NO.642 ノーベル賞4人受賞の快挙の教訓は?
私の近い知人に「益川さんは、大学時代の同級生だ。それがどうしたと言われてもどうもしないが・・・」という人がいる。「どんな人でしたか?」なんて聞いてみれば、話のネタにはなったかも知れないが・・・。
我々凡人には、ノーベル賞の何が凄いのかはよくわからない。
平和賞ぐらいは評価できるが(キッシンジャーや佐藤栄作が妥当かどうかというレベルでは)、その他の分野は・・・。 「物質になぜ質量があるのか」、「宇宙はどのようにできたのか」・・・「対称性が自発的に破れる」に至ってはチンプンカンプンだ。しかし、一度に4人とはやはり凄いことだろう。
「一芸に秀でる者は・・・」というが、スポーツの世界でも職人の世界でもいろんな分野の優れた人というものは、その見識や人格においても優れている方が多い。
益川さんは、幼少期の戦争体験を原点に、反戦平和を貫き、京都大学時代は教職員組合の書記長をされ退官まで熱心に活動を支えられたそうだ。
ノーベル物理学賞:反戦語る気骨の平和主義者…益川さん(毎日)
http://mainichi.jp/select/wadai/news/20081008k0000e040018000c.html
ノーベル物理学賞を受賞した益川敏英・京都産業大教授(68)。穏やかでちゃめっ気のある益川さんだが、「反戦」を語る気骨の平和主義者でもある。
作家の大江健三郎さんらが作った「九条の会」に連動し、05年3月、「『九条の会』のアピールを広げる科学者・研究者の会」が発足した。益川さんは呼びかけ人の1人だ。同時期に誕生したNPO法人「京都自由大学」では初代学長に就任し、市民の中に飛び込んで平和を語った。
原点は幼少期の体験にある。益川さんは名古屋市に生まれた。小学校入学前、第二次世界大戦を体験し、焼夷(しょうい)弾が自宅の屋根を突き抜けた。「不発だったが、周囲はみな燃えた。両親はリヤカーに荷物を積んで逃げまどった。あの思いを子孫にさせたくない」と言う。
05年、自民党が憲法改正に向けた要綱をまとめた。中国で反日デモが相次ぎ、JR福知山線事故が発生した。平和と命の重みが揺らいだ。当時、益川さんは「小中学生は憲法9条を読んで自衛隊を海外に派遣できるなんて考えない。だが、政府は自衛隊をイラクに派遣し、更に自衛隊の活動範囲を広げるために改憲を目指す。日本を戦争のできる国にしたいわけだ。僕はそんな流れを許容できない」と猛然と語った。
1955年、アインシュタインら科学者11人が核兵器廃絶を求め「ラッセル・アインシュタイン宣言」に署名した。その1人が益川さんが尊敬する日本人初のノーベル賞受賞者、湯川秀樹博士だ。「湯川先生の原動力は核で人類が滅ぶ恐怖だったと思う。僕はより身近に、一人一人の今の生活を守りたい。その実現に、戦争はプラスですかと問いたい。殺されたって戦争は嫌だ。もっと嫌なのは自分が殺す側に回ることだ」と強調する。
受賞から一夜明け、「専門外の社会的問題も考えなければいい科学者になれない。僕たちはそう学んできた」と力を込めた。
小林さんと益川さんは、日本人の誇りだ、あたかも日本の教育や科学政策の成果だと言いたげにはしゃぐ塩谷文化相に、ピシャリと釘をさしたのは痛快だ。
ノーベル賞:物理学賞・小林さんと益川さん、文科相表敬
http://mainichi.jp/select/science/news/20081010dde041040060000c.html
塩谷文科相が「政治、経済で暗い話が続く中、(受賞で)国民は大喜びした。お礼申し上げます」とたたえた。
益川さんは「受賞した業績は30年前のもの。この先も安泰かというと、必ずしもそうじゃない」と切り出し、「選択式の試験問題で、教師は『知らない問題はパスしろ』と指導し、考えない人を育てている」と、熱弁を振るった。小林さんも「今の教科書には最低限のことしか書いてない。全体のストーリーが見えない」と加勢し、塩谷文科相はたじたじだった。
益川さんは教育について次のような発言もされている。
「(日本の教育は)大変危機的な状況にあります。考えない子供を一生懸命製造している。大学受験の厳しさが非常に大きな影響を与えています。日本福祉大の先生が「教育汚染」という言葉を使っていますが、私も今の教育は(筋道を立てて考える力を奪うという意味で)、子供を汚染していると思います。」
さらに、日本の科学研究が実利・実用を重視する傾向が強まっていることに対して。
「東北のある湾でカキを養殖していたが、あるときから生産性が落ちてきた。調べてみると湾に流れ込む川の上流で開発が進み、栄養が流れ込まなくなっていたという。科学も同じで、上流(基礎研究)から栄養が流れ込まなくなると大変なことになる。そのことを為政者は注意してほしい」
「(基礎研究予算が少ないという)お金の問題もあるが、それよりも精神構造が問題だ。大学でもベンチャービジネスばかりに目がいくような体制はよくない。基礎科学に十分関心がいく社会であってほしい」
小林さんも、
「日本では基礎研究はどちらかといえば、ないがしろにされていると思う。物理のように日本人が世界的に活躍している分野でも、応用に近いものが多い印象があり、考え直すべきではないか。」と。
基礎科学研究への支援を
純粋に知的な好奇心から出発した自然の謎を探究するさまざまな基礎研究は、長い目でみれば、生産や医療、生活に役立つ新しい技術をうみだすことにもつながって来た。
しかし、基礎研究に対する国の支援はどうなっているか。
自民党政治の「構造改革」路線は、「国際競争力」を高めるとしてすぐに経済効果のでる研究に重点投資し、研究者を目先の業績競争ばかりに駆り立てた。
その結果、研究現場ではじっくりと長期的視野で研究する環境が弱められ、国立大学法人では4年間で602億円もの予算削減によって、研究費が底をつく事態にもなっている。民間資金も基礎研究には冷たい。
そうした中で、若い研究者たちは博士になっても安定した研究職につけず、ポスドクなどの非正規雇用、「高学歴ワーキングプア」になり、研究への夢を奪われている。
日本学術会議は、こうした事態打開のために、政府に「基礎研究を推進する基盤は大きく揺らぎ、危機的といえる状況」であると警告し、「早急な対策を講じること」を求めた。
益川さんは「受賞した業績は30年前のもの。この先も安泰かというと、必ずしもそうじゃない」と、基礎研究軽視に警鐘を鳴らしている。
塩谷文科相の「国民は大喜びした。お礼申し上げます」という言葉には、個人の努力の成果を「国家の成果・誇り」にせんとする根性が見え隠れしている。その言葉が本物なら、4人の快挙から教訓を学び、教育や科学行政を改めるべきではないだろうか。
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ノーベル賞の快挙に学び、教育・科学行政を見直すべきではないか!
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2008.10.13 | | Comments(2) | Trackback(5) | ・教育問題
