NO.68 修学旅行シーズンだそうで・・・母の涙を思い出す。
夕方、小学校に豆腐を売りに行ったT君が、「修学旅行で先生が少なくて、売れ残った」と。
そうかそういう頃か。
私の小6の修学旅行は、鹿児島、霧島に3泊4日だった。船で種子島から鹿児島に出て1泊・・・だから、島の修学旅行はこうなる。
ちなみに、中学のときは、九州一州の5泊6日だった。
初めて船で島を出て、霧島の山々を見たり、動物園に行ったり、デパートにいったり・・・それなりに・・・。
一駅だけ汽車にも乗った。
地図ではあんなに大きく線路が書かれており、テレビで観る鉄道は、複線で列車もどんどん行きかうのに、単線の鹿児島本線を見て「えー、こんなものか」と思ったものだった。
島の最南端の小学校に帰り着いたのは、午後4時前。
子どもたちを初めて旅に出した母親たちが迎えに来ていた。
それぞれに土産を見せたり、再会が新鮮だったように思う。
母は「土産は?」と聞いてきた。
「なにも・・・」
私はそういって、千円を母に差し出した。
そのときの小遣いは、千円以下という決まりだった。
「おまえ、1円も使わなかったのか」と、母はびっくりして「ガムもチョコレートも食べなかったのか?」と聞いてきた。
「旅館のメシを、腹いっぱい食ったから、欲しくなかった」と答えた。
切ながる母に、汽車で乗り合わせたおばさんにガムをもらったことは伝えた。
そして、「小遣いは千円、きっかり使った。」と、グローブを見せた。
実は、出発前に「よく手伝ってくれるから、欲しいものを買っていい」といわれ
「グローブが欲しい」といったら、千円を持たせてくれていたのだ。
最後の夜、山形屋での買い物があり、もう少し安いものもあったのだが、思い切って満額の買い物をしてしまった。
ドキドキしたのを覚えている。
グローブなんか持ってる子は、何人もいなかった頃・・・。
「そのお金は別と言ったでしょ。お前は馬鹿な子だね」
母は、ほろりと涙を落とした。
「じいちゃん達にも、元気で行って来たよと土産でも買ってくるものよ。人が、おいしいおやつ食べてたとき、どうしてたの。」
と言い、母は、涙を拭きながら、町の雑貨屋でお土産のお菓子を選んでいた。
おいしいおやつが欲しくなかったのじゃないかもしれない、
うちは貧乏だからと、特別に無理をしたわけでもない、
グローブだけで十分嬉しかったのだ。
母の涙は、決して自分の行いを、悲しがってのものではない、
そう思うと、ちょっと嬉しかったのを、今でも覚えている。
修学旅行。
中学校のときの小遣いは5千円だった。
半分ほど使い、じいちゃん達にもお土産を買った。
二度と、同じ涙を、母には落とさせなかった。
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2007.09.20 | | Comments(2) | Trackback(0) | ・自画像・自分史断片
