NO.793 「おめでたい人」はどちら?
「友さんは、なんとおめでたい人なのでしょうか。」・・・おめでたい人になりたいです。褒め言葉ならうれしい限りだが・・・。そういうふうに言われるのなら、・・・その言葉をそのままお返しするしか無いでしょうね。
ブログでの論争は往々にして不毛なものですが、公にされた言論には私的なブログと言えども反論の権利はあると言うのが私の立場です。そこで、NO.789 「カナダde日本語」美爾依さん,それはいただけません。というエントリーを立てた。まあ、無視してもいいのだったが、多くの読者を持つその影響は無視できない害悪だと思ったので。護憲とかリベラルと目される(こんなカンバンはどうでもいいのだが)ブログで、大企業を免罪する論調はどうしても一言申し上げておく必要を感じた次第だった。
こちらのコメント欄にも反論はありましたが、あちらのコメント欄で以下のような反論がしたためられている。
友さん、
友サンのブログのコメント欄にも書きましたが、こちらでも、もう一度反論させていただきます。
>今必要なのは、大企業の雇用における社会的責任を果たさせること、正規労働者に当たっても然り。
まず、社会的責任を果たさせるとは、どんな意味ですか。これまで必要以上に低賃金で働かせていた分を労働者に戻すということでしょうか。もしそうだったら、これまで好景気のときこそ大企業の利益を労働者に還元させるべきでしたが、この不況の中で、いまさら社会的責任を果たせと迫るのは無理でしょう。
>正当な賃金を支払わせることは、政治の力でなすべきことです。
もちろん、これは正論でしょうが、なぜいまさら?日本では、最低賃金が世界の平均に比べても低いので、もっと上げるようにずっと前から言ってますが、ぜんぜん上がりませんね。
>日本の大企業は、世界にも例のない横暴ぶりで、労働者を絞りに絞り膨大な利益を溜め込んでいます。これを吐き出させるために政治が力を発揮するときです。
それはわかっています。共産党もそのために長い間最低賃金を上げるように訴えていますよね。それでも、全く何も変わらないばかりか、状況は悪化するばかりです。
>麻生政権が曲がりなりにも動き出したことはこの間の、国民の闘いと世論の力であり、政党で言えば共産党の奮闘の成果でしょう。
それを監視し、実効あるものにさせることこそが今大切だと思います。
すでに雇われている人の賃金をあげることが効果を発するとは思いません。賃金は今のままでも、雇用機会をもっと増やして、失業者にこそ手を差し伸べるべきでしょう。麻生が動き出したといっても、今もし賃金を上げれば、それを理由に又、解雇される人が増えるだけです。これが社会にとって何の役に立つと言うのですか。大企業はおかげで人員整理ができると喜ぶでしょう。
賃金を上げようとしたことで、麻生政権が動き出したという友さんは、なんとおめでたい人なのでしょうか。
国民の世論が政治を動かす
私の論点は、「非正規労働者の雇用安定、賃上げ、新卒予定者の採用内定の取り消し対策、・・・いずれも急を要する課題だ。どこまで大企業に迫れるかは疑問だが、そこまで動かざるをえないところまで世論が追い込んでいるのだ。私は、大いにやってくれ!という立場だ。」「無能な麻生政権がこうした動きに手を着けざるを得なくなったのは、まさに労働者や国民の闘いの成果(あえて言えば政党では共産党だけ)であり、さらに監視を強め、徹底した企業への監視と指導を実効あるものにさせることではないのか。」と書いたように、国民の闘いと世論が政治を動かす、このことへの評価にある。
もとより麻生総理に預けてどうにかなるなどと、期待など表明はしていない。昨日麻生総理が渋谷の雑貨店「ロフト」を視察に行ったのと同じで、雇用問題を考えているんだというアピールを超えることは無いだろう。
政権批判なら大企業の論理も
一言一言に再批判はしないが、一言で言って「麻生政権を批判するなら、大企業の論理も使える、大企業擁護の御用学者でも使える」という実に節操の無いものである。利用しながら、その論に組して自らなり下がっていくの図だ。大企業に負担をかけたら、雇用も賃金もだめになるという事は、この間財界と御用学者が常に主張して来たこと。大企業の国際競争力が一番大事だといえば、この国ではそれに物言う政党は共産党しかいいないという状況だ。
そんななかで戦後最長の好景気と言われながら、労働者の賃金を抑制して来たのだ。何のため?雇用を広げるためでなかったことは周知の事実。それは企業の「宿命」「生理」=利潤追求が最優先のためだ。
トヨタの場合だけでも、正規雇用労働者の賃上げは02年からの4年間はゼロ。06~08年はわずか1000円に過ぎません。更に非正規に切り替え、労働コストを抑えながら暴利を溜め込んできたのが日本の大企業だ。トヨタグループの内部留保(溜め込み利益)は07年度で実に、13兆9000億円です。 資本金10億円以上の大企業全体でみても、内部留保は229兆円。そのほんの一部を使うだけでも雇用は継続できるし、正社員にすることはできるわけです。さらに正社員の賃上げも可能です。・・・こんな事実が見えないのはなぜか?
政治・社会のダイナミズム
「それでも、全く何も変わらないばかりか、状況は悪化するばかりです。」・・・だから、間違いだと言うのも早計な、敗北主義だ。そうできなかった事情を見なければならないだろう。複雑だが・・・。
先ずはこの間の自公政権の無策が主な政治的な原因だが。
他にも、一つに例えば、日本の労働組合運動は、残念ながら「連合」が出来てから企業に賃上げを言えなくなり、「会社の人事部」に多くが成り下がったことも無視できない。「会社が安泰であればこその労働者」だという。いつか大きなパイのおこぼれをいただくことが出来るだろうから、会社のために我慢して賃金抑制も受け容れて、がんばろうという路線をとってきたのだ。
その政治的な要求は、機関決定で投票の自由も奪い強制的に民主党に預ける。財界からの金を当てにし一言も財界のやり方に注文できない民主党に労働者の要求を強引に託させるというやり方だ。・・・いまだにこれらの組合は、非正規雇用労働者の首切りに異を唱え闘う事をしない。非正規が自分達の賃金を食っている。・・・こうして、分断されて労働者がその最大の武器「団結」を持ちえていない。
あるトヨタの期間社員はその日記の中で書いている。
「11月20日。トヨタ労組の職場会。期間従業員は2年目から組合に加盟させられる。毎月1000円ぐらいの組合費を払っている。なのに、期間従業員切りの話は全くでなかった」と。
「雇用か賃金か」ではない。「雇用も賃金も」である。そこにこそ国民・労働者の要求があり、団結の条件があるのだ。
預かった民主党はどうか。この危機に「政局」の駆け引きに明け暮れ、雇用問題には何らその数の力を発揮できないでいる。挙句の果ては、政局をもてあそぶ党首討論のあとで、首相退陣なら超大連立? 小沢氏が構想 与党を揺さぶりだ。?つきだから、あの1年前の連立騒ぎとは違い「選挙管理内閣」と言うことだろうが・・・。
・・・ちょっと横道にそれたが、考え方が正しければうまく行くという訳ではない、それが多数となり「物質的な力」として働かない限り、政治も社会も動かないことは残念ながら政治のダイナミズムが証明するところだ。
「雇用も賃金も」
「すでに雇われている人の賃金をあげることが効果を発するとは思いません。」・・・これも「賃金と雇用」を対立的にしか見ない御用学者の見方から来るものだ。経済対策としてもいただけない。
下表は、労働者の所得を増やすことによる内需拡大効果です。(労働総研試算 10・31)
派遣やパートの正社員化やサービス残業の根絶などで家計支出が15兆円増え、景気回復と生活向上ができるという。

これによると、(1)派遣とパートら363万人の正規化(2)サービス残業の根絶(3)週休二日制と有給休暇の完全取得―で635万人分の正規雇用を創出する。
これによって、年収はパートなどで約240万円増の486万円、派遣で約110万円増の351万円(25~29歳)など、計21兆3000億円増え、消費需要(家計支出)も14兆9000億円増大。
誘発される国内生産は24兆3000億円にのぼり、国内総生産(GDP)を2・5%押し上げるというものだ。
さらに、中小企業の多い製造業分野の生産増につながるため、中小企業へのテコ入れにもなり、税収も2.27兆円増えると算定している。増収は社会保障費の拡充などに役立てることができれば、さらに良くなるだろう。こうして景気、賃上げ、雇用の循環が好転する。ここでも大企業が「抱え込み、溜め込んでいること」が循環を妨げる最大の問題だ。俗に言えば「金は天下の回り物」になることで生きるし、回らなければ腐るだけだ。
これらは大企業のため込み利益(内部留保)229兆円の5・28%にすぎず、実現可能だとしている。この数字から見てもさらに、賃上げにも十分に応えられる体力が大企業にはあるのだ。こういう立場から「雇用も賃金も」大企業に迫ることが、今求められている。
ポーズに終わらせずに、実効ある指導と措置を
大企業は、「内需を犠牲にして、輸出で儲ける」ことに汲々として、その利益を国民に還元するという責任を放棄してきたために、内需が冷え込み景気が悪くなって来たのだ。そうなれば、企業そのものも成り立ち行かなくなるだろう。その方向転換を迫るところに、今政治が力を発揮しなければならない時だ。
麻生総理は、去る15日のG20(金融サミット)で、世界に向かって「外需依存度の大きな国における自律的な内需主導型成長モデルへの転換」と提案してみせた。
「よそで人ごとのように言うだけでなく、ここで自分からやれ!」である。
共産党が政府に対して、「大企業が雇用を守る社会的責任を果たすように実効ある指導、監督を」と緊急申し入れをしていたが、これに対して、河村官房長官は「日本経団連などの要請する」と応えて、昨日、総理が要請したようだ。
改めて、こうした方向は、国民の闘いと世論が作ってきたものだ。
さらに、「要請」するだけでなく、しっかり指導監督して実効ある措置をとれ!」と言っているのだ。
・・・ん?当弱小ブログにいやにアクセスが多いなと思ったら、
こちらで(花・髪切と思考の浮游空間)取り上げられていた。ご参考に。
・・・繰り返すと、大企業の乗り切り策として繰り返される人件費削減。一人ひとりの労働者の生活を守るなど、寸分たりとも視野にないのだろう。むしろ、こんな論調も厳然としてある。池田信夫大先生がこう語ると、キャンペーンにもなるのだろう。情けないのは、いままで護憲派などの言葉でもって扱われていたブロガーもその侵食を受けていることだ。大脇道場さんによって、私はそれを知った。
曰く、
不景気に賃上げを要請したら、企業側は、非正規職員だけでなく、正規職員までも解雇せざるをえない状況に追い込まれる
だと。すでに分断策に乗せられきっているのは明白ではないか。
まあ、人は困難な状況にたちいたったときこそ、その人のよってたつところが、もっとも端的に現れるのだから。
こちらでも(非国民通信)。
さて、(麻生総理の行動は)今までの実績を考えればとても期待は持てないのですが、とりあえず方向性自体は間違っていません。ところが大脇道場さんが取り上げているように、この方向性自体にも批判的な人がいるようです。財界の立場から? それとも御用学者? いやいや、日頃は政府与党に否定的な人が、です。右から政府与党を批判している極右層でもなく、概ね左から政府与党を批判してきた人の中にも、ですね。曰く、不景気に賃上げを要請したら企業側は一層の人員整理に走る、雇用を控えるようになり失業者はますます増えるのだとか。
何を今さら。そんなことは、政財界の御用学者がずっと主張してきたことではありませんか。だからこそ、戦後最長の景気回復が続く中でも「不景気だ」と彼らは主張してきたのです。不景気なのだから、雇用の正規化も賃上げも無理、そんなことをすれば企業側に人員整理への圧力が高まり、かえって失業者が増えると、御用学者は繰り返し唱えてきました。中にはそれを逆手に取り、正規職員の非正規化、賃金カットを進めることで雇用情勢が改善されると、実状を無視した主張を垂れ流してきた人も少なからずいるわけです。
そして主張の正当性より「どちらの陣営に与しているか」を重視する人もいます。政府与党に批判的な「同志」でありさえすれば、見下げ果てたレイシストであろうと応援し出すような人、例えば城内実を持ち上げる(自称)リベラル・平和系ブロガーなどがそうですね。単に反政府与党でありさえすれば内容不問とばかりに馴れ合う人もいるわけです。で、まず何よりも「政府与党に反対であること」を最優先事項にするとなると、今回の麻生氏の行動も否定するしかない、その結果が御用学者の唱えるところと一致しても、政府与党に立ち向かうことが肝要、そうなるのでしょうか。
さて、アップしようかなと思ったらラジオで、「連合」が「平成13年以来8年ぶりに、春闘でベア要求」と報じていた。
高木剛会長は「金融危機で実体経済が悪化、雇用問題が深刻化する中、個人消費拡大による景気回復のため賃上げが必要だ。賃金や雇用の要求に応え得る企業の基礎体力は十分にある」と訴えたそうだ。雇用対策はトーンが小さいが、これもやると言う。
あの「連合」でさえ動かざるを得ないところまで来たということだ。
これとて、労働者・国民の世論と運動が高まったからだ。
大事なのは、こうした政治・社会のダイナミズムにどう主体的に関わり、状況を切り開くかだ。
・・・長々と書いてしまった。俺ってネチッコイかしら?
みんな自由に発言する。批判は自由。必要な反論はする。です。
おめでたい人になりたい。
しかし、これは意味が違う。「おめでたい人」はどっちか?
ま、「おめでたい」うちはお互いに救いようがあるでしょう・・・。
議論は尽きているから(最初の一文で尽いていたんだが)、これ以上この件について書くつもりはありません。
美爾依さん、これからもよろしく。
お付き合いついでにシャッターはこころで切れ!で、紅葉狩りでもどうぞ。
「大脇道場」消費税増税反対キャンペーン中!
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-588.html
いつもありがとうございます。
ランキングー

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2008.12.02 | | Comments(10) | Trackback(5) | ・雇用と労働問題Ⅱ
