NO.626 日本経団連の「消費税増税提言」を斬る!
(この記事が「NPJ お薦め ブログ」で紹介されました。 いま国民は、将来の生活に対する明確な展望を失い、国全体に閉塞感が漂っている。 また、わが国の税体系は、個人所得税や法人税といった直接税に偏重している。今後、社会保障制度を国民全体で支えるとともに、経済の活力を維持・強化していく上では、消費、所得、資産などの各面にわたってバランスのとれた税体系を確立することが求められる。 まずもって求められるのが、給付と負担の水準のあり方も含めての、社会保障制度の将来像の確立である。 消費税は、経済活動への影響が最も中立であり、景気変動による税収への影響が少ない安定的な財源である。また、特定の者に負担が集中することが無く、社会保障制度といった国民の安心・安全に係るサービスを広く国民全体で支え合うのに相応しい税目である。 2010年度、遅くとも2011年度までに、消費税率の引き上げと、中低所得者層の負担緩和に向けた所得税減税を一体的に実施すべきである。 最大の課題は、諸外国で進む法人実効税率引き下げ競争への対応である。欧州諸国では、自国企業の競争力強化や企業立地促進のために法人実効税率の引き下げが相次いでおり、いまやEU平均で28%とわが国(約40%)との税率差は10%以上にも及んでいる。この税率差は、わが国企業の競争力のみならず、ビジネス拠点としての日本の魅力を著しく低下させており、今後のわが国の重要課題である対内投資促進の大きな障害となっている。 法人税改革は消費税拡充と共に早急に実現しなければならない。しかし、持続可能な税体系確立のために、当面の税制抜本改革で最優先すべき課題は、2011年度までの消費税の着実な引き上げである点は、改めて明らかにしておきたい。)
麻生太郎首相は、消費税を2011年度から引き上げ2015年までに10%にすることを明言している。
(今日はかなり長くなりますが、気合入れて書きましたので、是非最後まで読んで欲しいです。リンクにも飛んで・・・。斬れるかどうかは余り自信ないですが・・・(汗)
一方、日本経団連は社会保障財源のためには消費税率を最低でも10%にあげるよう求めた。
時期は2010年度、遅くても2011年度までに、と。さらにあつかましくも、法人税の10%引き下げも求めている。
今日は経団連の言い分をざっと見てみて、批判を加えてみよう。
税・財政・社会保障制度の一体改革に関する提言(日本経団連)
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2008/068/index.html
以下、緑の文字が提言の引用です。
そうだ。大企業応援の自公政治で、大企業は戦後2番目に長く続いた景気なんていっても、国民は所得が減り、社会保障も削られてきたから・・・。貧困と格差で、生活不安が大きくなってきている。
本来、生活の安心の基盤となるべき社会保障制度は、様々な綻びや非効率が顕在化し、逆に、国民の生活不安を呼び起こす要因となってしまっている。
直接税に偏りすぎているから、間接税=消費税を増やさないかんと・・・。消費税の導入は、「直間比率の見直し」から始まった。
ごまかしによる実に一面的で勝手な理屈。北欧が高負担なんていえないだろう。日本の方が給付もあわせてみると「純負担」は高い。「高負担低福祉」だ。
欧米先進諸国をみると、一方には、北欧諸国や一部の欧州主要国に代表される「高福祉・高負担」型の経済社会モデルがあり、他方には、米国に象徴される自助努力中心のモデルが存在する。
これに対し、かねてより経団連としては、セーフティネットに綻びが生じないように目配りをしつつ、今後高齢化が進展する中でも持続可能な、経済の身の丈にあった社会保障制度を構築すべきであると主張してきた。こうした観点から、現在のイギリスやドイツに見られるような、「中福祉・中負担」型の国家が、今後のわが国の目指すべき道と考えられる。
こちらを参照→スウェーデンと日本の国民負担の比較
消費税を基幹的な税にするのが狙い!
さらに、国内消費に対する課税であり、基本的に輸出コストに反映されないため、国際競争力低下の懸念が無く、グローバル化によって成長を図るわが国の将来像に最も適した税と言える。国際的な比較においても、わが国において拡充の余地がある税源と言える。
このような理由から、今後の税制改革において、消費税をわが国の最も基幹的な税目として位置づけていくべきである。
何が中立的なものか。貧乏人ほど負担が重い消費税は、再配分機能を壊す最悪の不公平・反福祉税だ。
国際競争力を錦の御旗にして。
「輸出コストに反映されない」・・・輸出大企業にとっては、消費税は負担しなくていいから・・・とあけすけに言う!
今の政治は「国際競争力」と言われると、財界にものが言えないようになっている(共産党以外は)。あの「蟹工船」の時代、ひどい働かされ方はすべて「大日本帝国のため」だった。その代わりが国際競争力だ。国際競争力が落ち企業が弱くなると国民生活もダメになると脅す。
そんなことあるもんか!
「トリクルダウン」は成り立たない(村野瀬玲奈の秘書課広報室)
国際競争力のためならどんなことでも我慢しろという、同じやり方だ。
で、財政が大変だから増税しようとなると、一番負担能力を持っている大企業は最初から外して、取りやすい消費税増税だとなる。昔から資本の論理はワンパターン!国際競争力という言葉にだまされたらいかんばい!
そもそも消費税は、「みんなが負担する」税などではない。
個人はもちろん、中小企業などは身銭を切ってまでも負担させられるが、大企業はゆうゆうと価格に転嫁するので、一切の負担がないわけだ。
もし社会保険料を消費税に置き換えられれば、大企業は社会保険料負担もなくなり一石二鳥の大もうけということになる。そこが大企業の狙いでもある。そんな負担逃れは許さんばい!
こちらを参照→NO.473 消費税は「みんなで負担する税」ではありません。
国際的な比較をするなら、「拡充の余地」どころか、消費税はもっと税率を下げなければならない。
こちらを参照→NO.476 福祉のためなら、ヨーロッパ並みに消費税を上げてもいい?
「2010年度、遅くとも2011年度までに、・・・最低でも5%の引き上げが必要と考えられる。」
さすがに国民の反発が怖いようで、これをを抑えるために、所得税減税や軽減税率導入を付録にはしているが・・・。
・・・・・
年金をはじめとする社会保障制度や少子化対策、所得税減税や軽減税率導入、地域活性化、さらに基礎的財政収支の黒字化を見据えると、最低でも5%の引き上げが必要と考えられる。
・・・・・
消費税率の引き上げに際し、欧州諸国にも見られるとおり、基礎的な食料品等に関しては極力品目を限定して軽減税率(現行の税率5%を維持)の適用を検討すべきであろう。なお、制度の複雑化や納税者、執行当局双方におけるコンプライアンスコストの増大、税収の減少などを考慮すれば、消費税率は、本来極力、単一税率を維持することが望ましい。軽減税率導入の目的はあくまで、生活必需品における負担増大の回避である。
・・・・・
中低所得者層(概ね年収500万円以下の世帯)に対し、5年程度を期限として消費税率1%相当程度の規模の大胆な定額減税(例えば、世帯当たり10万円程度)を行う。その際、所得税から控除しきれない税額に関しては、個人住民税から控除する措置が必要である。
大幅な所得税減税を行うことで、景気刺激策とするとともに、消費税引上げによる負担の緩和を図るべきである。
軽減税率を適用しようと、ご丁寧に欧州諸国の例を持ち出している。はあ?今より軽減すると言う話ではなく10%まではしないと言うだけの話だよ!
欧州を言うなら・・・、イギリスでは消費税はほとんど払わなくても暮らしていけるんだよ。
イギリスでは付加価値税というが、その標準税率は、17・5%。実に日本の三倍以上。しかし、消費税の悪い点(逆進性・・・低所得者ほど税負担が重くなる)を和らげるために、食料品のみならず生活必需品には消費税の軽減税率が適用されている。
こちらを参照→NO.518 イギリスは消費税率17.5%なのに、ほとんど払わなくても暮らしていけるって?
「消費税率は、本来極力、単一税率を維持することが望ましい。」・・・ちゃんと本音が書いてあるじゃないか!
所得税減税にいたっては、たったの1%程度で5年間。要するに「消費税引上げによる負担の緩和を図る」とは、のどもとを通るときは「熱過ぎると飲み込めなくてヤバイ!」から、ちょっと温めにして飲み込ませようといっているだけのこと。
この「世帯あたり10万円程度のの定額減税」・・・今、創価学会員が「公明党に入れたら5万円出るとよ」と言って回っているが、そういう風に利用するんじゃないか?
どこまであつかましいんだろう!
国際的な整合性を踏まえ、法人実効税率を早急に引き下げていくことは、税制抜本改革の主要課題である。
「国際的整合性」をいうなら、法人税のみならず社会保険料も含めた公費負担を見れば、日本の企業はドケチ!錦の御旗「国際競争力」を振り回し、「企業立地」が良くないと企業が海外へ逃げて行き、日本経済がガタガタになるぞと脅す。そんなことは大ウソです。
「企業の税・社会保険料負担の国際比較」は、
こちらをご覧ください→NO.517 企業に負担をかけると海外に逃げる?
国内総生産(GDP)比でみると、日本はフランスの六割(経済産業省の資料)程度しか負担していないのだ。国際競争というなら、同じ条件でフェアにやれ!アンフェアなのは競争とは言わないのだ!
「社会保障財源として消費税増税を」と、色々とごまかそうとしても、法人税を減税し社会保障負担から逃げるためというのが真の目的だ。
もっとアコギにもうけるためには「消費税増税」が、財界・大企業にとっては一番なのだ。
その証拠はここに→NO.507 トリックくっきり・・・消費税増税目的。
消費税導入以来19年間で、国民が負担した消費税総額は累計で188兆円。
一方、企業の法人税収は、同じ期間で159兆円減った。更に同じ期間の軍事費増は20兆円。
この間、社会保障が良くなったことがあるか?
消費税は、始まってからずっと、社会保障には使われずに、大企業減税の穴埋めと軍事費に使われてきたことが、数字にきれいに出ているじゃないか。
派遣労働や長時間ただ働きで絞られた上に、なんで大企業の税金の肩代わりをしなければならないのか!
下請けで買い叩かれた上に、なんで中小・零細企業が大企業の税金の肩代わりをしなきゃならんのや!
わずかな年金暮らしのお年寄りが、医療費はどんどん取られながら、なんで大企業の税金の面倒をみてやらないかんとや!
所得のない障害者が、子どもが・・・!
総選挙。
消費税増税に反対するなら、震源地=財界・大企業にきちんとモノが言える政党を躍進させることが一番だ。
財界も、輸出型大企業を抱える日本経団連と、中小企業が多い商工会議所では当面の考えは違うようですね。
社会保障財源 経団連「消費税10%」、日商は増税反対
http://www.asahi.com/politics/update/1002/TKY200810020293.html
日本経団連の「提言概要」は、”続きを読む”にあります。
「大脇道場」消費税増税反対キャンペーン中!http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-588.html

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税・財政・社会保障制度の一体改革に関する提言概要
~安心で活力ある経済社会の実現に向けて~ 2008年10月2日(社)日本経済団体連合会
1.はじめに
○国民は将来の生活に対する明確な展望を失い、国全体に閉塞感が漂っている
○まずは、一刻も早く景気を回復軌道に戻すため、緊急総合対策等を着実に実行
○同時に、目指すべき将来像を明確に示し、中長期的観点から、税・財政・社会保障制度の全体を通した歳出構造の改革と税体系の見直しを同時かつ一体的に推進する必要
2.わが国を取り巻く環境変化と課題
(1)安心できる社会保障制度の確立と抜本的少子化対策の実行
①社会保障制度の機能強化と持続可能性確立
○中長期的な持続可能性確保と経済活力の向上に向け制度の根本的見直しが必要
○社会保障制度の綻びや不備に対し、緊急的な対応を行う必要
②抜本的な少子化対策の実行
(2)財政の健全性確保
○基礎的財政収支の黒字化は内外への国際公約であり必ず達成
○政府債務残高対GDP比の安定的な低下が必要
○行政の合理化、無駄の排除の徹底
(3)経済の成長力強化
○持続的成長なくして生活水準の向上は不可能
○骨太の成長戦略の実行が必要
・魅力あるビジネスインフラの整備、内外投資促進(法人実効税率10%程度の引き下げ)
・「日本型イノベーション」の推進
・海外の人材の受け入れ
・EPA、FTA締結の加速
・最先端の電子行政・電子社会の実現
・道州制の導入
3.税・財政・社会保障制度の一体改革の推進
(1)社会保障制度の将来像の確立
○「中福祉・中負担」型国家を目指すべき
・基礎年金の税方式化への移行
・高齢者医療・介護への公費投入割合の拡充
・電子行政実現のなかでの社会保障番号の導入
○増大する社会保障費用を消費税で賄うことが不可欠
・中長期的には欧州主要国並みの水準が不可避
(2)税体系の抜本的改革
○国・地方の安定的な財政基盤の確立。
○税収構造を消費・所得・資産の各課税のバランスが取れた体系へ改革
(3)当面の一体改革の具体策
社会保障制度の綻び解消や基礎年金の安定的財源確保、基礎的財政収支の黒字化などに向け、2009年度から2011年度の3年間を第一フェーズと位置づけた、税・財政・社会保障の改革を一体的かつ連続的に措置すべき(なお、実施に当たっては、経済情勢や歳出入への影響に注意し、柔軟かつ機動的な判断が必要)
①2009年度(経済活性化、社会保障制度の機能強化、少子化対策)
()停滞する経済情勢の打破
○内需拡大の刺激策として住宅取得促進税制の拡充
○省エネ投資、環境対応型製品普及のための税制措置など
()社会保障制度の機能強化
○基礎年金の国庫負担割合の引き上げの実施
○医療・介護分野への緊急対応
()子育て減税をはじめとした少子化対策の拡充
○中低所得者層の子育て世帯への減税
○保育サービスの拡充のための緊急的歳出
②2010年度、遅くとも2011年度(大胆な所得税減税と消費税率引き上げの一体的な実施)
()中低所得者層を対象とした、消費税率1%相当規模(例えば、世帯当たり10万円程度)の大な定額減税(5年程度の時限措置)の実施
()社会保障制度や少子化対策、基礎的財政収支の黒字化に向け、消費税率を5%引き上げ10%へ
地方の財源確保と活性化に資するよう、国7%、地方3%の配分へ
基礎的な食料品等に関しては軽減税率(現行の5%を維持)を検討
()社会保障番号を活用した納税者番号制度の導入
③国際的整合性を踏まえた法人実効税率の引き下げ
諸外国で進む法人実効税率引き下げ競争への対応はわが国経済成長のための主要課題
○地方法人特別税の廃止、地方法人二税の見直しなど
○欠損法人による適切な応益負担
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2008.10.04 | | Comments(10) | Trackback(24) | ・消費税・財源・税Ⅰ
