NO.915 大企業発「ワークシェアリング」論はニセモノ。
一人当たりの労働時間を減らして仕事を分かち合うことで失業をくいとめるというのが「ワークシェアリング」の考え方だ。
過去ログ:NO.869 経団連のワークシェアリング論は、盗人猛々しい。で、
と、書いたが、もう少し詳しく見ておきたい。ワークシェアリング論は、雇用を守ることを口実にしながら、労働社者全体の賃金を引き下げることであり、雇用問題を労働者総体の「自己責任」に摩り替えることだ。大企業がその社会的責任に基づき、自ら負担をして事に当たる姿勢がまったく無い。
大企業は230兆円もの内部留保をため込みながら、これを懐に抱き込みつつ身銭を切ることもなく、労働者で分け合えという。盗人猛々しいとはこのことだ。
正社員の賃金カットの口実
経団連の御手洗冨士夫会長が6日、「一つの選択肢」と提起したのを発端に、経営者たちの多くがワークシェアリングに言及してきた。 大企業は、これまでは派遣切り、非正規切りを中心に雇用調整してきたが、御手洗発言は、これからは何らかの形で正社員にも波及せざるを得ないという脅しであった。つまり、首切りが嫌なら「時短」と「賃金カット」をセットで受け入れよという。
大企業は、「仕事の分かち合い」で雇用を守るといいながら、もっとも緊急の対策が求められている派遣など非正規雇用労働者は対象外となっている。「非正規切り」は3月には46万人にのぼる(舛添え厚労相)とも、製造業だけでも40万を超える(民間団体調査)とも言われており、もっと深刻な事態が予想されるが、これを問題にしない「ワークシェアリング」などは論外だ。
御手洗氏の念頭にある財界・大企業発「ワークシェアリング」論は、たんに財界による労働時間短縮を口実にした正社員の賃金カットの口実に過ぎ無い。
すでにいくつかの企業で始まってるやり方は、いずれも非正規の労働者の大量解雇は予定通りすすめ、新たに正規雇用の労働者の賃下げをする内容になっている。単なる操業短縮にともなう賃金カットであり、正社員の雇用をおどしに使った賃下げ攻撃だ。仕事が減って賃金が下がるということは、労働者が半失業状態になるに等しい。それは「失業の拡大」であり、「ワークシェアリング」などとは程遠いものだ。
本来のワークシェアリングとは、労働時間の短縮で雇用を確保・拡大するという考え方だ。
外国の例では
例えば、フランスの「週35時間労働法」(2000年6月施行)の場合。
法制定で、500人以上を雇用している大企業(トヨタなど日本企業を含む)のほとんどが35時間労働に移行した結果、これで失業者を500万人以上減らしたといわれている。
例えばオランダ方式。1982年に政労使三者の「ワッセナー合意」では、
(1)経営者は雇用維持と労働時間短縮につとめる
(2)労働組合は賃上げ抑制につとめる
(3)政府は、減税、社会保障負担の削減につとめる
を確認し、これで労働時間が年間約200時間短縮されて失業を減らしたという。
その際、労働者の賃金が減少、パート労働が増大しましたが、政府の税制措置で不利益が緩和され、パートも正社員との均等待遇を徹底する措置がとられているという。
このような外国の例を見ても、日本の大企業発「ワークシェアリング」は、労働者に一方的に犠牲を押し付けるだけのニセモノだということは明らかだ。
法を守り、ルールを守るだけでも
今、日本で、雇用を守り拡大するためには、労働者に一方的に犠牲を押し付けることなく、本来「ワークシェアリング」の前提として、まず解決しなければならない課題は、違法なサービス残業の根絶など長時間残業の是正だ。
労働運動総合研究所(労働総研)の試算(08年10月31日)によると、サービス残業は一人当たり年間120.7時間あり、これを根絶すると118.8万人の新たな雇用が創出されるという。雇用拡大への効果はテキメンだ。また年次有給休暇の完全取得によって、131.7万人の雇用増が可能だともいう。
これらは新たな法律など作らなくても、企業がルールを守って、責任をもって実施すればすぐにでもできることだ。
こうしてしてみても、日本の大企業がいかにわがままで無法かがわかる。
大企業に社会的な規制を加え、ルールある経済社会を作ることが、雇用の面からも求められている。
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2009.01.28 | | Comments(1) | Trackback(3) | ・雇用と労働問題Ⅲ
