NO.818 労働組合の出番だ。
労働組合活動を退いて久しいため、最近の組合事情には疎くなってしまったが。
二つの興味深い記事が目にとまった。
「大企業の非正規大量解雇、許されない」高木・連合会長(アサヒコム)
連合と言えども闘わざるををえない、率直に言ってこういうことかという印象だ。
正規と非正規の対立
1990年代半ばから、企業は経営戦略の中にコスト削減の位置づけを高め、雇用の調整弁として非正規雇用を進めてきた。そのために政治に介入を強めし、労働の規制緩和を進めてきたのである。すなわち労働者派遣法の度重なる改悪を推し進め、1999年には派遣の原則自由化、04年には製造業にも枠を広げた。労働者の3分の2が、派遣や期間と言う不安定労働者が生み出されてきたのだ。
かつての非正規は、たとえば主婦のパートや出稼ぎなど、不十分ではあるが他に生活基盤を持つ労働が主流であったが、今日のそれは、その立場を失うと明日からは食っていけない労働者であることが特徴となってきた。
かつては、経営者も正社員は社を支え、家族を支えるものだから「終身」守らなければならないとする「雇用の論理」を持っていた。今日も、形式的には正規社員の雇用は守りながら、一方で準備してきた調整弁のコックをひねり、正社員との矛盾を表面化しないようにしている。
この路線と協調してきたのが連合の路線だ。この間、非正規を守る取り組みはしてこなかった。
高木会長は、非正規労働者の解雇について、派遣法改悪などを許してきた責任を認めながら、次のように言う。
「あってはならんことだ。一番頭に来ているのは、トヨタ自動車やキヤノンなど、中小に比べて体力のある大企業が、次々と非正規の人たちを大量に減らしていることだ。満期を待たずに中途解約する例も多い。数カ月の雇用すら継続できないほど、切迫しているのか。御手洗冨士夫・日本経団連会長は会見で「苦渋の選択」と言ったが、「苦渋」の中身が全く伝わってこない。
非正規の人に対しても、経営者が解雇回避の努力を尽くしたかどうかなど、正社員と同様な整理解雇の原則が適用されるべきだ。ただ、非正規の人たちに自分でそれを交渉せよというのは酷だ。企業の労働組合がそれは言っていかねばならない。自分たちが切られる立場になった時にも同じ武器で闘うのだから。」
実際、この間正規労働者の雇用を守ることが、非正規の拡大につながってきたという構図のなかで、正規労働者と非正規労働者は対立の構図に押し込まれ、正規労働者は公務員と共に「既得権益にしがみつくもの」という激しい社会的指弾を浴びることとなる。
資本の攻撃の前に、労働者はあえなく分断されてきたのだ。
ではその間正規労働者はどうだったのか?かろうじて雇用は守られたとしても、労働環境どんどん悪化した。職場での責任が増し、労働量は増え、精神的不安定さが増す一方で、労働分配率は抑えられ、収入はいっこうに増えないどころか減ってきている。正社員が、政府と会社の雇用政策と連合にも守られていると信じてきたら、その間に労働条件はどんどん悪くなってきた。その正社員の労働条件の悪化が、非正規社員の労働条件のさらなる引き下げに利用されてきた。
「正社員でさえももこれだけ厳しいんだから、非正規の雇用条件が下がるのは仕方がない」・・・分断は、こうして切り下げ競争に利用されてきたのだ。正社員が経営者に同調することに自らの保身の道を見出す中で、非正規社員を負け組として突き放してきた結果は、自らの足元を切り崩すことであった。分断と対立はお互いを不幸にしてきたのだ。連合は、この分断支配に協調してきたといわなければならないだろう。
今回の高木会長の発言は、こうした過ちを認めたものとして評価できる。
だが、実際の春闘方針は心許ない。
8年ぶりの、賃上げ要求を掲げ、正社員とパート賃金アップと掲げて「賃上げも雇用も」が当然で、「優先順位はつかない」と言うが、激しい派遣切りの嵐の中で 「派遣切りをやめよ!」と正面から掲げて動いている様子は見えない。
とは言うが・・・。――労使協調路線の浸透で本当の意味で闘えるのでしょうか。
今は経営側に「色々言っているが、突っぱねていれば息切れして妥結する」と高をくくられている。正社員がそこまで追い込まれていないのか、論理的にも経営側に飼いならされたのか。嫌がることもやらないのに組合の主張をのませることはできない。
そうした中で、単産は・・・。
正社員賃上げ原資、非正規に回せ 全国ユニオン春闘方針(アサヒコム)
新たなパイの理論と言うべきか。混迷は続いているようだ。連合傘下で、非正社員らが個人でも加入できる労働組合の全国組織「全国コミュニティ・ユニオン連合会」(全国ユニオン=組合員数約3300人)が13日、09年の春闘方針をまとめた。相次ぐ「派遣切り」など非正社員の人員削減に対抗するため、正社員と非正社員の共生を目指す「緊急ワークシェアリング」を掲げ、「正社員の賃上げ原資を非正社員の雇用確保に充当する」ことを求めていく。
見過ごすことのできない矛盾が噴出す中、労働組合のあり方もまた問われている。試行錯誤が続くとはいえ、労働組合の出番であることは確かだ。
追記(12・15夜):以上書いておいたら非国民通信さんから「微妙な見出し」というTBをいただいた。
と言う趣旨。で、「正社員賃上げ原資、非正規に回せ」だそうです。この見出しではあたかも、非正規雇用中心の労組が財界や御用学者の主張するところに従って、会社の取り分は聖域として手を出さず、代わりに隣の正社員に八つ当たりを始めたかのような印象を与えてしまいます。私が日頃から、そういう事態を懸念していたが故に、過敏になってしまっただけかも知れませんが。新聞記者の意図はどうなんでしょう。まぁ今回はあくまで原資は雇用側に求めるわけで、普通の正統派路線です。賃上げの代わりに休暇が増えるなら、正社員にも悪い話ではありませんし。そもそも、元が働き過ぎなんですから。
ん~~ん、なるほど。私の読みが、ちょっと硬直しすぎていたかもしれない、現下の情勢で正規・非正規の団結を追求する柔軟な要求の立て方と評価するのが妥当だろうか。
お付き合いついでにシャッターはこころで切れ!も、よろしく。
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いつもありがとうございます。
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2008.12.15 | | Comments(2) | Trackback(1) | ・雇用と労働問題Ⅱ
