訴求力のあるケーブルテレビにより放映するため」として、契約金額を697万円から1276万円に倍加するよう要請」との赤旗記事。
■2011年7月21日(木)「しんぶん赤旗」玄海原発の説明番組直前 目的を「再稼働」に変更 経産省も承認
(前略)再稼働押し付けの舞台づくりに経産省が関与していたことを示すもので、吉井氏は「番組自体が仕組まれたものだった。九電はもちろん経産省の責任は重大だ」と強調しました。
吉井氏は、同本部は財界系シンクタンクで原発の推進を掲げており、理事など役員には東京電力の勝俣恒久会長はじめ各電力会社・原発メーカー関係者が多数名を連ねる「原発利益共同体」の構成団体だと指摘しました。
「資源エネルギー庁と生産性本部の間で再稼働が画策されていたことは極めて重大だ。はじめに再稼働ありきの筋書きにもとづいてすすめられてきたことは明白だ」とただすと、海江田万里経産相は「調査する」と答弁。吉井氏は、黄川田徹復興特委員長に対しても、経産省の関与も含め調査し報告するよう求めました。
真実を伝え権力を監視するジャーナリズムの真骨頂。
今日は「赤旗」の宣伝に終始したが、詳しくは、以下をご覧ください。
■2011年7月21日(木)「しんぶん赤旗」
「本当」が知りたいあなたへ 他紙にない情報・視点が満載 「しんぶん赤旗」ここが違う
次回は、「”やらせメール”スクープが福岡発」ということに関して、説明会前日の6月25日にはすでに、福岡発のブログで話題になってツイッターで拡散していった・・・、ことについて書いてみようかな?
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2011.07.21 | | Comments(2) | Trackback(3) | ・マスコミ・テレビ・新聞Ⅱ
