N.978 憲法25条体制空洞化戦略としての新自由主義。
「官から民へ」「改革しなくして成長なし」「感動した!」などと吼えながら突っ走った小泉内閣の「構造改革」路線。その本丸とされた郵政民営化問題で麻生太郎総理が迷走発言をする中、小泉純一郎や竹中平蔵のメディア露出が増えているようだ。
竹中氏は、今吹き出ている雇用などの問題は、「改革が足りないからだ・・・」と開き直る始末だ。
今日の日本の経済や暮らしをめぐる政治の問題を大枠でとらえる事が、今大事なように思う。その上で、改めて、「構造改革」路線の破綻の結末を検証しておくことが、新しい「国民が主人公の政治実現」にむけて必要ではないだろうか。
新自由主義とは何か
具体的な検証に入る前に、今回はまず、その指導理念となった新自由主義とは何かについて、概略を見ておきたいと思う。
新自由主義とは一言で言えば、「福祉国家解体戦略」であり、その露骨な担い手は財界である、と二宮厚美氏(神戸大学教授)は言う。
この戦略は1970年代後半から台頭し、日本では80年代に中曽根内閣の「臨調行革」路線=「戦後政治の総決算」の政治路線として姿を現し、90年代の「社会福祉構造改革」を経て、21世紀に入ってから小泉「構造改革」路線で本格的に具体化されてきたといえるだろう。
二宮氏によれば、財界は、福祉国家を「重荷」としてとらえ、企業の自由な活動を妨げる「足かせ」としてとらえるようになったというのだ。そして、この「重荷」と「足かせ」の二つから「財界を解放するために採用された道具が新自由主義である」、と。
露骨な担い手は財界
そこで財界が掲げたスローガンが、「国内高コスト構造の是正」と「護送船団方式の廃止」というスローガンだ。
「国内高コスト構造の是正」は、福祉国家を支え維持する経費を企業にとってのコストとみなし、このコストを極力抑えることをねらったスローガンである。したがって、ここでは、社会保障財政の徹底した圧縮・削減が行われた。
「護送船団方式の廃止」は、企業活動の足かせとなる社会的な規制を撤廃し、緩和するために使われたわれたスローガンだ。「護送船団方式」とは、遅い船も見捨てずに守りながら一緒に進むという方式。落ちこぼれを作らず、社会的弱者を見捨てない・・・いわば、福祉国家の基本的なあり方と言ってもいいだろう。
この方式を廃止し、規制緩和路線を推し進めするということは、社会を「弱肉強食」「優勝劣敗」の掟のもとに突き落とす事になる。そこでは、市場における自由な競争こそが最大価値となる。つまり「市場万能論」だ。
こうして、新自由主義の「改革」は、「国内高コスト構造の是正」というスローガンの下で社会保障を削減し「小さな福祉国家」を、「護送船団方式の廃止」というスローガンとともに相次ぐ規制緩和で「弱肉強食の社会」、「貧困と格差の社会」を作り出していったのである。
福祉国家体制を空洞化
この路線は、国民すべてに、健康で文化的な最低限度の生活を保障した憲法25条が保障する福祉国家体制(=憲法25条体制)を空洞化へと導いてきた。(もちろん、憲法25条が保障する福祉国家体制がこの国で完成していたわけではないが・・・)
福祉国家体制空洞化への動きは、社会保障の体系に則してみると、具体的には次の三点に集約されていくと二宮は説明している。
第1は、生存権の保障に必要な各種の公的規制やルールを撤廃し、緩和することだ。
例えば、派遣労働を原則自由化した労働市場の規制緩和や、福祉分野への営利企業の参入容認であり、福祉施設の最低基準の規制緩和など・・・。
第2は、社会福祉の現物給付方式の解体である。
社会福祉の現物給付方式とは、国民の保育や教育医療などのニーズに応え、直接これらの「社会サービス」を公的に実施し保障するやり方だ。
これを改めて、「社会サービス」にかかる費用の一定額だけを公的に保障し(現金給付化)して、それ以上の社会サービスについては市場取引に委ねる方向を取ってきたのだ。
これは既に介護保険や障害者福祉、後期高齢者医療制度に形を現してきた。
第3は、年金や生活保護、最低賃金などの現金給付型所得保障については、その水準をできるだけ低く抑え、保障対象者を限定することである。
こうした「公的規制やルールを撤廃、緩和」→「現物給付型社会サービス保障の現金給付化」→「現金給付型所得保障の圧縮・抑制・限定化」という流れは、国民を社会保障制度から排除し、国民生活の中に深刻な貧困と格差を生み出し、大量のネットカフェ難民、医療難民、介護難民、ワーキングプア・・・を生み出してきたのである。
次回からは、新自由主義路線の露骨な現れである小泉「構造改革」路線の結末についてまとめてみたいと思う。
関連ログ:(1) N.978 憲法25条体制空洞化戦略としての新自由主義。
(2) NO.982 小泉「構造改革」の痛み・・・。
(3) NO.983 小泉「構造改革」の結末 ①雇用のルール破壊。
(4) NO.986 小泉「構造改革」の結末 ②社会保障の連続改悪。
(5) NO.989 小泉「構造改革」の結末 ③国民負担増と大企業減税。
(6) NO.991 小泉「構造改革」の結末④ 「三位一体改革」と地方の切捨て
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2009.02.26 | | Comments(0) | Trackback(2) | ・2009総選挙Ⅰ
