NO.682 制服組の暴走(言論によるクーデター)は、政府の任命と監督責任。
週明け国会の大きな争点になるだろう。
2日の各誌は、全国紙地方紙とも社説でこの問題を扱っていたようだ。
背景に日本政治の保守化と中国紙 侵略正当化論文で 東京新聞 11/2
空幕長更迭 見識を疑う論文だ 徳島新聞 社説 11/2
【空幕長更迭】 政治の責任も重い 高知新聞 社説 11/2
航空幕僚長更迭 任命責任が問われる事態だ 熊本日日新聞 社説 11/2
更迭の空幕長 侵略美化 就任前から 隊内誌に論文
政府の任命責任重大 赤旗 11/2
空幕長更迭―ぞっとする自衛官の暴走 朝日新聞 社説 11/2
空幕長更迭 トップがゆがんだ歴史観とは 毎日新聞 社説 11/2
空幕長更迭 首相の認識も聞きたい 東京新聞 社説 11/2
(NPJより拝借)
「論文の歴史観は空幕長としての見識を疑わせる。」(徳島)
「こんなゆがんだ考えの持ち主が、こともあろうに自衛隊組織のトップにいたとは。驚き、あきれ、そして心胆が寒くなるような事件である。」(朝日)
「「政府がただちに更迭を決断したのは当然である。
こうした認識を公表して悪びれない人物がなぜ空自の最高幹部に上り詰めたのか。大いに疑問である。」(毎日)
「侵略を正当化する偏った歴史観を持つ人物が空自トップを務めていた。論文にまでしたのは確信的な行為だ。更迭は当然だが内外の信頼を損ねた。最高指揮権を持つ首相の歴史認識を聞いておきたい。」(東京)

批判的な論調の中で異例なのが産経。
空自トップ更迭 歴史観封じてはならない 産経新聞 主張 11/2
「産経」らしい「闊達さ」ではある。・・・だが第一線で国の防衛の指揮に当たる空自トップを一編の論文やその歴史観を理由に、何の弁明の機会も与えぬまま更迭した政府の姿勢も極めて異常である。疑問だと言わざるを得ない。
・・・ だが、談話はあくまで政府の歴史への「見解」であって「政策」ではない。しかも、侵略か否かなどをめぐってさまざまな対立意見がある中で、綿密な史実の検証や論議を経たものではなく、近隣諸国へ配慮を優先した極めて政治的なものだった。
・・・政府としては、参院での採決の時期が微妙な段階を迎えているテロ特措法や、来月に予定されている日中韓首脳会談への影響を最小限に抑えるため、処分を急いだとしか思えない。
テロ特措法の早期成立も中国や韓国との関係も重要である。しかし、そのために個人の自由な歴史観まで抹殺するのであれば、「言論封じ」として、将来に禍根を残すことになる。
むしろ今、政府がやるべきことは「村山談話」の中身を含め、歴史についての自由闊達(かったつ)な議論を行い、必要があれば見解を見直すということである。
問題の論文は、アパグループ第1回「真の近現代史観」懸賞論文 受賞者発表にある「日本は侵略国家であったのか」 田母神俊雄。
論文というには余りにもお粗末な、文献も論証もない高校生レベルの「感想文」(高校生に失礼かも?)のようなもの。以下がその一部。ここでは妄言を「論証」するために文献紹介もあるにはあるが・・・。
1928 年の張作霖列車爆破事件も関東軍の仕業であると長い間言わ
れてきたが、近年ではソ連情報機関の資料が発掘され、少なくとも日
本軍がやったとは断定できなくなった。「マオ( 誰も知らなかった毛沢
東)( ユン・チアン、講談社)」、「黄文雄の大東亜戦争肯定論( 黄文雄、
ワック出版)」及び「日本よ、「歴史力」を磨け( 櫻井よしこ編、文藝
春秋)」などによると、最近ではコミンテルンの仕業という説が極めて
有力になってきている。・・・・もし日本が侵略国家であったというのなら
ば、当時の列強といわれる国で侵略国家でなかった国はどこかと問い
たい。よその国がやったから日本もやっていいということにはならな
いが、日本だけが侵略国家だといわれる筋合いもない。
田母神氏はこの「論文」の中で、侵略戦争の責任を日本に押し付けたままでは「集団的自衛権も行使できない」と主張している。事実を曲げてまで過去の戦争への反省を投げ捨てるのは、憲法を踏みにじってでもアメリカとともに海外で戦争するためだと言っているのだ。
12月8日に受賞者の表彰式をするらしい。12月8日といえば「パールハーバー」、日本海軍が真珠湾に奇襲をかけ、太平洋戦争が始まった日。・・・懸賞の意図が透けて見えてくる。
ホテルには泊まることはほとんどないけど、アパホテルには泊まらないほうがいいでしょう。
更迭の空幕長
侵略美化 就任前から
隊内誌に論文 政府の任命責任重大(赤旗)より。
「我が国が侵略国家だったというのは濡衣(ぬれぎぬ)」などと、かつての日本の侵略戦争を美化する論文を執筆し、空幕長を更迭された田母神(たもがみ)俊雄氏が、空幕長就任前から同様の侵略戦争美化論文を航空自衛隊の隊内誌に発表していたことが一日までに分かりました。
同氏は、安倍内閣時の2007年3月に閣議で了承されて空幕長に就任しました。麻生太郎首相は「(論文は)個人的に出した」ものだと釈明しますが、こういう人物を任命した自公政権の責任は避けられません。
論文が掲載されていたのは、『鵬友』という隊内誌(隔月刊)。「鵬友発行委員会」と「航空自衛隊幹部学校幹部会」が編・発行しています。
田母神氏が統合幕僚学校長時代の03年7月号から04年9月号まで4回にわたって「航空自衛隊を元気にする10の提言」を掲載。「東京裁判は誤りであった」「南京大虐殺があったと思い込まされている」などと、侵略の事実さえ否定。日本の占領地統治を「慈愛に満ちたもの」などと美化しています。
また、扶桑社の『新しい歴史教科書』を「歓迎」し、「自衛隊にも国の機関として国民が正しい歴史観を持つためにやれることがあるのではないか」と主張。「総理大臣の8月15日における靖国参拝も可能になるであろうことを期待している」と求めています。
また空幕長就任後の07年5月号には、「日本人としての誇りを持とう」という論文を寄稿。この中で「日本は朝鮮半島や中国を侵略し残虐の限りを尽くした」ことについて「ウソ、捏造(ねつぞう)の類(たぐい)」と、事実を全面否定。「コミンテルン(共産主義インタナショナル)に動かされているアメリカ」によって「日本は日米戦争に追い込まれていく」という妄想を展開しています。
田母神氏は、論文が陸自や海自でも配布されていることを自慢しており、防衛省・自衛隊内では周知の事実だったとみられます。それを黙認してきた防衛省・自衛隊の体質とともに、発言を問題視せず防衛相に「助言」する空幕長に任命した政府の責任は重大です。(以上引用)
こういうゆがんだ妄想でしか元気が出ない自衛隊というものがどういうものかは想像するに値するだろう。
田母神氏が、自衛隊のイラク派兵を違憲と判断した名古屋高裁判決を「そんなの関係ねえ」と非難した時、石破防衛相(当時)は、「隊員を思う真摯(しんし)な気持ち」と田母神氏を擁護した。
シビリアンコントロール(文民統制)どころか、こうした政府が甘やかしてきたから、制服組がのぼせあがり、暴走するのだ。「言論による」とはいえ、これは危険極まりないクーデターだ。
更迭で終わりではない。政府の任命責任と監督責任が徹底的に問われなければならない。
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今日もありがとうございます。
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2008.11.03 | | Comments(3) | Trackback(11) | ・米軍・自衛隊・安保Ⅰ
