NO.985 使い道のない内部留保 雇用に回せ!
この記事はNPJ お薦め ブログになりました。推薦御礼。 「大企業の内部留保がどうなっているかというと、大企業としても使い道がないんですね。設備投資に回しても余りが十分にある。使い道がないから、資金運用という形で、お金に稼がせています。しかし、それも、いまは行き先がなくなっています。アメリカは景気が後退し、ほかの国も成長率が低下していますから、海外での投資機会がありません。だから、ほんとに日本の大企業は内部に蓄えたお金の使い道がないのです。
「利益が減ってもいいじゃないか。それで株価が下がってもいいじゃないですか。ある程度の給料を支払ってある程度のボーナス出して、含み益なんかは、ある程度吐き出していいんじゃないかという判断力じゃないかと思いますね。」「少なくとも、雇用の問題は国の責任だと思っている大企業の経営者がいたら、ビンタですよ」月刊誌で語られた、前田勝之助・東レ名誉会長の発言だ。
広がる世論
新聞などでも、「内部留保を雇用に回すべきだ」という世論が広がっている。
「内部留保を増やしてきた企業が、その一部を取り崩して、なぜ非正規雇用者を守らないのだろうか」(毎日新聞)
「企業には好業績で蓄えた内部留保がある。大企業16社だけで合計は焼く33兆6000億円と言う。企業の『埋蔵金』であり雇用維持や賃上げに活用する余地がある」(東京新聞)
「巨額の内部留保を抱え込んでいる企業もある。それらの企業は今こそ蓄えを賃金や雇用維持に使うべきだ。使わないままの賃金抑制や人員削減など受け容れがたい」(南日本新聞)
「巨額の内部留保を確保している企業は、例え単年度の収支悪化原因になっても、蓄えを賃金や雇用維持に振り向けるべきだろう。不況に名を借りて賃金抑制や派遣きりをすすめるなどは論外である」(岐阜新聞)・・・などなど。
国会で参考人招致
そうした中、24日の衆院予算委員会で、日本自動車工業会労務委員長の川口均氏(日産自動車常務・執行役員)と「反貧困ネットワーク」代表の宇都宮健児弁護士の参考人質疑がおこなわれた。大企業が昨年から「非正規切り」など大規模な雇用破壊を進める中、業界団体の代表を国会に招致しての質疑は初めてで、日本共産党が強く求めていたものだ。
「年越し派遣村」の名誉村長を務めた宇都宮氏は、大量の「非正規切り」を進めるトヨタ自動車やキヤノンなど大手製造業16社の内部留保が、2002年の2倍の33兆6000億円にのぼっていることを指摘し、「企業に社会的責任を果たさせるべきだ」と発言。「(日本経団連会長の)御手洗冨士夫さんやトヨタの経営者などを呼んでもらいたい」「違法・不当な『派遣切り』を国は強く指導すべきだ」と述べた。
宇都宮氏の発言はこちら↓
NO.984 「経営者の誇りやプライドはどこへ行ったのか」「政府は厳しい指導を」 国会で宇都宮参考人が意見陳述。
経団連トップを呼べ
結論的に言えば、宇都宮市が言うように「小物ではダメ、責任ある大物を、経団連トップを呼べ!」と言いたいところだが・・・。
一方この中で、自民、民主の質問者の財界側への”同調””理解”ぶりは、残念ながら「さもありなん」であった。
財界に”同調””理解”する自民、民主
自民党の根本匠議員は参考人の川口均日本自動車工業会労務委員長に対し、「製造業派遣を禁止すべきだという意見もある」と質問。川口氏が「法律で一律に禁止するより、雇用保険の拡充などセーフティーネットの整備を」と述べると、根本氏も「私は(製造業派遣を)一律に禁止するべきではないと思う」と同調。
民主党の逢坂誠二議員は、川口氏が「(車販売の)需要が蒸発した」と述べたことについて、「まさに今の状況を端的に表す鋭い言葉だ」と認識を共有。さらに、逢坂氏が「厳しい雇用情勢の中で、内部留保を取り崩せとか、株主配当のあり方が間違っているという指摘がある」と質問すると、川口氏は「企業にとって内部留保は資金の源泉であり、大幅な赤字の中でこれを取り崩せばさらに経営全体が立ち行かない」と述べた。逢坂氏は「現時点ではおっしゃるような状況だと分かる」と“理解”を示した。
「内部留保を取り崩せ」という国民の声に対して、防戦に立った言い訳である。「内部留保を使うと経営がゆきづまる?」については、これまでも書いてきたが、再度簡潔に触れておきたいと思う。
参考過去ログ:NO956. 内部留保 雇用のため使えないのか 大企業の言い分を検証する
内部留保を雇用に使うと、経営がいきづまる?
内部留保を雇用の確保に使うと、企業も資金繰りが厳しくなり、経営がゆきづまるようなことになるのではないか、・・・大企業側の意図的な宣伝とともに、素朴な疑問もある。
企業の内部留保は、年々のもうけを企業が内部に蓄積してきたものです。
日本の大企業の製造業は、派遣や期間工など非正規労働者を増やして賃金を抑え、下請け単価を買いたたき、バブル期を大幅に超えるもうけをあげてきた。それにつれて、内部留保も年々積み上がってきた。
総額120兆円のわずか1%で
内部留保は、製造業大企業(資本金10億円以上)だけで1997年度末の87・9兆円から2007年度末までの10年間に32・1兆円増え、総額は120兆円に達している。
労働者派遣業の業界団体は、3月末までに40万人の非正規労働者が職を失うと推計しているが、平均年収を300万円とすると賃金額は1兆2千億円。この額は、製造業大企業の内部留保のわずか1%にすぎず、経営がゆきづまるとは考えられない。
金融資産への投資に使われているのが実態
また内部留保は設備投資になっていて、現金などでは少額しか保有していないので資金繰りに困るという主張もある。
しかし、企業資産の中身を見ると、製造業大企業が内部留保を07年度までの10年間に32・1兆円増やした同じ期間に、機械や土地、建物などの「有形固定資産」は1・5兆円減少し、投機資金を含む「投資有価証券」は34兆円も増えています。設備投資に必要な額をはるかに上回る資金が企業内部にたくわえられ、その多くが金融資産への投資に使われているのが実態だ。
使い道のない内部留保
山家悠紀夫さん (「暮らしと経済研究室」主宰)は、「使い道のない内部留保」と題して、次のように指摘している。
その内部留保を、賃上げ、正社員化という形で、国内にまわせば、それが家計所得になり、消費になって、企業の売り上げとなり、利益となってはねかえってきます。どんどんいい循環が生まれると思います。
現金・預金もある
非正規労働者の雇用確保に必要な資金は、これらの資産に比べればわずかですし、現金・預金などの「手元資金」は07年度末に21・1兆円あり、十分なはず。これに加え、換金可能な国債や外国公社債など金融資産が26兆円もあり、更には資産を担保に資金を調達することもできるはずだ。
ほかにも巨額すぎる株式配当を減額したり、その気になりさえすれば雇用を維持するためにできることはたくさんあるということだ。
トヨタの場合
世論の広がりに押されたトヨタは、人事部が「『内部留保』をめぐる議論について」と題する「関係者外秘」の文書を作り全従業員に配布したそうだ。内容は、上述の「内部留保を取り崩せない」言い訳。「『企業はこれまで十分な内部留保があるのだから、これを活用して雇用を維持すべきだ』という議論がある。労働側のみならず、政府高官からも同様の趣旨の発言があった。『内部留保』という『埋蔵金』にも似た単語が誤解を招いている・・・」「内部留保は株主のものだ」・・・というもの。
トヨタ自動車の場合は、有形固定資産は7.8兆円なのに、内部留保は12.8兆円。
現金・預金、有価証券などの換金可能な手元資金は2.3兆円。(07年度決算)
一方、トヨタの期間社員6000人を1年間雇用するのに必要な金額は1人年収300万円としても、わずかに180億円。
億単位の報酬をもらう役員が、・・・血も涙も無いというか。奥田元会長は「首切りする経営者は切腹を」などと言っていたが、それこそ「切腹もの」ではないか?
大企業は、つもり積もった内部留保を取り崩し、雇用の確保に社会的責任を果たせ!・・・これぞ正論。
「大脇道場」消費税増税反対キャンペーン中!
http://toyugenki2.blog107.fc2.com/blog-entry-588.html
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2009.02.28 | | Comments(0) | Trackback(5) | ・雇用と労働問題Ⅲ
