NO.804 適正な取調べと報道を!・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 ・・・その(2)
過去ログNO.801 知的障害者の犯罪と孤独・・・千葉・東金の女児遺棄事件を考える。 で、
「事件が冷静に、深く掘り下げられることを期待したい。
この事件が、知的障害者への言われなき差別を助長するように扱われるべきでないことを、特に求めて注視したい。
また取調べに当たっては、一つの事実の聞き出し方一つとっても、知的障害に配慮した取調べが求められる。」と書いた。
「同感」と、心配するコメントを頂いた。ありがとうございました
この事件はその後もテレビのワイドショーでも、大々的に扱われている。
父親ががんで入院して、頻繁に見舞いに行っていたこと。そのころから仕事が手につかず、会社で注意されたのをきっかけに長期に休み退職したこと。母親が、あたかも過保護で、容疑者が母親に依存し母親の言動を気にしていたことなど・・・。
東金の女児遺棄 容疑者「お母さんに会いたい…」(産経)など。
成田幸満ちゃん死体遺棄事件で、逮捕されたA容疑者が東金署捜査本部の調べに対し、「お母さんに会いたい」と寂しさを漏らしていることが8日、分かった。A容疑者は母親と2人暮らしで、最近では母親に頼る生活を続けており、逮捕から2日が経過し、母親への思いを募らせているという。
母親も捜査本部に「(事件を)知らなかった。大変驚いている」とショックを語っている。
またA容疑者が、幸満ちゃんの遺体を現場に遺棄した動機について捜査本部に、「(母親に)心配をかけたくなかった。(帰ってくる前に)ぐったりした女の子を外に持ち出した」と話していることも判明。
ただ死亡の経緯については、黙り込んだり、「覚えていない」と繰り返している。
テレビで印象的だったのは、母親への依存を異常に強調していたこと。
そのことを異常な犯行と結びつけようとする意図を感じた。彼らが母親や身近な人に依存するのは当たり前である。ただでさえ心を預けられるような共感的な人間関係を作ることが困難な時代。ましてや生きる世界が極端に狭められている障害を持つ人たちのよりどころは、極端に身近な人に限定されるのである。母親はそういう存在なのだ。
一般の子供たちの成長や発達のゆがみも問題視されるようなこの時代に、知的な障害のある人の成長や自立の過程は二重にも三重にも困難を抱え、「依存的心性」を持つことは、残念ながら当たり前のことである。
こういう印象付ける報道は、障害を持つ人たちの「成長への困難」と「孤独」への無知のなせる業だ。ここから「異常な人間」を描き犯罪に結びつける報道のあり方には違和感を禁じえない。
今この瞬間にも、どれだけ多くの障害のある子供さんをお持ちの親御さんたちが、息を潜め息苦しい思いをしているだろうかと思うと、胸が詰まる思いだ。私自身も同じ子どもを持つ親として、「今こそ頑張って、真の理解を訴えよう」と言いたい。
重度の知的障害者を息子さんにもたれているヒロシさんは、コメントで以下のように述べている。
不幸な事件だ。真相がきちんと明らかにされなければならない。障害者に対する偏見
今回の事件のように加害者が知的障害者であると、『やっぱり! 知的障害者は何をするかわからない。 危険なんだ。』と考えます。 でも加害者が大学教授で痴漢だった場合、『やっぱり! 大学教授は何をするかわからない。 危険なんだ。』とは考えない。 大学教授はほとんど立派な人間なんだけど、まれにひどい人もいるんだね。 と考えます。 ましてや加害者が健常者であった場合(大半は健常者)『やっぱり!健常者は何をするかわからない。 危険なんだ。』とは決して考えませんね。 このような考え方が既に偏見をはらんでいることに気づく人は少ないのではないかと常々思っています。
その際、知的障害を持つ人たちへの言われなき偏見を助長するようは報道は、戒められなければならない。
改めて、適正な取調べとともに、報道の適正を求めたい。そしてそのことこそが、事件の解明と障害への正しい理解とによって、再発を防止し、共に生きる地域社会つくりにつながるのだと思う。
紹介したい記事を一つ。
知的な障がいを持つ青年たちの事件や弁護に関わってきた弁護士杉浦 ひとみさんは、「千葉東金の幼女殺人事件」 で、被害者加害者双方に複雑な思いを致しながら、捜査機関に「取調べの適正」を訴えています。
この事件の被疑者が知的障害のある青年だったことを知りショックを受けました。
それは、これまで関わった知的に障害のある青年たちとだぶって見えるところがあったからです。
彼らは、女性に感心がありながら、対等に同年代の女性と関わる機会も、かかわるだけの自信もありません。小さくて可愛い子どもを相手にするのは、本当に可愛いと思うこともあるでしょうけど、弱い子どもにしか関われないという自信のなさの現れだということが多いです。
私の知っている知的な障がいを持つ青年たちは、可愛いと思い見ていたいと思って凝視したり、可愛いと思って近づいたり、しばらく一緒にいたいと思って付いていったり、ということをしてしまいましたが、でも凶悪なことをするような青年ではありませんでした。
ところが、もしなにか突発的なことが起きたら、青年は驚いて思わない行動にることは十分考えられます。騒がれたり、大声を出されたり、泣き出されたりすると、どうしていいか分からずに、それをとめようとすることもありうると思います。
しかしながら、相手は幼児ですから、力でいえば圧倒的に脆弱です。
被害に遭われた方は、誰が何を言おうとお気の毒です。子どもが亡くなることは辛いですが、どんな思いでその場にいたのか、どれほど怖かったか、親にしてみれば想像するだけで気が狂いそうになるでしょう。
でも、一方で、知的な障がいを持った青年を抱えて、日々の行動に心を砕き、不安に思っている保護者(母親が多いです)がも苦しんでいることが多いです。
事件に至るまでも、なにか起こしたらどうしよう、とどこへでも一緒に行かなければ不安でいられない親御さんもいます。
また、拘束されれば留置場でどんな思いでいるか、取り調べで警察の反応をうかがうようにしながら、一番気にいられる言葉を選んでいないか、と案じます。
双方の思いを考えると、とても複雑です。
ただ、どうしても今、捜査機関に訴えたいのは、取り調べの適正です。
子どもを亡くされた被害者は、まず、真実を知りたいでしょう。なぜこうなったかを知りたいでしょう。
この被害者の最低限の思いを実現させるためにも、この知的障害のあるといわれる青年をきちんと取り調べてほしいと思います。
知的障害に理解のある(不当に擁護する、とうことではありません)弁護士を同席させてでも、本当のことをきちんと聞き取ってほしいです。
警察は職業的に、検察官から(結局の所、裁判官からということですが)文句を言われないような理路整然とした調書を作ろうとしがちですが、世情の常識通りに物事はすすまないこともあります。
真相を紛らしてしまうようなことがないように。
それが、被害者を慮る第一歩ですし、加害者の人権を不当に制限しないことでもあります。
追記:この件でググって見たら・・・、こんな取材・報道もテレビはやっている!許せない!
TBSは気は確かか?
※ハニー‐トラップ【honey trap】《甘い罠の意》機密情報などを得る目的で、スパイが色仕掛けで対象(外交官や政治家・軍関係者など)を誘惑したり、弱みを握って脅迫したりする、諜報活動のこと。主に、女性の諜報員が男性に仕掛けるものをいう。取材過程で偶然容疑者がインタビューに答えることはあるだろう。インタビューの様子を流したのはTBSだけではない。取材先に名刺を渡すこともあるだろう、後で何か思い出したときに連絡をくれと。しかし、このTBSは違う。「知的障害者にハニートラップを仕掛けているようで道徳的に許しがたいという非難や疑問の声」を私もあげざるを得ない。TBSは数字が取れる映像を手に入れるために、容疑者のカラオケで熱唱する姿を嬉々として放映している
だいたい、カラオケ店内の映像はどのような経緯で納めることができたのだろうか? 容疑者が誘ったのか? なら何故仲良くなれた? アニメ主題歌を歌うとき、カメラはモニター方向に振れている。画像の鮮明化から鑑みても、明らかにTBSのカメラだ
日テレニュース24が伝える『「メル友の彼女ができた」とメールを送っていたほか、逮捕前日の夜にはこの女性に電話をしていた。』とは前者は毎日新聞の女性記者の可能性もあるがTBSではないのか? 後者は明らかにTBSの女性記者だ
容疑者は知的障害者なのである。断定はできないが、罪の意識どころか犯行時の記憶さえ、どうなのかわからない。健常者が侵してしまったケースとは違い、何らかの配慮は必要だろう。このような取材が許されるのあろうか? TBSには人権に配慮するという意識など無いと断定せずにはいられない
お付き合いついでにシャッターはこころで切れ!で、紅葉狩りでもどうぞ。
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いつもありがとうございます。
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2008.12.09 | | Comments(3) | Trackback(1) | ・障害者と「犯罪」
