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NO.2689 あまりにも無知・無理解な障害者差別判決

 あまりにも障害に対して無知・無理解な「差別裁判」である。
ちょっと時間が経過したが,この重大な判決は司法の汚点としても、今後の議論の発展のためにも記録しておかなければならない。

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 大阪地裁で、姉を殺害した発達障害の男性に対して16年の求刑以上の20年の懲役が言い渡された裁判である。
その理由が、本人に反省が見られず、家族も同居を希望せず、被告の障害に対応する社会の受け皿がない、したがって、「再犯の恐れがあり、許される限り長期間内省を深めさせることが社会秩序のためになる」というものだそうだ。

 アスペルガー症候群は、対人関係の理解が困難で反省の仕方、表現方法もが分からないのだ。
裁判員裁判だというが、彼らは障害の特性など十分に理解してなどとは到底思えない。
これなら、単なる「隔離政策」であり、「保安処分」「予防拘禁」である。

 障害があろうが自分でやらかしたことだから、自分で責任をとらせるとして、障害へのなんの配慮もなく刑務所に入れる、これこそまさに障害者差別なのである。

 刑務所が受刑者の更生や教育を丁寧に行えていないこと、知的障害者がたくさん収容され彼らに適切な援助が出来ていないことも周知の事実である。

 必要なのは、障害のある人たちも必要な支援を受けながら社会に参加し、こういう犯罪に手を染めなくても生きていけるようにすることじゃないか。もし、過ちを起こしたら、丁寧な更生・教育で立ち直りを支え、社会参加できるような受け皿や支えを作ることだ。

 こういした差別は差別の連鎖を産み出し、益々、障害のある人たちが生きづらい社会を作りかねない。

大変だろうが、弁護側は是非控訴して国民的な議論、理解への一歩にしてほしいと思う。

 
 報道は以下。
姉殺害:発達障害の被告に求刑超す懲役20年判決…大阪(毎日新聞 2012年07月30日)

 姉を殺害したとして殺人罪に問われた大東(おおひがし)一広被告(42)=大阪市平野区=の裁判員裁判で、大阪地裁(河原俊也裁判長)は30日、懲役16年の求刑を超える懲役20年を言い渡した。判決は、大東被告が広汎(こうはん)性発達障害の一種、アスペルガー症候群と認定。母親らが被告との同居を断り、被告の障害に対応できる受け皿が社会にないとして、「再犯の恐れがあり、許される限り長期間内省を深めさせることが社会秩序のためになる」と述べ、殺人罪の有期刑の上限が相当とした。

 大東被告は小学5年生で不登校となってから、自宅に引きこもる生活を送っていた。判決は、引きこもりの問題を姉のせいと思い込んだ被告が、姉に恨みを募らせた末の犯行と指摘。動機にアスペルガー症候群が影響したと認定する一方、「最終的には自分の意思で犯行に踏み切った」と述べた。また、判決は被告の態度にも言及し、「(障害の)影響があるとはいえ、十分な反省がないまま社会復帰すれば、同様の犯行に及ぶことが心配される」と指摘した。


http://www.chugoku-np.co.jp/News/Sp201207310067.html発達障害で求刑超す判決 大阪地裁「社会秩序のため」

 大阪市平野区の自宅で当時46歳の姉を刺殺したとして、殺人罪に問われた無職大東一広おおひがし・かずひろ被告(42)の裁判員裁判で、大阪地裁は30日、犯行に発達障害の影響があったと認めた上で「再犯の恐れがあり、刑務所収容が社会秩序維持に資する」として、求刑の懲役16年を上回る懲役20年の判決を言い渡した。

 判決理由で河原俊也かわはら・としや裁判長は、約30年間引きこもり状態だった被告が姉に逆恨みを募らせた動機の形成などに先天的な広汎性発達障害の一種、アスペルガー症候群の影響があったと認定した。

 その上で(1)十分に反省していない(2)親族が被告との同居を断り、社会内でアスペルガー症候群に対応できる受け皿が用意されていない―の2点から再犯の恐れがあると指摘し、「許される限り長く刑務所に収容し内省を深めさせることが社会秩序の維持にも資する」と量刑理由を説明した。

 弁護側は障害の影響で恨みの感情をコントロールできなかったとして保護観察付き執行猶予を求めたが、判決は「自分の意思で犯行に踏み切った」として、刑の減軽は考慮すべきではないと判断し、さらに検察官の求刑は軽すぎるとした。

 弁護側は、閉廷後の取材に対し「鑑定人への尋問もあり発達障害への理解が得られると思ったが、主張が認められず遺憾だ。今後控訴を検討する」と話した。

 判決によると、被告は引きこもり生活から抜け出したいという願いが実現しないのは姉のせいだと勝手に思い込み、恨みを強め、昨年7月25日昼、生活用品を自宅に届けに来た姉の腹や腕を包丁で何度も刺し殺害した。

 日本発達障害ネットワークの市川宏伸いちかわ・ひろのぶ理事長は「アスペルガー症候群の人は反省していないのではなく、言われることが分かっていないだけだ。裁判員の理解がないとこういう結果になりやすく、裁判員制度が始まるときに心配していたことが起こった」と批判した。


 以下、的確な批判の社説を記録しておく。

大阪の殺人判決 障害に無理解過ぎる(東京新聞 2012年8月4日)

 殺人罪に問われた発達障害の四十代の男に大阪地裁で懲役二十年の判決が出た。再犯の恐れが強いとして求刑を四年上回る厳罰に傾いた。“隔離優先”の発想では立ち直りへの道が閉ざされないか。

 大阪地裁での裁判員裁判で被告はアスペルガー症候群と分かった。生まれつき脳の機能に問題を抱える広汎性発達障害の一種だ。

 言葉や知能に遅れはない。だが相手の気持ちや場の空気を読み取ったり、自分の思いを表現したりするのが難しい。

 裁判官はこうした特性をしっかり理解し、裁判員に分かりやすく説明したのか大いに疑問だ。判決を見ると、障害を理由に刑を重くしたとしか考えられない。

 被告は小学五年生で不登校になり、約三十年間引きこもっていた。それを姉のせいと思い込み、恨みを募らせて包丁で殺害した。

 判決は「許される限り長く刑務所に収容し、内省を深めさせる必要がある。それが社会秩序の維持にも資する」と述べた。再犯の恐れが心配されるからだという。

 根拠としてまず「十分に反省していない」と指摘している。反省心を態度で示すのが苦手といった被告の事情をどれほど酌んだのかはっきりしない。

 さらに家族が同居を拒み、加えて「障害に対応できる受け皿が社会に用意されていない」と断じている。なぜ幼少のころから支援を欠いたまま孤立状態にあったのかを問わず、社会の無策を被告の責任に転嫁するのはおかしい。

 裁判員の市民感覚はなるべく大切にしたい。けれども、再犯をどう防ぐかという観点にとらわれ過ぎて、犯罪に見合った刑罰を越えて保安処分の色彩の濃い判決になったのは深く憂慮される。

 発達障害者の自立を支援する仕組みは一歩ずつだが、着実に整えられてきている。

 二〇〇五年に発達障害者支援法が施行され、障害を早期に見つけたり、福祉や教育、就労につなげたりする支援センターが全国にできた。刑務所を出た障害者らの社会復帰を促す地域生活定着支援センターも裾野を広げている。

 立ち直りには特性に応じて社会性を身につけたり、コミュニケーションの技能を伸ばしたりする専門的な支援が欠かせない。逆に刑務所には発達障害者の矯正の手だてはないに等しいとされる。

 親の愛情不足や悪いしつけが障害の原因という間違った考えも根強くある。判決を他山の石として正しい理解を深めたい。


発達障害と裁判/懲役で「秩序」は守れない (神戸新聞 2012/08/04 09:54)

 深く首をかしげる判決と言わざるを得ない。

 自宅で姉を刺殺したとして殺人罪に問われた男性被告に対する裁判員裁判で、大阪地裁が求刑の懲役16年を上回る懲役20年の判決を言い渡した。殺人罪の有期懲役刑の上限に当たる。

 この男性にはアスペルガー症候群という障害がある。社会性に困難を伴う「広汎性発達障害」の一つで、他人とのコミュニケーションがうまく取れないなどの傾向がある。

 判決は、男性が姉への逆恨みを募らせた背景にアスペルガー症候群の影響があったと認定した。さらに(1)十分に反省していない(2)アスペルガー症候群に対応できる受け皿が社会に用意されていない‐として再犯の恐れを指摘した。

 その上で「許される限り長期間刑務所に収容することで内省を深めさせる必要があり、そうすることが社会秩序の維持にも資する」と量刑の理由を述べた。

 本来、量刑は犯罪の軽重や情状などから総合的に判断されるべきだ。「再犯の恐れ」を根拠に長期の懲役に服させることになれば、障害に対する差別や偏見の助長につながりかねない。

 社会秩序の維持を理由にした懲役刑は「隔離政策」にならないか。

 アスペルガー症候群の人は、反省していてもそれを態度でしっかり表現することに困難を抱えるとされる。そうした障害の特徴をどこまで理解した上での判断なのか、疑わしい。

 障害がある人の受け皿整備は、社会全体で取り組むべき課題である。不十分な整備が障害者自身の責任でないのは言うまでもない。

 アスペルガー症候群などの発達障害については、療育や自立支援に向けた発達障害者支援法が2005年に施行され、相談に応じる支援センターが全国に設けられている。神戸などの地域生活定着支援センターでは、刑務所を出所した知的障害者らの支援をしている。地道な受け皿づくりはすでに始まっている。

 西宮市の六甲カウンセリング研究所の井上敏明所長は「アスペルガー症候群は長期間刑務所に入れて治まるものではなく、周囲の対応の仕方で症状が改善される」と指摘する。

 刑事罰だけでなく、発達障害者を長い目で支える受け皿整備が、社会の秩序を守ることになるはずだ。

 今回の裁判は市民が参加する裁判員裁判だっただけに、障害者への理解や支援を促す言葉がほしかった。


[発達障害と判決] 偏見を助長しかねない( 南日本新聞 8/3 付 )

 姉を殺害したとして殺人罪に問われた大阪市の男性被告の裁判員裁判で、大阪地裁は犯行に広汎性発達障害の一種であるアスペルガー症候群の影響があったと認定して、懲役16年の求刑を上回る懲役20年を言い渡した。

 検察側の求刑を上回る判決は異例である。被告が十分に反省していないことや、親族が被告との同居を断っている-の2点から再犯の恐れがあり、「許される限り長く刑務所に収容して内省を深めさせることが社会秩序の維持にも資する」という理由だ。

 犯行の原因に被告の責任とはいえない障害の影響があったと認めながら、異例の刑を言い渡すのは障害に対する偏見を助長しかねない。発達障害に詳しい専門家から「障害への偏見や無理解がある」という声が上がっているのは当然である。

 判決によると、被告は約30年間引きこもり状態だった。その状態から抜け出したいという願いが実現しないのは姉のせいだと逆恨みし、昨年7月に生活用品を自宅に届けに来た姉を刺殺した。

 アスペルガー症候群は、相手とのコミュニケーションをうまく取れず、反省の態度を表現するのが難しいといった特徴がある。言葉の発達に遅れはなく、知的レベルは高いとされる。

 弁護側が、障害の影響で恨みの感情をコントロールできなかったとして保護観察付き執行猶予を求めたのは、鑑定人への尋問もあって障害への理解が得られると考えたからだろう。

 だが、判決は「自分の意思で犯行に踏み切った」として刑の軽減は考慮すべきでないと判断した。 今回の裁判員裁判で、裁判官が障害の特徴などを十分に理解し、量刑判断の在り方も含めて裁判員に丁寧に説明したのかどうか疑問である。

 社会に受け皿が用意されていないと断言するのも、おかしい。支援の遅れは社会の問題で、本人の責任ではない。

 発達障害者支援法が2005年に施行され、各都道府県に支援センターが設置された。罪を犯した障害者についても、「地域生活定着支援センター」が開設され、保護観察所などと連携して社会福祉士らが相談や助言などにあたっている。

 弁護側は「発達障害への理解が得られると思ったが、主張が認められず遺憾だ。今後控訴を検討する」と話した。

 今回の判決を問題提起と受け止め、発達障害への理解を社会全体で深めるとともに、受け皿の拡充を図る必要がある。



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2012.08.05 | | Comments(0) | Trackback(0) | ・障害者と「犯罪」

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